別れ10
やがてカフェの中が騒がしくなるくらいになると俺はたまらず、まだ雨の降る外へ抜け出した。
雨は、しとしとと降っていた。
出来るだけ濡れない様に雨宿りを繰り返して歩いた。
アパートに帰る気にはなれずに俺の足は駅からどんどん離れていく。
俺は何処に向かっているんだろう。
この先に何があるんだろう。
そんな疑問に軽口を漏らしてくれるやつはもういない。
「季夜……」
名前を呼んでも虚しいだけだった。
俺をあざ笑うかのように降る雨は止みそうにない。
夜になっても俺はまだ街をふらついていた。
街は夜でも、きらきらと明るかった。
その明かりは、びしょ濡れの俺を余計惨めにするだけだ。
光の中であぶれた俺を街行く人々は眉を顰め怪訝な顔で見る。
あんなに濡れて……と言う呟きさえ聞こえた。
「くそっ」
丁度良く落ちていた空き缶を思いっきり蹴り飛ばす。
鬱陶しい視線が離れていく。
まだ帰りたくない。
そんな気持ちだけが俺を動かした。
気が付けば、俺は、あの占いの館の前にいた。
季夜と来た占いの館。
きらきらと輝く雨降りの夜の街を歩いて辿り着いた占いの館のドアノブには、Closeの札がぶら下がっていた。
それにも構わずにドアノブを回すと、ドアが開いた。
俺は、ためらう事はせずに中へ入る。
占いの館はしんと静まり返っていた。
受付には誰もいない。
しかし、明かりはついている。
誰かがいるはずだ。
俺は、まっ直ぐにカーテンの閉まった占いのブースへ向かうと勢いよく、カーテンを開いた。
果たしてそこに、あの占い師はいた。
俺と季夜を占った占い師。
占い師は侵入者の登場に驚いた様子も見せず、俺を透き通った目で見つめている。
俺の心がざわつき始める。
無性にムカついて仕方がない。
「今日はもう店じまいですよ」
占い師が静かに言う。
俺は拳を握りしめた。
「そんなの知るか! 季夜が死んだんだ! あんたの占いの通りに死んだんだ!」
俺は声を荒げて言った。
占い師は落ち着いた様子で、「そうですか」と答えた。
占い師の落ち着きっぷりに俺の頭に血が上る。
「何を落ち着いてるんだよ! あんたのせいだ! あんたの占いのせいで季夜が死んだんだよ! この、人殺し!」
そんな訳無い。
季夜が死んだのは、信号無視の車のドライバーのせいだ。
そんな事は分かっているのに、俺の口からは占い師を罵る言葉が溢れてくる。
「彼が亡くなったのは私のせいでは無いわ。申し訳ないけど、彼の運命だったのよ」




