別れ12
「あなた達が此処へ占いに来た時。彼の運勢を見た時に感じたの。彼の死を。彼には死神が憑りついていたのよ、だから、彼の死は逃れられない運命だったのよ」
「死神?」
「ええ、そうよ」
死神、そんなもん存在するのか。
とても信じられない。
「信じられないって顔ね。でも、そういうものが確かにあるのよ」
「はあ」
俺は、曖昧に頷いた。
「さっき話した通り、多田野さんに死の運命が待っている事を話してしまった事を私は後悔しているの……とても、ね。言うべき事じゃ無かった。あの時はどうかしてた。彼の目を見ていたら、話してもいい気がして……けど、それは間違えだったのよ。たとえ彼の望んだことでも、私は言うべきじゃなかった。彼は、知らずにいるべきだったのよ。その方が幸せだったに違えないわ。でも、私は彼に死を告げてしまった。私は残酷な事をしたのよ。その事に、私は責任を感じているのよ」
俺は言葉が出なかった。
こんな事を言われて、何を返せばいい。
それを言われたら、あの時、俺だって、占いの結果を知りたがる季夜を止めて占いの館を出ていれば良かった。
静まり返った場に、再び占い師の声が響く。
「だからあなたが来るのを待っていたの」
「俺が此処に来ると思ったんですか?」
「ええ。必ず」
「それも占いですか?」
「ふふっ、ただの感よ」
「はぁ……」
「多田野さんに私は申し訳ない事をした。だから、償いがしたいの。これを……」
占い師が俺に手を差し出した。
「受け取って」
言われて、俺は、占い師の手の下に自分の手のひらを広げる。
すると、占い師の手から、何かが落ちて来た。
手のひらに落ちたそれを見ると、小さな涙型の水色の石の付いたネックレスだった。
「何だよ、これ」
指で摘まんでよく見てみる。
ただのアクセサリーだ。
「それは、特別な石なの。口寄せの石」と占い師。
「口寄せ?」
聞いた事がある様な無い様な言葉だ。
「交霊術の一種よ。それは昔から口寄せの為に使われて来た石なの」
「はぁ……」
「それを身に着けて、集中して多田野さんの事を心から思えば、あなたの体に多田野さんの魂を呼ぶ事が出来るのよ」
何だって。
こいつは何を言ってるんだ。
「こいつは何を言ってるんだって思っているわね」
占い師は探る様な目で俺を見ている。
「当たり前だろ。そんな事、誰が信じるもんかよ! ばかにするのもいい加減にしろよ!」
「ばかに何かしてないわ。騙されたと思ってやってごらんなさい。あなたが、多田野さんにとって大事な人なら、そして、あなたも多田野さんを大事に思うなら出来るわ。もしも、多田野さんにこの世に心の残りがあるのなら、その石を使ってあなたが心残りを晴らさせてあげると良いわ。その石をあなたに与える事、それが、私にできる唯一の償いよ」
「うっ」
何が何だか分からない。
この石で、季夜の魂を俺の体に呼ぶってどういう事だよ。
こんな飛んでる話、聞いた事も無い。




