新大陸を目指して
オレは師匠とカゲロウと3人で、新大陸を目指して飛び立った。見渡す限り海だ。大精霊に聞いた通り西の方向を目指した。しばらく滑空していると、眼下に不思議な光景を目にした。海が大きく2つに割れていたのだ。東側の海水も西側の海水もその割れ目の中に流れ込んでいた。割れ目の先がどうなっているのだろうかとも思ったが、さらに西に向かって飛翔した。すると、島が見えてきた。どうやら小さな島がいくつか集まっているようだ。3人はその島に降りたった。
「師匠。さっきの海の割れ目は何なんでしょうか?」
「私も知らん。だが、あんな割れ目があったら船は行き来できんな。」
するとカゲロウが教えてくれた。
「大陸の切れ目ですよ。シン様のいた大陸には世界樹がありますから、他の大陸から簡単に移動してこられないようになっているんだと思います。」
「師匠は疲れていませんか?」
「大丈夫だ。」
「なら、少しこの島を探検してみましょうか?」
「わかった。気配感知しながら少し歩いてみるか?」
「はい。」
3人は海岸沿いを歩き始めた。空には海鳥が飛び、砂浜にはカニのような生き物が歩いている。普段天敵がいないのか、オレ達が近づいても逃げようとしない。森の中には、魔物でなく野生動物が多くいた。猪やシカに似た動物、猿や栗鼠に似た動物など、自然豊かな島だった。
砂浜に戻り、座っているといきなり師匠が服を脱いで海の方に走っていた。
「シン。お前も服を脱いで来い! 海の水が気持ちいいぞ!」
「師匠。誰かいたら恥ずかしいですよ。」
「誰もいないではないか。早く来い!」
オレが服を脱ぎ始めると、カゲロウが少女の姿に変身して全裸で海に入って行った。オレも仕方なく服を脱いで海に行った。なんか不思議な感覚だ。最初は恥ずかしかったが、大自然と自分が一体化した感覚になった。海に浮かびながら物思いにふけっていると、いきなり師匠に海の中に引きずりこまれた。海の中は透き通っていて、たくさんの魚が泳いでいた。
最初の恥ずかしさはすでに消えて、魚を取ろうと深い場所まで潜っていた。
「どうだ? シン! 楽しかっただろう?」
「はい。海も奇麗で最高でした。」
するとカゲロウが余計なことを言い出した。
「私もナツ様のように、子どもじゃなくて大人の姿の方がよかったかな~?」
「カゲロウはオレの友人だ。どの姿でも素敵だと思うよ。」
「シン様はお世辞がお上手ですね?」
「お世辞じゃないよ。」
カゲロウはすでに元の鳥の姿に戻っていたが、恥ずかしくなったのか空に舞い上がってしまった。
その日、一旦師匠の家に戻ってゆっくり休んだ後、再び転移して島まで来た。再び、大陸に向けて出発だ。3人は空に舞い上がり新大陸を目指した。かなりの時間飛翔したと思う。すでに夕方だ。前方にやっと大陸のようなものが見えてきた。オレ達がスピードを上げて近づいていくと、浜辺に何隻も船があった。どうやら人が住む大陸のようだった。
「師匠。やっと着きましたね。」
「さすがに私も疲れたぞ。」
「今日は一旦帰りましょう。調査は明日からにしましょう。」
「そうだな。」
オレ達は、一旦師匠の家に戻った。
翌日、昨日降り立った浜辺までやってくると、人族の漁師達が漁に出かけるために船を海に出すところだった。それをオレ達が眺めていると、後ろから老人に声をかけられた。
「お前さん達は漁が珍しいのかい?」
「はい。オレは初めて見ました。」
「そうかい。漁から戻ってくるまでに時間がかかるから、村まで一緒に来るかい?」
「お願いします。オレはシンと言います。」
「私はナツだ。」
「わしは、村の長をしているシゲというものだ。何もない村だが、ついてきなされ。」
オレと師匠はシゲについて村まで行くことになった。カゲロウはすでに調査に出かけている。
村には300軒ほどの家があった。食料品を扱う店もある。だが、さすがに屋台のようなものはない。
「シンさん達はどこから来たんだい?」
「・・・・・」
「何か訳ありなのかい?」
「・・・・・」
「まぁ、いいさ。人には言えんこともあるからな。ここが我が家だ。中に入るがいいさ。」
村長の家といってもそれほど大きくない。普通の家と変わらないぐらいだ。オレと師匠は客間に通された。しばらく待っていると、若い女性が飲み物を運んできてくれた。
「孫のリリーだ。可愛いだろう。12歳になったばかりなんじゃ。」
「おじいちゃん。お客さんの前で子ども扱いしないで!」
褐色の髪をした少女だ。さすがに海辺育ちだけあって日に焼けている。
「シゲさん。ここは何という国ですか?」
「国?」
「シンさんはおかしなことを聞くなぁ~。この辺に国などというものはないぞ シンさん達は本当にどこから来たんじゃ?」
すると、孫のリリーが話に入ってきた。
「おじいちゃん。連邦も国のようなもんよ。ちゃんと説明してあげないと、シンさん達が分からないじゃない。」
「そうかそうか。この辺りは、このアゲオ村と同じような小さな村や町が多いんじゃ。それぞれが意見を出し合って、物事を決めておる。どこぞのように国王やら貴族が大きな顔をしているような“国”とは違うんじゃ。」
シゲさんは過去に何かあったのか、“国”という言葉にものすごく抵抗があるようだった。
「ありがとうございます。よくわかりました。」
「シンさんの髪は赤色をしているが、もしかするとスカンジ王国の出身なのか?」
「いいえ。最初は白髪だったんです。だんだん赤くなって今の色になりました。」
すると、シゲさんが少し考えこんでしまった。
「どうしたの? おじいちゃん!」
「昔、わしが子どもの頃に聞いたことがあるんじゃ。この海の向こうに大きな大陸があって、そこには精霊達が集まる世界樹がある。精霊達はどれも奇麗で、髪の色も白・黒・赤・青・緑といろんな色の精霊達がいると。」
「そんな言い伝えがあるんですね。」
「誰も海の向こうに渡ったものはいないから、それが真実かどうかは不明だがな。」
「渡ろうとした人もいないんですか?」
「いるさ。このリリーの父親もそのうちの一人だ。だが、誰一人として戻ってきたものはいないんだ。」
「おじいちゃん。私も一人前の漁師になったら、世界樹を探しに行くよ!」
「馬鹿たれ! わしは絶対に許さんぞ!」
ここでリリーが下を向いてしまった。
しばらく話をしていると漁師達が帰ってきたようだ。外が賑やかになった。オレと師匠が外に出ると、漁師達が持った箱の中にたくさんの魚がいた。どうやら大量だったようだ。
「お母さん。お帰りなさい。お客さんが来ているのよ。」
30歳前後の褐色の肌の女性が母親のようだ。オレ達は自己紹介をした。すると向こうも丁寧に自己紹介をしてくれた。名前はカトレアだ。その日は、カトレアが獲ってきた魚をごちそうになった後、師匠の家に戻った。
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