出会い、そして再開2
「うん」
「本気のお願いなんだ。住原、ポチの事をお前に頼みたいんだ。頼めるのは、お前しかいない。頼む。ポチは俺にとって大事何だ。俺に力を貸してくれ」
季夜の言葉には熱がこもっていた。
季夜の必死さが伝わって来る。
俺の答えは決まってる。
「勿論、いいよ」
はっきりとそう言う。
「本当か?」と季夜。
「本当だ。約束破ったら針千本だもんな」
「……ありがとう」
季夜は、ほっとした風だった。
「実は俺の方も約束の事で聞きたい事があったんだ」
「何だ、約束の事、気に掛けてくれてたのか。本当、ありがたい」
いや、忘れていたけど思い出したんだ、とは言えず。
頼りない友人で申し訳なく思う。
「聞きたい事って?」
季夜に言われて俺は話し出す。
「ポチって何だ?」
必死になって探したポチ。
しかし、その正体は掴めなかった。
ポチとは何ぞや?
季夜は、ああ……と呟いた後、「ポチは人間の女の子だ」と躊躇いがちに話した。
「えええええーっ?」
意外な真相に稲妻に打たれたかの様に驚く。
まさかの人間。
しかも、女の子という。
その女の子は一体季夜の何なんだ。
「ポチは……まあ、俺の……友達なんだけども、凄く大事なんだ。自分が死んだ後、ポチはどうなるのか、凄く不安で。それにポチはおそらく俺が死んだ事を知らない。だから住原にお願いがあるんだ」
俺は黙って頷いた。
ポチの正体が衝撃的過ぎて言葉が出て来なかったのだ。
「ポチとは大切な約束をしたんだ。でも、俺はこんな事になって……ポチとの約束を果たせなかった。住原、ポチに会って俺が死んだ事を伝えて欲しい。それで約束を守れなくてすまない、と伝えて欲しい。それで出来る事なら、たまにで良いからポチの様子を見て欲しい。お願いだ、住原、協力してくれないか?」
実に畏まって季夜は言った。
俺はしばらく黙った。
ポチが人間と知ってたら俺は約束なんかしただろうか。
季夜の願は俺には責任が重すぎる。
季夜が死んだ事を季夜が大事にしていた女の子に伝えるのもきついし。
その子の様子を見る事もきつい。
基本、俺は人見知りなのだ。
けど……。
「分かったよ。約束したからな」
そう言って直ぐ、覚悟は決まった。
他ならぬ季夜の頼みだ。
もう、何だってやってやる。
「ありがとう、住原」
季夜がとびきり嬉しそうに言う。
季夜に喜んでもらえるなら、それでいい。
「それで、その女の子に会うにはどうしたらいいんだ?」
俺の質問に季夜は答えた。
「ポチは乙女川にいる」
今日は木曜日。
平日だが今日は消化しなければならない講義が無い為にさぼりを決め込むことにした。
アルバイトはあるが、午後からだ。
朝からカップのスタミナラーメンを食べて気合を入れてアパートを出た俺は乙女川へと向かった。




