表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
五分と三角の時間に虹  作者: 円間
奇跡
14/60

奇跡1

 眩しさで目が覚めた。

 開けっ放しのカーテンから日の光が差し込んでいる。

 もう朝だ。

 夢。

 季夜の夢を見た。

 俺は布団から起き上がると見た夢の事を考えた。

 遠ざかっていく季夜。

 季夜との約束。

「俺は何を約束したんだ?」

 思わず一人、呟いてしまう。

 俺は頭の中から記憶の全てを出し切ろうと眉間に力を込めた。

 そうして、唸る事、数分。

 全く思い出せない。

 いや所詮夢だ。

 約束なんかしなかったのかも知れない。

 しかし、何処か引っ掛かる。

「うーん……」

 最後の力を振り絞って考えてみるも無残だ。

「大学……行くか」

 食欲は全く無かったが俺はパン一枚と牛乳で朝食を食べ、支度をしてアパートを出た。




 今日も講義は上の空だった。

 ずっと夢の事を考えていた。

 何度もただの夢だと自分に言い聞かせた。

 しかし、気が付くと夢の事を考えてしまうのだ。

 約束。

 季夜との約束。

 それがあるとしたら何だろう。

 ただの夢……であって欲しくない。

 約束が俺と季夜との間をまだ繋いでいてくれる。

 もし、本当に季夜と何か約束をしたのだとしたら果たさなければならないと思った。

 それが使命だと、そう信じたかったんだ。




 チャイムが鳴り響き講義の終わりを告げた

 講義が終わると仲間の一人が、「なぁ、住原」と話し掛けて来た。

「うん?」

 俺は戸惑い、頼りない返事をした。

 何と言うか、仲間に話し掛けられるのも意外な気がした。

 俺は今日、大学へ来てから仲間と顔を合せていなかった。

 俺と仲間を繋ぐのは季夜の存在だけだったから、季夜がいないと仲間の中に入って行くのは、何と言うか、心細く感じた。

 仲間といても何とも居心地が悪いのだ。

 季夜の通夜に一緒に行った時も仲間の中で俺だけ浮いている様に思えた。

 俺なんかが仲間の輪の中にいて良いのだろうか、と言う疑問の下に俺は自然と仲間と距離を置いたのだ。

「大丈夫か? お前」

 言われて、何が? と思う。

 俺は沈黙した。

「いや、今日もぼんやりしてたから。多田野の事、まだショックなのかな、と思って」

「当たり前だろ!」

 カッとなり、つい大声を上げた俺に、何事かと学生達の注目が集まる。

 挙動不審に辺りを見回せば他の仲間達が固唾を飲んで俺達を見ているのに気が付いた。

 気まずい。

 話し掛けて来た仲間も気まずそうだ。

「悪い。勿論、俺もまだショックだよ。他のやつらもそうだ。だからその……何ていうの? 何かあるなら言えよ」と仲間が言った。

「えっ」

 俺は驚いた。

 こいつ、俺の心配をしてくれているのか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ