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五分と三角の時間に虹  作者: 円間
出会い、そして再開
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出会い、そして再開5

 重たい石でも背負ったかの様に気が重たくなる。

 残酷な事だと知りながら、けど、俺はそれを彼女に話さなければならない。

 俺は息を呑み込んでからゆっくりと口を開いた。

「季夜が死んだ。つい、最近だ」

 俺がそう言うと彼女の眉間にみるみる皺が集まった。

「ふざけた冗談を言うな!」

 耳が痛くなるほどの大きな声。

 思わず耳を塞ぎたくなるが、そうはせずに俺は言う。

「冗談なんかじゃ無い。俺も最初はそう思った。冗談だって……でも本当なんだ。事故に遭って、それで……季夜は死んだんだ」

「そんなの信じられるか!」

「信じられないけど本当だ!」

 思わず声が強まる。

「そんな……だって、会う約束をしてて。待ってても待ってても季夜は来なくて。ずっとずっと待ってた。約束の日が過ぎても、次の日には会える、そう繰り返し思って……待ってた。なのに……」

「季夜は死んだんだ。だからあんたと会えなかったんだ。だから、だから季夜は……」

 季夜は俺に頼って、この子の事を……。

「絶対に信じない!」

 はっきりと彼女は言った。

「え」

 俺は戸惑う。

「信じない。お前なんか嫌いだ! さっさと消えろ!」

 両手を横に大きく広げ、強く拳を握り締めて彼女は言う。

「ちょっと待て! 俺は季夜からあんたに……」

 伝え泣ききゃならないメッセージがあるんだ。

 季夜とした約束があるんだ。

「何も聞きたくない! 早くあっちへ行け!」

「落ち着いて……俺は!」

「おい、どうした」

 声がした方を向くと、所々はげた革ジャンを着たパンチパーマのおっさんがいた。

 乙女川のホームレスに違い無かった。

「カンさん!」

 彼女がおっさんの側まで駆け寄る。

 彼女はおっさんにしがみ付くなり、「こいつが、季夜が死んだって」と涙声で訴える。

「何だってぇ?」

 おっさんは恐ろしい眼光を俺に向けて光らせる。

 今にも殴り掛かって来そうな勢いにたじろいだ。

 おっさんが俺の方にゆっくりと歩み始める。

「うっ……」

 蚊の鳴く様な声で俺は言うと、身をひるがえして橋から一目散に逃げだした。

 彼女とおっさんの怒りに満ちた視線がアパートに帰り着くまで俺の頭から離れなかった。




 アパートに帰り着いた俺は、しばらく、ぼうっとして過ごした。

 乙女川橋での出来事が俺をぼうっとせざるを得なくしていた。

 むざむざとみっともなく逃げ出した自分が恥かしい。

 マジで穴があったら入りたい。

 そこに永遠に籠っていたい。

 何もやる気が起こらず、気が付けばアルバイトの時間が迫っていた。

 急いでアパートを出たが遅刻。

 アルバイトではミスばかりして店長に、やる気があるのか、と叱られた。

 店長の前では口が裂けても言えないが、やる気はない。

 全くない。

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