出会い、そして再開4
「お前、ずっとこっちを見てただろ。橋の上に怪しいやつがいるから見て来いってカンさんに言われたんだ」と女の子は言うが彼女の言葉はほとんど俺の耳に入っていなかった。
俺は黙って彼女の顔を穴が開くほど見ていた。
彼女の顔がみるみると険しくなる。
「何だよ。人の顔、じろじろ見て。気持ち悪い。みんなが言う通り、やっぱり不審者なのか?」
毅然とした態度で言う彼女。
何と俺は不審者と間違われている。
いや、確かに不審者めいてはいるが。
そんな事より、この子だ。
俺は思い出していた。
長い茶髪に白い顔。
目の下のほくろといい、季夜の言っていたポチの特徴と似ている。
まさか、この子が?
まだ子供じゃないか?
俺は一歩彼女に近付いた。
彼女が直ぐさま後ずさりする。
「何なんだよ、お前。人を呼ぶぞ!」と彼女が叫ぶ。
「い、いや。ちょっと待ってくれ!」
俺は叫んだ。
「何だよ?」
きっ、と俺を睨みながら彼女は言う。
「あの、あんた、ひょっとして、ポチ……さん?」
俺の質問に彼女は、きょとんとした顔をする。
「…………何で、アタシの名前を知ってるんだ?」
彼女は非常に険しい顔をした。
俺を思いっきり怪しんでいる顔だ。
このままでは俺は不審者として屈強なホームレス達にどうにかされてしまう。
俺は焦りを露にして「俺は季夜の友達です!」と喋った。
その台詞を聞いた途端、彼女は表情を変えた。
「季夜の?」
彼女は瞳を目一杯開けた。
その瞳には輝きが見えた。
「そう、俺は季夜の友達だ。俺は住原と言う」
「住原……知ってる。季夜からお前の話をよく聞かされてる」
「そうだったのか」
しんみりとした。
季夜の母親といい、ポチといい、季夜が俺の話を俺の知らない誰かに話してくれていた事がとてつもなく嬉しかった。
「お前の話をする時の季夜はいつも良い顔して笑ってる」と彼女。
「そうか……」
季夜。
季夜の事を思う。
あいつは今、どうしているんだろう。
この街の何処かをさ迷っているんだろうか。
もしかして、この場にいるんだろうか。
ネックレスの口寄せの効果が切れている今、俺は季夜の存在を感じない。
違う次元みたいな所があって、俺が口寄せするまで季夜は、もしかして、そこにいるのか。
今、この場に季夜がいてくれたならどんなに俺は安心するだろう。
「それで、お前、何の用だ。季夜はどうしたんだ」とポチが言う。
俺は肩を落とした。
言わなきゃいけない事が口から出ない。
「あの。君にとって、季夜ってどういう存在?」
俺は何故かそんな事を訊ねた。
「そんなの、大事な存在に決まってるだろ!」
怒った様に彼女は言う。
「そうか……」
その大事な存在がもうこの世にはいない事を、俺はこれから彼女に伝えなきゃならない。




