出会い、そして再開1
その日は朝から、そわそわして過ごした。
季夜に再び会えるのは夜の十二時を過ぎた頃だ。
その時間が待ち遠しくて、早く終われ、早く終われ、と気が付けば念じていた。
今日は久しぶりにアルバイトへ行った。
季夜が死んで無気力になった俺はしばらく風邪を理由にアルバイトを休んでいたのだ。
アルバイトで汗を流していると時間の流れは早く感じた。
アルバイトから上がり、アパートの部屋に着いたのは夜の十一時。
後、一時間。
シャワーをさっと浴びてカップラーメンで晩飯を取って、何やかやしているうちにデジタル時計が一日の終わりを告げてくれた。
「よし!」
ベッドに腰かけて首からぶら下がるネックレスに触る。
時間は五分だけ。
ポチの事をちゃんと季夜から聞かないと。
そう自分に言い聞かせて目を閉じて、季夜の事を思った。
そうしているうち、季夜の匂いがした。
俺の中に季夜がいるのを感じる。
目を開いて「季夜」と呼び掛けると「住原」と返事か返って来た。
口寄せが成功したのだ。
「季夜、また会えて良かった」
ほっとして言った。
「俺もだよ。何か、いきなり住原から離れてさ。もうこれっきりかとずっと心配で」
「いや、悪かった。実は口寄せの効果は五分だけでさ。口寄せも一日一回しか出来ない。言い忘れてた」
「そうか……」
「口寄せ出来るのはネックレスの力を使ってから十日間だけらしい」
「十日間……」
そう呟いて季夜が息を呑み込む。
死んだ人間に息があるのかは分からないが、正にそういう感じだった。
兎も角、時間は一日五分しかない。
時間は季夜と話し始めてから二分半経ってしまった。
季夜と話したい事は他にも山ほどあったが俺はポチの事を訊かなければ。
「なあ、季夜……」
俺がそう言うと同時に季夜が、「なあ、住原」と話し掛けて来た。
「何だ?」と俺。
「そっちこそ何だ」と季夜。
「俺はいいからさ。何だよ」
俺は言った。
ポチの事を訊く事は大切な事だ。
しかし、季夜が話したい事を聞く事の方が、もっと大事だ。
季夜が、話を出来るのは唯一、俺が口寄せをしている時しかないはずだ。
季夜にとっては貴重な時間に違いない。
勿論、俺にとっても貴重な時間には違いない。
しかし、季夜が話したい事があるならそれを聞きたいと思う。
「悪いな。じゃあ話させてもらう。大事な話なんだ」
大事な話。
何だろう。
俺は、やや緊張しながら季夜が話すのを待った。
季夜は、こほんっ、と咳払いしてから話し出した。
「住原、俺が死ぬ前にお前と約束した事、覚えてるか?」
「覚えてる」
今まさに、その約束について訪ねようとしていた所だ。
しかし季夜の方から話し出すなんて……。
「あの時は、針千本、何て言って冗談みたいに頼んじゃったんだけどさ……」




