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五分と三角の時間に虹  作者: 円間
奇跡
17/60

奇跡4

 ありがたいな、と心から思う。

 しかし、残念な事に期待は外れた。

 仲間からポチの情報は訊けなかった。

 誰もポチはおろか、季夜が動物を飼っていたという話に心当たりは無かった。

 だが、何処かの野良猫かなんかじゃ無いか? とかネトゲの育成ゲームのキャラとかか? とか、そもそも動物じゃ無いんじゃ無いか? 等、貴重な意見を聞けた。

 しかし、その意見はポチを見つける事の難しさも物語っていた。

 ポチが野良猫だとしたらその野良猫を探すのに必要な手掛かりを探すのはどうしたら良いのか。

 ゲームのキャラだとしたら、そもそもどうした良いのやらだ。

 季夜の代わりに他人の俺がどうやってゲームをするのか?

 俺はネットゲームをした事が無く、他人が何をどうして亡くなった人間の代わりにゲームをプレイできるのか不明だ。

 ネットゲームでなければ可能かも知れないが、そのゲームをどうやって手に入れるんだ?

 季夜の家族に頼む?

 それはやはり躊躇われた。

 いや、そもそも季夜はゲームをやっていたのだろうか?

 そもそも動物じゃ無い場合。

 考えただけで混沌の世界に陥る。

 まさか、ぬいぐるみか。

 ポチとは一体全体何ぞや。

 こうして俺はポチとは何ぞやと考えに考えて時間を過ごした。

 季夜とのチャットの中に答えがあるかもと思い、膨大なチャットのやり取りを見たりもした。

 だが、手掛かりは掴めなかった。




 考えに考えた結果、俺は最後の頼みに頼る事にした。

 それは季夜の家族に連絡してポチの事を聞く、という事。

 家族なら、ポチについて何か知っているかも知れない。

 俺や仲間の知らない季夜の事を知っている人物と言えばやはり家族だろう、と噛みしめる様に思った。

 季夜に彼女でもいれば彼女に連絡する所だが季夜はモテる癖にそういう存在はいなかった。

 俺や仲間に秘密で付き合っていたとしたらそれまでだが。

 季夜の家族に連絡する。

 これは俺には相当な決意だった。

 家族に何て話せば良いのか、とか、季夜が亡くなった事で悲しみのどん底にいるに違えない家族に連絡する事は酷では無いかとか色んな考えが俺の頭の中を巡った。

 それにポチが何であれ、季夜に頼まれたからといって季夜の家族から季夜の物を奪うのはやっぱり躊躇いを感じる。

 だが、どうしてもポチについて知りたかった。

 知る必要が大いにあると思った。

 季夜の家族に連絡する決意は固めたが、俺は季夜の家族の連絡先を実は知らない。

 知っているのはおそらく季夜が亡くなった事を季夜の家族から電話で聞いた仲間の一人だが、それが誰だったのか。

 さっき電話で散々ポチの事を聞いておいて、今度は季夜の家族の連絡先を教えてくれだなんて言うのはどうなのか。

「ああーっ、考えてても仕方ねー!」

 俺はスマートフォンを手に取り、アドレスを開いた。

 アドレスの中には季夜の連絡先が残っていた。

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