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自分探しの異世界冒険  作者: バーチ君
魔王?! 精霊王?!オレが?!
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新教皇と新大司教

 強力な魔物の軍団を討伐し終えたオレと師匠は、さらに奥に向かって進んで行く。するとカゲロウが戻ってきた。



「シン様。聖女が捕まっています。急いでいきましょう。」



 オレと師匠が、カゲロウの案内で急いで向かうと手術室のような場所があった。そこに聖女が寝かされ、その腕から血が抜かれていた。オレは急いで聖女の寝かされていたベッドにかけ寄ろうとしたが、目の前にナザルが現れた。



「シン。遅かったな。既に聖女の血は頂いた。もう少しで俺様の念願がかなう時が来る。その時までせいぜい頑張るんだな。」



 ナザルは右手に聖女から抜き取った血を持って、瞬間移動で姿を消した。



「シン。ナザルは後だ。聖女をなんとかしなければ死んでしまうぞ!」



 オレは聖女の腕からゴム管を抜き取り、『リカバリー』を発動した。しばらくして、聖女が意識を取り戻した。



「ここはどこですか? あなた方は誰ですか?」


「オレはシン。こっちはナツです。具合はいかがですか?」


「私は聖女のクリスです。ここはどこですか?」



 ここで師匠が服をクリスに渡した。ベッドに寝かされたクリスは全裸だったからだ。服を渡されたクリスは、そこではじめて自分が全裸であることに気づき、渡された服で慌てて体を隠した。



「キャ――! 見ましたか?」


「いいえ。見ていません。」


「嘘です。見ましたね? 見ましたよね?」


「はい。でも、少しだけです。」



 クリスは顔を真っ赤にして、ベッドに腰かけた。少し落ち着いてきたようだったので、今までこの神聖エリーヌ教国で起こったことについて説明した。



「すると、私はここに誘拐されてきたということですか?」


「そうです。」


「それをあなた方が助けてくれたということですね?」


「はい。」


「あなた方は何者なんですか?」



 相手は聖女だ。隠しておく必要もない。オレと師匠は自分達の正体を明かすことにした。



「オレは魔王です。」


「魔王?!」


「はい。精霊王でもあります。」


「精霊王?!」


「はい。」


「ナツ様とそちらの鳥は?」


「私は魔族四天王筆頭のナツ=カザリーヌだ。」



 すると、カゲロウが元の姿に戻って自己紹介をした。



「私は神獣フェニックスです。管理神様に命じられて、シン様にお仕えしています。」


「神獣様の主人ってことは、シン様は神なのですか?」


「いいえ。でも、精霊王は武神のタケルさんや魔法神のマジクさんの下に位置する神とか言われたから、そういう意味ではそうなるのかもしれません。」


「タケル『さん』? マジク『さん』? ですか? ああ、神界で修行させてもらいましたから。」


「ええ――――――!!!」


「それより、クリスさんはオレと会うことを知っていたんですか?」


「はい。教皇様が暗殺された後、最高神のセリーヌ様から“精霊王が助けに来る”とだけ、聞いていましたから。」



 とりあえず、オレ達は場所を移して話をすることにした。そこで、教皇庁まで転移したが、クリスは転移が初めてだったようで驚いていた。



「クリスさん。教皇と大司教がいなくなった今、この国の政治の中心になる人はいないんですか?」


「はい。今のところは代わりになるような方はいません。」


「なら、しばらくは聖女であるあなたが中心となって、この国の内戦を解決しなければいけませんね。」


「はい。ただ、私だけでは・・・・・」


「大丈夫ですよ。オレと師匠も手伝いますから。」



 その後、反対勢力について説明を受けた。どうやら反対勢力は、火山の近くに数か所の拠点があり、その中心人物はヤットという人物のようだ。ヤットはエリーヌ教を邪教として、ミッシェル教こそ正しい宗教だと主張している。



「師匠。ヤットに加担している勢力をなんとか1か所に集めることはできないでしょうか?」

 

 

 みんなで考えた。だが、なかなかいい方法が見当たらない。するといつものように頭の中に声がした。




 『エリーヌの使者である精霊王が現れると噂を流せばいい。』




 確かに管理神エリーヌ様に反対する勢力は、それを阻止しようと動くだろう。オレは師匠とクリスさんに天の声の内容を話し、首都ヨークと火山のある場所の中間地点の草原地帯に、1週間後にエリーヌ神の使徒が現れると噂を流すことにした。



 オレ達が流した噂は瞬く間に広がっていった。そして、草原地帯では、一般市民が入れる区域を限定して、神の使いが現れるとされている場所から少し離れるように設定した。すべての準備が整い、使徒が現れるとされた日がやってきた。



「セフィーロさん、ミアさん、ハヤトさん。反体勢力の人間達を一人も逃がさないようにお願いしますね。」


「大丈夫ですよ。魔王様。眷属達も待機していますから。」



 オレは翼を出し、約束の地のはるか上空まで舞い上がった。恐らく地上からはほとんど見えないだろう。そこで、魔力と闘気を解放した。すると、赤い髪は逆立ち、黄金色の瞳がキラキラと輝く。背中には純白の翼が出た。オレの身体は神々しい光に包まれている。オレはそのまま地上近くまでゆっくりと舞い降りて行った。



「バキューン、ズキューン」



 どこかで銃を放つ音が聞こえる。地上に近づくにつれて銃の音が増えていく。




『神眼を使え!』

 



 オレは天の声に言われるまま魔力を目に集中して、神眼を発動する。すると、草原に隠れている反対勢力の場所が、ピンポイントですべてわかった。オレは、彼らに向けて魔法を放った。



「シャイニングアロー」



 上空に現れた無数の矢が、雨のように一斉に地上に降り注ぐ。地上から感じられる邪悪な魔力が次々と消えていく。そして、すべてが消えた段階で、オレは見物している大勢の人々に向かって話した。そして、オレが話している間に、オレを取り囲むように7大精霊が姿を現していく。



「人々よ! 聞くがよい! オレは精霊王のシン=カザリーヌ! 最高神エリーヌ様の使いだ!」


 

 オレの身体から一段と眩しい光が放射される。人々は全員がオレに向かって平伏している。



「最高神様はこの世界の平和を望んでおられる。平和を乱すものはこのシン=カザリーヌが許さない。心するがよい! 最高神様は奴隷制度を許さない。人々には平等に生きる権利が与えられている。奴隷は即刻開放せよ。オレはこの世界の人々が平和に暮らすことを願っている。」



 オレは役目を終え、転移で師匠のところまで帰った。



「シン。立派だったぞ!」



 師匠がオレを抱きしめてきた。



「ありがとうございます。」



 オレのもとにセフィーロさん、ミアさん、ハヤトさんが集まってきた。



「魔王様。反対勢力の掃除は終了しました。」


「ありがとう。これで、この国の人々も平和に暮らせるようになるね。」



 そこに聖女クリスがやってきた。



「やはりシン様はエリーヌ様の使徒だったんですね。」


「そうなのかな? 頼まれたこともないし、自分では自覚がないんだけど。」


「そちらの方々はどなたですか?」


「オレの仲間ですよ。」



 すると、皆が自己紹介を始めた。



「魔族四天王の一人、セフィーロです。」


「私も四天王の一人、ミアよ。」


「俺は四天王の一人、ハヤトだ。」


「なんか、魔族って言うと怖いイメージだったけど、いい人達ばかりなんですね。」


「クリスさん。人族も魔族も関係ないよ。悪は悪、善は善だからね。どっちにもいい奴もいれば悪い奴もいるさ。」


「シン様の言う通りだわ。ナツ様がちょっとうらやましいかな。」



 クリスさんは少し慣れてきたようで、少しずつ本来の明るさを見せるようになってきた。


 オレと師匠とクリスさんは、教皇庁に転移し今後の相談を始めた。



「今、世界会議を作るように動いているんだけど、この国の参加も検討してもらいたいんだ。」


「世界会議ですか?」



 オレは今までの経緯やら、参加国とその代表について、そしてその会議の目的についてなどを説明した。



「シン様。少し待っていただいていいですか? 先に、この国の司教を集めて、教皇と大司教を決めたいと思うんです。」


「いいよ。でも、どうやって選ぶの?」


「この国の国民はほとんどがエリーヌ教ですから、司教の中から国民投票で決めます。」


「なら、司教を集めてくれる? 一度全員に会ってみたいんだ。」


「わかりました。すぐに手配します。」



 翌日、教皇庁の大会議室に司祭30人が集められた。オレは全員の前に立って話をした。それはみんなの反応を見るためと、神眼で見極めるためだ。



 オレは漆黒の翼を広げてみんなを見渡しながら言った。



「いきなりだが、オレは魔王だ。」



 会場内が大騒ぎになる。ほとんどの者が会場の後ろに逃げて行った。その中で3名だけは椅子に座ったままだ。



 次にオレは精霊王に変化した。背中の翼は純白になり神々しい光に包まれる。



「オレは精霊王でもあるんだ。」



 後ろに逃げていた者達も全員がオレに平伏した。



 オレはその様子を見て、全員に椅子に掛けるように言った。そして、魔王と聞いてもなお椅子に座ったままの3人に話しかけた。



「最初にあなたの名前を教えてください。」


「私は、ロイジンといいます。」


「魔王と聞いて何故、動かなかったんですか?」


「本当に恐ろしい方ならば、聖女殿がこの場にお連れしないでしょう。ですから安心していました。」




「次にあなたの名前を教えてください。」


「私は、ラドンといいます。」


「魔王と聞いて何故、動かなかったんですか?」


「私の場合は、動かなかったのではなく、身体の力が抜けてしまい動けませんでした。」




「最後にあなたの名前を教えてください。」


「私は、ミカエルといいます。」


「あなたは魔王と聞いて何故、動かなかったんですか?」


「精霊王も魔王も神が創造した存在です。私は、地位や立場で判断しません。その人の本質で判断しますから。」




 3人の意見を聞いてオレは決めた。



「精霊王である私から皆さんに提案します。この中で新しい教皇にふさわしいのはミカエルさんだと思います。そして、大司教にはロイジンさんが相応しいと思います。理由は皆さんもお分かりですよね。」



 その場に出席している人々から反論は一切出なかった。そして、オレの提案がそのまま認められ、ここに新しい教皇と大司教が決定した。



 教皇と大司教と聖女にはそのまま残ってもらい他は解散してもらった。3人には、世界会議の話をした。既に聖女のクリスは知っているが、3人で話し合ってもらうために同席してもらった。



「この国はどうしますか? 世界会議に参加しますか?」



 3人が集まって話し合っている。そして、新教皇のミカエルが口を開いた。



「精霊王様。是非、この国も参加させてください。我々は最高神エリーヌ様の教えを世界に広める役割を果たしています。人々の平和、世界の平和を求める気持ちは同じです。」


「わかりました。では、世界会議の日時が決まりましたら、お知らせします。」


「会議を行う国への移動はどうするんですか? 遠い国もありますが。」


「転移装置という便利なものをご用意しますから、安心してください。」



 最初から最後までオレの隣にいた師匠が、やっといつものようにオレの腕を組んで体を密着させてきた。



 ここで、不思議に思ったのかロイジンが聞いてきた。



「お二人はどのようなご関係で?」


「師匠はすべてにおいてオレの師匠です。」


「やっぱり、私はナツさんが羨ましいです。」


「クリス。あなたもエリーヌ様にお願いして、運命の人を見つけなさい。」



 クリスが頬を膨らましている。会議場には笑いが起こった。


 オレ達はものすごく疲れたので、師匠の家に戻り、ご飯も食べず、風呂にも入らず、ベッドに入ってすぐに寝た。


読んでいただいてありがとうございます。

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