7大精霊VS魔物軍団
オレと師匠はカゲロウの案内で火山まで来た。火山の中腹辺りに巨大な穴があり、その付近に兵士達の姿が見える。
「シン様。ここです。」
オレ達は古代遺跡の入り口に舞い降りた。
「貴様らは何者だ?」
「お前達こそここで何をしている? お前達は聖女がここに捕らえられていることを知っているのか?」
「お前らがなぜそれを?」
「やはり、お前らは悪党の仲間か。」
「こいつらを殺せ!」
上官の命令で、兵士達が一斉に襲い掛かってきた。オレは、刀を抜いて次々と首を撥ねていく。
「ヒィ――――――! 化け物だ!」
最後に残った上官の首も撥ねた。見張りを全て片付けた後、オレ達は洞窟の中に入って行った。洞窟の中は、各場所に松明がたかれ明るくなっている。階段を降りると今までの古代遺跡の様に、広い空間に出た。
「シン。聖女の救出が最優先だ。」
「はい。カゲロウ。聖女がどこにいるか探してきてくれるか?」
「はい。シン様。」
オレはこの広い空間を魔力感知で探した。すると、魔力感知に複数の反応があった。オレと師匠が周りを見渡していると、たくさんある扉が次々と開いていく。扉の中からは、ヒドラやオーガキング、オークキング、サイクロプス、リッチキング、キメラ、ブラックドラゴンなど、S級の魔物が現れた。
「シン。こいつらは様子が変だぞ!」
「はい。恐らくナザルによって改造されていると思います。」
オレが闘気を解放しようとすると、7大精霊達が現れた。
「精霊王様。お久しぶりです。魔物の数が多いようですので、我々にもお手伝いをさせてください。」
「ありがとう。皆さん。じゃぁ、一緒に戦ってください。」
「はい。」
ヒドラにはシルフとドリアードが向かい、オーガキングにはノームが向かった。そしてオークキングにはウンディーネ、サイクロプスにはウイスプ、リッチキングにはシェイプ、キメラにサラマンダーが向かった。
ブラックドラゴンの相手はオレがする。
「師匠は、それぞれの様子を見て援護が必要なところにお願いします。」
「お前は、私に対して過保護すぎないか?」
師匠は笑っていた。
ヒドラがドリアードに向かって毒液を吐き出すが、それをシルフが風の壁で防いだ。ドリアードは地面から木の蔓を次々と出して、ヒドラを拘束していく。ヒドラは蔓に毒液を放ち、何とか逃れようと藻掻いている。そこをシルフが巨大な風の刃を発生させた。シルフの放った刃がヒドラの首を切り落とした。だが、中央には首を引っ込めていた金色の頭があった。ドリアードは天井から巨大な蔓を出し、その蔓が鋭い形に変形し、最後に残った金色の首も切り落とした。そして、ヒドラはその巨体ごと地面に倒れた。
ノームの方を見ると、さすがにオーガキングでは役不足のようで、全く相手にならない。ノームが地面から鋭い槍を何本も繰り出すと、オーガキングは呆気なく串刺しになって死んだ。
オークキングがウンディーネに襲い掛かるが、ウンディーネは服が汚れないように立ちまわっている。
「あんた、近寄らないでよ。匂いが移っちゃう。」
「ナザル様。命令。殺す。」
「あんた喋れるんだね? 本当に魔物? まっ、いいか。」
ウンディーネが手をかざすと目の前に水の竜が現れた。竜は大きな口を開け、オークキングを嚙みちぎる。オークキングの身体は上下が2つに分かれた。
サイクロプスにはウイスプが対応している。サイクロプスは、目から強烈な光線を放つ。だが、不思議なことにその光線はすべてウイスプが突き出した手に吸い込まれていった。まるで、オレの『グラトニー』のようだ。
「私は光の大精霊よ。そんな攻撃が効くわけがないでしょ。」
ウイスプが手を上空に挙げると、上空に光の巨大な球が現れた。その巨大な球が色を変化させながらサイクロプスに近づいていく。サイクロプスが避けようとするがそれを許さない。サイクロプスの身体がドロドロに溶けていく。そして、光が消えるとそこにサイクロプスの姿はなかった。
リッチキングにはシェイプだ。リッチキングは闇魔法を得意とするが、その闇魔法が発動しない。それはシェイプが闇の大精霊だからだ。シェイプはリッチキングの闇属性をすべて吸収してしまう。
「あなたは、私に勝てないよ。大人しく冥界に行きなさい。」
シェイプの手から出た漆黒の霧がリッチキングにまとわりついた。そして、リッチキングの身体を少しずつ溶かし始める。リッチキングは観念したようにおとなしくその場から消滅した。
残るはキメラとサラマンダーの戦いだ。キメラには頭が3つある。羊とライオンと蛇だ。胴体はライオンだが背中からは翼が生え、尻尾は蛇になっていた。
「久しぶりの戦いだ。かかってくるがいい。」
キメラは3つの口から同時に火を吐いた。だが、炎の大精霊であるサラマンダーには全く通用しない。逆にサラマンダーは自ら巨大な炎の竜に姿を変え、キメラを丸ごと飲み込んだ。キメラは、サラマンダーの身体の中でどんどん燃えていく。そして、サラマンダーが元の姿に戻った時には、そこにキメラの破片すら残っていなかった。
みんなが戦闘をしているとき、オレもドラゴンと対峙していた。
「お前はナザル様の敵だ。殺す。」
「ナザルはどこにいる?」
「答える必要はない。」
「なら、かかっておいで。」
ドラゴンが大きな口を開け炎を吐き出した。オレは避けることもせず、そのまま正面に受ける。
「口ほどにもない奴だ。」
ドラゴンが安心していると、そこには無傷のシンがいる。
「何故だ?」
「お前の攻撃が弱いからだろ?」
「ふざけるな!」
ドラゴンが鋭い足の爪で攻撃してきた。オレは刀を一振りすると、ドラゴンの両足が奇麗になくなった。
「ギャ―――」
オレが全身の魔力を解放すると、赤い髪が逆立ち、黄金の瞳はキラキラと輝く。そして背中には見事な純白の翼が現れた。
「貴様は何者だ? その姿、その魔力は、もしや・・・」
オレはドラゴンに向けて魔法を放った。
「スペースカッター」
オレとドラゴンを繋ぐ空間に亀裂が入る。そして、固い皮膚をしたドラゴンの身体に1本の線が浮かび上がった。次の瞬間、ドラゴンの身体はその線に沿って2つにずれ落ちた。
オレの前に師匠や7大精霊のみんなが集まってきた。
「精霊王様。終わりましたね。」
「みんな、ありがとう。オレ達はこの先に行くけど、皆は帰ってゆっくり休んでね。」
「はい。たまには、世界樹に遊びに来てくださいね。」
「今度寄らせてもらいますよ。」
7大精霊達は帰って行った。
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