【第9話】 坂本さんVS井上くん
前回の続きです。
まだ読んでいない人は、前々回、前回と呼んだ方が流れが分かります。
坂本さんVS井上くん
~競技【玉入れ】開始~
坂本さん
「さっきとルールは同じね」
井上くん
「はい、よろしくお願いします」
競技【玉入れ】
ルール
・二人対戦。各自持ち玉は30個。
・任意の数を目の前の紙皿にお互い置く。数の多かった方の勝ち。(1度に出せる最大数は10個)
・5回勝負で、3回先に勝った方が勝者。
・玉の数が同じの場合は引き分け。
・5回勝負が終えた時点で、勝敗が引き分けの場合は、残った玉の数が多い方が勝者。
・勝負の際、玉を1つも出せなかった場合は、その時点で負けとなる。
坂本さん
「ただし、考える時間は1勝負につき、5秒にしよう」
佐藤
「5秒!?それは速くないすっか?」
井上くん
「分かりました」
佐藤
「井上、大丈夫なのか?」
井上くん
「うん、さっきやったし、何となくいけると思う」
坂本さん
「ありがとう、じゃあルールは同じ、考える時間は5秒までで」
佐藤
「じゃ、2人とも1回戦の用意をして」
井上くん
(佐藤くんみたいにはいかないだろうな。だったら、、、)
坂本さん
「・・・」
佐藤
「せーのでいくよ」
佐藤 坂本さん 井上くん
「せーのっ」
玉の数
坂本さん 10 1 井上くん
井上くん
「よし!」
坂本さん
「・・・」
佐藤
「じゃ、2回戦の用意をして」
井上くん
(上手く相手に玉を使わせることができた!この調子で、僕は後半勝負でいく)
佐藤
「せーのでいくよ、」
佐藤 坂本さん 井上くん
「せーのっ」
玉の数
坂本さん 10 2 井上くん
井上くん
(1個で来ると思ったのに。でも10個使わせたんだから悪くないぞ)
佐藤
(これは、、、井上有利だよな?相手はもう残りの玉は10個だし、井上は27個。残りの3回戦で十分に逆転できる)
坂本さん
「井上くん上手いなぁ。僕が1個でいってたら危なかったよ」
井上くん
「へへ、読み外れちゃいましたけど」
坂本さん
「ふふ、次は当たるように気を付けてね」
佐藤
「お互い、3回戦の準備は良い?せーのでいくよ」
井上くん
(これは、、、勝てる!)
佐藤
「じゃ、いい?」
佐藤 坂本さん 井上くん
「せーのっ」
坂本さん ? 9 井上くん
佐藤
(そうか、坂本さんの残りは10個。それを3回戦で使うとなると、8・1・1になるから、最大の8に負けないようにすればいい。井上の残りの玉は27個だから、9・9・9で、どこで坂本さんが8を出しても3回勝てる)
井上くん
(これが最適解、のはず、、)
佐藤
「坂本さん?隠してないで早く玉見せてくださいよ」
坂本さん
「井上くんってさ、頭いいよね?」
井上くん
「別に悪くはないけど、良くもないかと?」
坂本さん
「いやいや、十分優秀だよ。このゲームのコツをすぐ掴むし、相手の玉の数と自分の玉の数をよく把握してる。それにあった、作戦を立てるのも早い。僕の言った5秒ルールにも付き合ってくれてるし」
井上くん
「ありがとうございます?」
坂本さん
「この9個出したのだって、残りの3回戦で確実に勝つためでしょ?」
井上くん
「9・9・9って出せば、確実に3勝できると思ったので」
坂本さん
「そうだよねそうだよね、でもまぁ」
井上くん
(まさか・・?)
坂本さん
「ここで勝負が決まったら元も子もないよね」
玉の数
坂本さん 10 9 井上くん
井上くん
(やっぱり!)
佐藤
「え?これありなの?」
井上くん
「あり、だよ、、。ルール説明では、3回勝った方が勝者。勝負の時に玉を出せなくなったらその時点で負け。つまり、玉がなくなろうと3回勝ったらその時点で勝ちが決まるんだ」
坂本さん
「そういうこと。まぁ3回戦で玉を10個出されたら僕の負けが確定するから、初心者にしか使えない初見殺しの戦法だけどね」
佐藤
「あー-!だから考える時間も5秒にしたんですか?短くして気付かせないために」
坂本さん
「いやいや、元々このゲームは5秒でやるものなんだよ。さっきは初心者同士だから言わなかっただけさ。それに、」
佐藤
「それに?」
坂本さん
「井上くんなら5秒でもできると思ったからね。結果的には罠にはめたことになっちゃったけど」
井上くん
「いえ、考えれば気づくことでした」
佐藤
「井上、、、」
井上くん
(そうか、なんで僕は気付かなかったんだろう。5回勝負するものだと思い込んでた僕のミスだ)
坂本さん
「じゃ、僕が勝ったからね、約束通り帰ってもらおう」
井上くん
「分かりました」
(そうか、負けちゃったからもう僕はゲームサークルには入れないんだ)
佐藤
「ちょっと待ってくださいよ!だってあいつ、」
坂本さん
「そして後日改めて連絡しよう」
井上くん 佐藤
「え?」
坂本さん
「僕は、勝ったら入ってもらうとは言ったけど、負けたら入れないとは言ってないよ」
佐藤
「だって帰ってもらうって」
坂本さん
「今日のところは帰ってもらう。そして改めて、後日歓迎しよう」
井上くん
「坂本さん!」
坂本さん
「ただのサークルだからね。来るもの拒まずだよ」
佐藤
「なんだ、俺めっちゃびっくりしましたよ。せっかく連れてきたのに入れないのかと」
坂本さん
「ごめんね。その方が勝負も真剣になるからさ。ほら、今日はもう帰りなさい」
佐藤
「じゃ、行くか井上」
井上くん
「うん!坂本さん!ありがとうございました!」
坂本さん
「うん、またね。連絡は佐藤に伝えるから、ばいば~い」
???
「珍しいですね」
坂本さん
「なんだ、塚本くんもいたのか」
塚本(ゲームサークル2年)
「いつもはああいうこと言っても勝負で負けてあげるじゃないですか。なんであんな初見殺しなんか」
坂本さん
「いや~あの子頭いいと思ったからついね。あれでも気づきやすいようにヒントは言ってたんだけどね」
塚本
「ほとんどの人って1回はあれに引っかかりますからね」
坂本さん
「ふふ、引っかからなかったのは今いるメンバーだと君ぐらいだけどね」
塚本
「まぁ、普通にあんたと勝負して勝てる人なんてそうそういないけど」
坂本さん
「まぁ、これから人も増えるし、面白くなりそうだね」
~そのころ帰り道の井上くんと佐藤~
井上くん
「坂本さん強かったね」
佐藤
「あの人部員の中で1番強いて言われてるんだぜ」
井上くん
「そうなんだ!何人くらいいるの?」
佐藤
「確か~、1年が井上と俺も含めて4人。2年が3人で3年が2人とかだったかな」
井上くん
「僕も含めたら全員で9人か」
佐藤
「その中でも部長と、2年の塚本って人はなんかすごい人らしいぞ。成績も優秀で、教授たちの間でも名が知れてるって先輩が言ってた」
井上くん
「そうなんだ。佐藤くん、サークルに誘ってくれてありがとうね!」
佐藤
「おう、また行こうな。じゃ、おれこっちだから」
井上くん
「うん!ばいば~い!」
~ゲームサークル入部編 完~
初めてちょっとした続きものを書きました。
ご意見、ご指摘等いただけると嬉しいです。