奇跡7
有り得ないだろ、と改めて思う。
占い師はこれを使えば季夜の魂を俺の体に呼ぶ事が出来るとか言っていたが、うさん臭すぎる。
でも、もしもそんな事が本当に出来るとしたなら……。
季夜とまた会うことが出来たら……。
俺は、ごくり、と息を呑む。
ベッドに腰掛けて手のひらの上のネックレスを見つめる。
そのまま記憶の中の占い師の言葉を反芻した。
それを身に着けて、集中して多田野さんの事を心から思えば、あなたの体に多田野さんの魂を呼ぶ事が出来るのよ。
そんな……ばかみたいな話。
ばかに何かしてないわ。騙されたと思ってやってごらんなさい。
「…………」
騙されたと思って……。
それなら、それなら試してみるか。
目を瞑り、手の中のネックレスを握りしめる。
ネックレスを身に着けて集中して季夜の事を心から思えば、俺の体に季夜の魂を呼ぶ事が出来る。
俺は目を開いてネックレスを首に下げた。
そして再び目を瞑る。
季夜の事を思う。
俺の親友。
大事な存在だった。
季夜の笑顔はいつも俺を満たしてくれた。
季夜がいれば俺は笑う事が出来た。
季夜……。
会いたい。
会ってまた話しがしたい。
また一緒に笑いたい。
季夜……。
季夜……。
季夜……。
俺は強く願う。
季夜にまた会いたいと。
柔らかく、落ち着く匂い。
それが何処からか香って来た。
懐かしい香り。
ああ、これは季夜の匂いだ。
季夜。
香心の中で名前を唱える。
「住原……」
気のせいか名前を呼ばれた気がした。
「住原……」
俺に馴染んだ声。
その声が俺を呼ぶ。
「住原……」
季夜の声だ。
俺の名前を呼ぶこの声は季夜のものだ。
「季夜!」
目を開き、大声で季夜の名前を言う。
「住原!」
俺の中で響く様に季夜の声で返事が返って来る。
「季夜……なのか?」
「ああ」
「一体何が起こってるんだ? 俺はおかしくなっちまったのか?」
大いに混乱する俺。
「住原は可笑しくなってなんか無いよ。おかしいのは俺の方かも知れない。俺は住原に呼ばれた気がして……それで気が付いたら住原の中にいたんだ。話まで出来るなんて信じられない」
こっちの方こそ信じられない。
こんな事があるのか?




