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自分探しの異世界冒険  作者: バーチ君
新たな大陸で自分発見の旅!
91/107

オセアン大陸平定完了

 ミラージュの街を出てから2週間が経った。やっと王都ネクトルに到着だ。オレと師匠が来ることが分かっていたかのように、警備が厳重だった。城門を入りための検問でも2時間は待たされた。どうやら、美女と美男のカップルを探しているようだった。子どもの姿のオレには関係ないけどね。


 街に入った後も警備の兵士達が様々な場所にいた。それにしても街に活気がない。店の中には、商品がまばらな状態の店もある。


 

「師匠。警備が厳重ですね。」


「ああ、私達のことがジャング国王に伝わったんだろうな。」



 オレと師匠は狩人ギルドに行った。ここのギルド内には酒場が併設されていて、昼から酒を飲んでいるもの達がいる。オレと師匠は掲示板を見ながら彼らの話に耳を立てて聞いていた。



「国王は何を考えているんだ。税金ばっかり上げやがって、こんなんじゃみんな食っていけなくなるぞ!」


「おい、声が大きいぞ! 兵士達に聞かれたら牢屋行きだぜ!」


「別に構わんさ!」


「昔は優しい国王だったのになぁ~。どうしたんだろうな?」


「なんか、遺跡が南で発見されて、それかららしいぜ!」


「王子や王女、それに他の貴族達は何をしているんだ!」


「噂だけどな。国王に文句を言うものは、誰でも構わず手あたり次第に、地下牢に押し込んでいるらしいぞ!」


「本当か? それは!」


「いっそのこと、キャッツの街に現れたとかいう、神の使徒が国王を退治してくれたらいいのにな。」



 オレと師匠はギルドから出て城の近くに行った。さすがに警備の数が多い。何度も職務質問された。その度に同じことを答えている。



「師匠。最初に地下牢に行って、捕まっている人達に話を聞いた方がよさそうですね。」


「そうだな。」



 オレと師匠は久しぶりに『隠密』を発動して、兵士達に気付かれないように地下牢までやってきた。地下は松明で明るく照らされている。一つ一つ牢屋を確認していくと、王妃や王子、それに王女の姿もあった。他にも数人貴族らしい人達が捕まっていた。



「みなさんに聞きたいことがあるんですけど。」



 突然姿を現した少年と美女に全員が驚いた。



「あなた達は誰?」


「神の使いかな。」


「使徒様ですか?」


「そうだね。みんなをここから出したいんだけど、いいかな?」


「お願いします。」



 オレは刀で牢屋の鉄格子を切っていく。そして、全員まとめて街の外に転移した。


 魔法を使うものがほとんどいないこの大陸で、初めての魔法は彼らにとって信じられない出来事だったようだ。一瞬で場所を移動したことに全員が驚いている。そして、オレ達に向かって平伏して拝み始めた。



「ありがとうございます。」


「神様。ありがとうございます。」


「オレの名前はシンです。神様じゃないから普通に接してください。」


「私はナツだ。」



 全員がオレ達をまじまじと見た。オレはどう見ても犬獣人族の子ども。師匠も犬獣人族の美女だ。すると、一人の貴族が言ってきた。



「我々獣人族の中に、神の使徒がいらっしゃったとは知りませんでした。」


「ああ、ごめん。これは仮の姿なんだ。」


「仮の姿ですか?」


「本当の姿を見ても驚かないでね。」



 オレと師匠は本来の魔族の姿に戻った。オレの背中にも師匠の背中にも漆黒の翼が出ている。



「まさか?! 魔族ですか?」


「そうさ。オレも師匠も魔族だよ。」


「魔族から使徒が出るとは?」


「なんかみんな誤解しているようだけど、人族も獣人族も魔族も関係ないんだよ。要は、どの種族であろうと、神の意志に忠実に生きているかどうかだと思うよ。」


「なるほど。そうですね。」


「ところで、ジャング国王のことで聞きたいんだけど。」



 王妃が申し訳なさそうに下を向いてしまった。



「あの人は、古代遺跡が発見されたという報告があった日の夜から、急に変わってしまいました。」


「どんな風に変わったの?」


「はい。それまでは平和を愛する人でしたが、急に人族を滅ぼすとか、この世界を手に入れるとか言い出したのです。」


「他に変わったことはないですか?」


「お父様の目の色が変わっています。それまでは黒い瞳だったのに、赤くなっていました。」


「そうですか? オレと師匠が最善を尽くしますが、もしかしたらすでに国王は殺されているかもしれません。その時は諦めてください。」


「そんな・・・・。」


「お父様・・・」



 オレはこの後、王妃達が寝泊まりできる場所をどうしようか悩んだ。



「キャッツの街のオスカ伯爵に頼んだらどうだ。」


「そうですね。そうしましょう。」



 オレはみんなを連れてオスカ伯爵の屋敷に転移した。オレ達が突然現れたことにメイド達が驚いていた。



「オスカ伯爵かミーアさんはいますか?」



 すでにオレと師匠のことを知っているメイドが深々と頭を下げて、奥に小走りで行った。すると、直ぐにオスカ伯爵がやってきた。オレと師匠に驚くだけでなく、王妃や王子、王女、それに上役の貴族達がいることに驚いている。片膝をついて挨拶をしていた。



「オスカさん。久しぶりです。みんなをしばらく預けたいんですけど、いいですか?」


「別に構いませんが、どうしたんですか?」



 オレはこれからのことをオスカさんに告げた。恐らくジャング国王は悪魔に殺されたか操られていること、オレと師匠で悪魔を討伐することなどを説明した。



「わかりました。シン様、ナツ様。気を付けてください。」


「ありがとう。なら、行ってくるね。」



 オレと師匠は再び城まで向かった。城に転移すると、地下牢に捕まっていた人々が忽然と姿を消したことで城の中では大騒ぎになっていた。


 オレと師匠は『隠密』を発動して、一気にジャング国王のいる謁見の間まで来た。



「やはり来たな。ナザル様が言った通りだ。」



 国王ジャングの隣に立つ女性がオレ達に声をかけてきた。



「お前は何者だ?」


「私はこの男の妻のダルクだ! この男は私の思った通りに動くのさ。」



ジャング国王が外の兵士達に大声で叫んだ。



「曲者だ――――――!」



 外で待機していた兵士達が次々と部屋になだれ込んできた。そして剣を抜いて構える。



「こいつらを殺せ!」



 仕方がないので、オレと師匠は兵士達に正体を明かした。神々しい光に包まれ背中に純白の翼を出した2人の美男美女が姿を現した。

 


「オレ達はエリーヌ様の使徒だ! そこにいる悪魔を討伐しに来た! それでも逆らうなら、お前達も殺す!」



 オレの闘気に壁や床にひびが入る。兵士達は腰を抜かして怯えている。



「情けない奴らだ! わしが相手をしよう。」



 ジャング国王は剣を抜いてオレに向き合った。確かにジャング国王の目が赤い。もしかすると、国王は妻を名乗るダルクとかいう女に操られているのかもしれない。



「師匠。国王の相手をお願いします。恐らく操られているだけです。殺さないでください。」


「わかった。面倒だが引き受けよう。」



 オレはダルクの方に向き合った。



「お前の相手はオレがしよう。」



 ダルクの身体が黒い霧となって消えていく。オレは、逃げられないように結界を張った。



「シャイニングウォール」



 ダルクの周りに光の壁ができる。すると、ダルクは姿を現した。



「小癪なまねを。これならばどうだ!」



 ダルクが魔法を唱えながら手を振ると、天井と地面から黒い蔓のようなものが現れた。その蔓がオレの方に向かってくる。オレは、闘気を流した刀でそれを切っていく。だが、壁の横から伸びてきた蔓に身体が縛られた。



「どうだ! これでもう逃げられまい。」



 ダルクはトドメとばかりに魔法を放とうとしている。オレは全身の魔力を開放した。すると、金色の光が、オレの身体に巻き付いていた蔓を霧と変えていく。



「シャドウドラゴン」



 ダルクの手から放たれた漆黒のドラゴンが大きな口を開けてオレに襲い掛かる。



「グラトニー」



 オレは右手をかざして魔法を唱えた。すると、オレの手から出た光が漆黒のドラゴンを飲み込んでいく。



「馬鹿な!」


「もう終わりだ! 諦めろ! 『ブラックホール』」



 オレの手から出た黒い渦がダルクの頭上でどんどん大きくなる。ダルクは必死にこらえようとしているが、徐々に黒い渦に飲み込まれていく。



「ナザル様――――――!」



 黒い渦がすべてを吸い込んだ。オレが横を見ると、そこにはジャング国王が倒れていた。



「シン。大丈夫だ。国王は気を失っているだけだ。」


「終わりましたね。」


「王妃達を迎えに行くか。」


「はい。」



 兵士達に国王を部屋で休ませるように告げて、オレと師匠はオスカ伯爵の家に行った。



「シン様。ナツ様。終わったんですね。」


「ああ、シンが悪魔を消滅させたからな。」



 すると王妃達が走ってやってきた。息が切れている様子だ。



「こ、こ、国王陛下はどうなりましたか?」


「無事ですよ。操られていたようですが、もう心配はいりません。」


「ありがとうございます。本当にありがとうございます。」



 王妃がオレの手を握って感謝してきた。王女は隣でベソをかいている。王子は必死に涙をこらえていた。



「城に戻りましょう。オスカさん。ありがとうございました。」


「シン様の役に立てて良かったです。」



 オレは全員を連れて城に転移した。貴族達はそれぞれの屋敷に帰って行き、王妃と王子、それに王女はジャング国王のいる部屋に行った。オレと師匠も、疲れたので城から出た後、オレの亜空間の家に行った。



「師匠。終わりましたね。」


「そうだな。だが、ナザルはここにもいなかったな。」


「恐らく、西の魔族の大陸リフカか、北の人族の大陸ユーフラでしょうね。」


「どっちから行くつもりだ?」


「どうせ両方行くことになりますから、ユーフラからにしましょう。」


「そうだな。同じ魔族の大陸は最後にしよう。アーロンも連れてな。」


「はい。」


 

 翌日、オレと師匠が王城に行くとジャング国王はすでに元気になっていたが、操られていた時のことは何一つ覚えていなかった。王妃や王子達が説明して、オレと師匠のことをエリーヌ様の使徒と知って大慌てだった。



「使徒様。この度は本当にありがとうございました。この国も救われました。」


「オレのことはシンでいいですよ。それより、エリーヌ様はこの世界の平和を望んでいます。くれぐれも人族との戦争はしないようにお願いしますよ。」


「もちろんです。昔のわだかまりも、もう国民の心からはなくなりました。時期が来れば再び開国することにします。」


「是非そうしてください。」



 オレと師匠は城を後にして、次の大陸に向かうことにした。


読んでいただいてありがとうございます。

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