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自分探しの異世界冒険  作者: バーチ君
新たな大陸で自分発見の旅!
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マング王国の改革

 森の家に着くと、昨日と同じように子ども達と一緒に夕食を食べた。そのあと、アグネスと師匠が子ども達をお風呂に入れて寝かしつけた。一段落すると、アグネスがオレと師匠に聞いてきた。 

 


「シン様、ナツ様。どういうことなのか教えてください。」


「教会であったことが全部だよ。」


「それではわかりません。」


「オレと師匠は別の大陸から来たのさ。オレは魔王であり、精霊王であり、神の使徒だ。」


「私は魔族の四天王筆頭であり、神の使徒でもある。」


「なら、なぜ私が聖女なんですか?」


「アグネスさんは聖魔法を使えるよね。オレ達のいた大陸でも、聖魔法を使える人は少なくて、基本的に教会関係者だけなんだ。それに、オレにはエリーヌ様の声が聞こえるんだ。たまにだけどね。間違いないよ。」



 アグネスは黙り込んでしまった。



「不安なのはわかるよ。オレもそうだったから。」


「えっ?! シン様もですか?」


「突然魔王にされたり、精霊王にされたりしたら誰でも焦るよ。」


「そうだったんですね。」


「でも、オレの場合は、いつも師匠が近くにいてくれたから良かったけどね。」


「羨ましいです。お二人の関係が。」



 師匠がオレに肩を寄せてきた。



「オレ達も帰ります。明日また来ますね。」



 オレと師匠は師匠の家に帰った。


 翌朝、オレ達は森の家に行った後、街の教会に行った。すると、公爵を討伐した神の使いが教会に現れたという噂が耳に入ってきた。オレと師匠は慌てて頭からフードを被り顔を隠した。


 街には王都から派遣された兵士達がかなりの数で警備にあたっている。そこに、この国の紋章が描かれた馬車がやってきた。どうやら教会に行くらしい。オレと師匠は『隠密』を発動して、馬車の後を付けて行った。


 教会に到着すると馬車の中から、立派な服装をした紳士が降りてきた。みんなが片膝をついて挨拶をしている。身分の高い人間のようだ。その男性は大司教に案内されて応接室に向かった。護衛達も一緒だ。オレと師匠もそのまま部屋に入った。



「大司教殿。神の使いが現れたというのは本当か?」


「はい。間違いありません。」


「ならば、出来の悪い我が弟を討伐したのも、神の使いかもしれんな。」


「その可能性が高いと思われます。」


「神の使いは何と言っておったのだ。」


「“未来ある子ども達を救え”と言っていました。」


「そうか。神の使徒はすべてをお見通しなんだな。」


「恐らくそうだと思われます。」


「この国の闇の部分だ。闇組織が蔓延り、人身売買が行われている。それもこれもできの悪い我が弟のせいなんだがな。死んだ人間のことはもう言うまい。」


「国王陛下。このままですと、この国が天罰を受けることになりかねません。」


「そうかもしれぬな。隣国のチギト王国の国王が神の使徒によって討伐されたのは知っているか?」


「いいえ。存じませんでした。」


「この国が滅んでも、わしが死んでも構わぬ。国民に天罰が下ることだけは、何としても避けなければならぬ。」


「そうですね。そこで国王陛下にお願いなんですが、神の使徒は聖女様と親のいない子ども達を連れていました。この国に孤児院を作っていただけませんか?」


「孤児院か?」


「はい。闇組織からも子ども達を守れます。」


「なるほど、いい考えだ。大司教。すぐに宰相に言って手配しよう。」



 オレはそろそろ頃合いだと思って、国王と大司教の前に姿を現した。すると、国王も大司教も口を開けて驚いた。護衛達は剣に手をかけて警戒している。


 大司教がオレと師匠の姿を見ると、地面に座り平伏した。それを見て、国王も護衛達も一斉に平伏する。



「みなさん、椅子に座ってください。」


「神の使徒様。いや、精霊王様。何か御用でしょうか?」


「精霊王?!」


「自己紹介がまだだったですね。オレは魔王なんです。だけど精霊王でもあり、神の使徒でもあるんですよね。」


「魔王?」


「そうですよ。」


「私はナツだ。魔族四天王筆頭であり、神の使徒でもある。」


「私はこの国の王、グラン=フォン=マングと言います。」


「私は大司教のパウラです。」


「なら、グランさんとパウラさんでいいですね。チャックさんと同じように、オレのことはシンでいいですよ。」


「チャック辺境伯をご存じですか。」


「はい。チャックさんに頼まれてチギト王国に行ってみたら、国王が悪魔だったので退治したんですよ。でも、あの国にはデリー公爵やガレン伯爵のような立派な貴族がいたので、次の国王と宰相をお願いしたんです。」


「そうでしたか。チャック辺境伯から何も報告がなく知りませんでした。」


「チャックさんはオレと師匠の正体を知らないですからね。」


「そうでしたか。」


「さっきの話ですけど、この国には闇の組織があるんですか?」


「はい。恥ずかしながら我が弟が権力を笠に見逃してきたため、大きく育ってしまいました。」


「ちょっと待っていてくれますか?」



 オレは、魔王城まで転移してセフィーロ、ミア、ハヤトを連れてきた。


 オレが目の前で消えたと思ったら、3人を連れてきたので国王達はものすごく驚いている。

 


「シン様。この方達は?」


「四天王のセフィーロさん、ミアさん、ハヤトさんです。」



 3人はそれぞれ自己紹介をした。



「魔王様。何か御用ですか。」


「この国に闇の組織があって、人身売買のようなことをしているようなんだ。殲滅してきてくれるかな?」


「容易いことです。では、行って参ります。」



 3人はその場から消えた。国王も大司教も限界を超えたようだ。口を開けたまま意識が飛んでしまった。仕方がないので、ヒールをかけて2人の意識を戻した。



「では話に戻りますが、子どもは国の宝です。次代を担う子ども達が、安心して暮らせる国でなければいけないと思うんです。」


「おっしゃる通りです。」


「グランさんにお願いなんですが、各地域の教会に孤児院を作ってくれませんか? そして、教会への寄付金と国の予算で運営すればいいかと思います。」


「それなら持続的な運営が可能ですね。さすがです。」


「その責任者を大司教とアグネスさんにお願いしようと思うんです。」



 ここでグラン国王が不思議そうな顔をしたので、大司教が説明をした。



「アグネスとは聖女様のことです。」



 グラン国王が考え込んでいる。



「いや、アグネスという名前はどこかで聞いたことがあります。」


「前にここの領主だったカインズ伯爵の娘ですよ。両親はあなたの弟の犠牲者ですよ。」


「ああ、そうでしたか。カインズ伯爵の娘でしたか。私は何と詫びたらいいんだろう。」


「もう、終わってしまったことです。それよりも、前を向いて未来のための行動を考えましょう。」


「おっしゃる通りですね。」


「もう一つグランさんにお願いがあるんですが。」


「なんでしょうか?」


「この国の大掃除をしたいんです。バインド公爵の息のかかった貴族が残っているでしょう。城に貴族を集めてください。オレが退治しますから。」


「感謝します。私が情けない王であるゆえに国民に苦しい思いをさせました。」


「その通りですよ。国王は神から与えられた地位なんです。神の代行者として自ら行動を正し、善悪を判断して行動するようにしないといけません。自分にその力量がないのなら、王の座は誰かに譲った方がいいでしょう。ですが、あなたには本来力量があります。優しすぎるんですよ。だから、チャック辺境伯のような人を側近にしたらいいと思いますよ。」


「おっしゃる通りですな。強き王、優しき王になります。」


「オレも応援するから頑張ってください。」



 師匠はオレの隣でニコニコしながら黙っていた。




 “シンはどんどん成長するな。”




「師匠。アグネスさんを連れてきてくれますか?」


「わかった。」



 師匠は森の小屋まで転移してアグネスを連れて帰ってきた。アグネスは初めて経験した転移に目を白黒させていた。


 

「アグネスさん。国王と大司教ですよ。」


 

 オレの言葉で一旦アグネスは正気を取り戻したが、国王を目の前にして再び意識が飛びそうになった。何とか耐えて、慌てて挨拶をした。



「私はカインズの娘のアグネスと言います。」



 すると、国王は席を立ちアグネスの手を取り謝罪をする。



「私の目が節穴だったばかりに、お主には可哀そうなことをしてしまった。許して欲しい。」



 アグネスの目からは大粒の涙が流れる。



「もう。昔のことです。ですが、国王陛下にお願いがございます。」


「どんな願いかな?」


「はい。この国には親を亡くした子ども達が大勢います。子ども達が安全に生活できるように保護してください。」


「君は自分のことよりも子ども達のことを・・・・・」


「私は何と愚かな王であったことか。」



 国王は下を向いてしまった。そして、意を決したように顔を上げ告げた。



「このグラン=フォン=マング。命に代えてもお主の願いを叶えよう。シン様、私ははっきりと目が覚めました。貴族達の処罰は私が行います。その時には城まで来てもらえますか?」


「はい。聖女のアグネスも一緒に連れていきます。」



 それからオレと師匠とアグネスは森の小屋まで帰ってきた。



「シン様。どうなっているんでしょうか?」



 ここで、国王と大司教と話した内容をすべて説明した。



「私がこの国に作られる孤児院の責任者になるということですか?」


「そうだよ。アグネスさんしかいないじゃん。」


「シン様。私に務まるでしょうか?」



 ここで師匠が厳しい顔でアグネスに言った。



「できるかどうかではない。やるんだ! アグネス! お前が神から与えられた仕事なんだ!」



 師匠の言葉でアグネスの目が大きく見開いた。



「シン様。ナツ様。私やります。この国の子ども達のために、私、命がけで頑張ります。」


「いい目になったぞ! アグネス。」



 師匠がオレを見て微笑んだ。


読んでいただいてありがとうございます。

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