シナアカ王国の再興
師匠とオレは目の前の機械や武器を空間収納にしまい、さらに奥に進んだ。すると、奥の広い空間には、戦車や戦闘機があり、この場所で武器の装着をしていたようだった。オレはすべての武器類を空間収納にしまい。師匠が、空間ごと消滅させた。
「終わったな。」
「はい。でも、ナザルがここにはいませんでした。」
「ブラゴだけでも倒せたのだからいいではないか。」
オレと師匠は王城へと飛び立った。
王城ではセフィーロさんとミアがすでに到着していた。
「セフィーロどうするの? 手っ取り早く城ごと破壊しちゃおうか?」
「ダメですよ。ミアさん。そんなことをしたら魔王様が悲しみますよ。」
「どうしてさ。だって、城の中には悪い奴しかいないんでしょ?」
「悪いのは国王とその一味だけですよ。他には善良な人もいますから。それに、眷属からの報告ですと、地下には捕まっている人達がいるようですよ。」
「面倒だな~。早く片付けて、グランデのところに行って新しい服の相談をしたいのに。」
「では、早速始めましょうか。ミアさんは、地下に行って捕まっている人達を開放してあげてください。」
「いいわよ。でも、私は戦わなくていいの?」
「地下にも見張りがいますから。」
「そう言うことね。なら行ってくる。」
ミアは無邪気な笑顔で地下に向かった。セフィーロは姿を消して、国王がいると思われる謁見の間に向かった。
謁見の間では国王がシナトヨ王国との戦争の報告を今か今かと待っていた。その隣には、不気味な老人の姿がある。
2人の間では周りから見ると不自然な会話がなされている。玉座に座る国王が脇に立つ老人に敬語を使っているのだ。
「ナザル様。今のところは順調です。恐らく国境の戦いでは我らが圧倒的な勝利を掴むでしょう。そうなれば、一気にシナトヨ王国に攻め込みます。あそこは、国王が変わったばかりですから、容易に落とせるでしょう。」
「油断するな。シュバルツ! シナトヨ国の国王もわしの部下だったのだ。だが、奴に殺された。」
「やつとは誰ですか?」
「現魔王のシン=カザリーヌだ。」
そこに黒い霧が立ち込め、セフィーロが姿を現した。
「久しぶりですね。ナザル!」
「お前は、四天王のセフィーロ!」
「魔王様の命令です! あなた達には消えてもらいます!」
すると、国王のシュバルツが大声で兵士を呼んだ。だが、誰も部屋に入ってこない。
「無駄ですよ! 全員が気を失っていますから。」
シュバルツが立ち上がって剣を抜いた。
「ナザル様。ここは私が何とかします。お逃げください。」
「セフィーロよ。お前達が四天王とか言って偉そうにしていられるのも今の内だけだ。あの方が復活さえすれば、お前らはこの世にはいないさ。」
ナザルはその場から消えた。その場に残ったシュバルツがセフィーロに攻撃を仕掛ける。セフィーロは爪を長く鋭くして剣を防ぐ。
「無駄ですよ。あなたではわたしには勝てません。本来の姿に戻った方がいいですよ! 悪魔族さん!」
「オレの正体に気付いていたのか? さすが四天王だな。」
「いいから早く来なさい。時間の無駄です。」
シュバルツが姿を消してセフィーロに攻撃を仕掛ける。だが、セフィーロの目が赤く光ると、シュバルツは息を詰まらせながら姿を現した。
「ゴッホン、ウッホン、ウッホン。貴様何をした?」
「あなたに教える必要性を感じませんね。」
「おのれ~!」
セフィーロの周りに無数のナイフが現れた。それらが一気に襲い掛かる。だが、セフィーロが『パチン』と指を鳴らすと、すべてが地面に落ちた。
「これでわかったでしょう? 私とあなたには絶対的な力の差があることが。」
ここでシュバルツが逃げようとする。
「逃がすわけないでしょう。」
セフィーロが再び『パチン』と指を鳴らすと、セフィーロの目の前に黒い球体が現れた。セフィーロが『フー』と息を吹きかけると、その球体はシュバルツの顔の前に行き、シュバルツを飲み込んだ。セフィーロはその球体を掴むと軽く握りつぶした。
“終了ですね。”
オレと師匠が王城に到着すると、セフィーロさんとミアが謁見の間で待っていた。謁見の間には地下で捕らえられていたこの国の王族達がいる。国王シュバルツはすでに悪魔族に殺され、身体を乗っ取られていたようだ。国王には子どもがおらず、現時点では弟のシュナイダーが国の代表者だ。
セフィーロさんが聞いてきた。
「古代遺跡の方はどうでしたか?」
「古代兵器の工場があったんで消滅させてきたよ。ついでに、ブラゴも消滅させたよ。」
「さすがは魔王様です。こちらも無事終了しております。」
「ありがとう。セフィーロさん。」
オレが外の様子を見ていると、カゲロウとハヤトもやってきた。
「遅くなりました。魔王様。」
「ハヤトさん。カゲロウ。ありがとうね。」
シュナイダーはオレ達を見て聞いてきた。
「あなた達はいったい何者なんですか?」
「オレ達は見てのとおり魔族さ。」
「魔族?!」
「誤解していたらいけないから最初に言っておくけど、魔族だから悪とは思わないでね。オレ達はこの世界の平和のために全員が命がけで戦っているから。」
「魔族がですか?」
「お前! 助けてもらって失礼だろう。この方は魔王様だ!」
「ええ―――――――!! 魔王?!」
「魔王って紹介されると警戒されるんだよね。でも、精霊王って紹介されると拝まれるんだよね。どっちもオレだから。」
その場の人族は全員が驚いた。
「ええええっ―――――――――――!!!」
オレは最初に黒い翼を見せて、その後に純白の翼を出して見せた。
「これでわかったでしょ! 魔族も精霊も人族も関係ないんだ! 悪は悪。善は善。それだけのことだよ。ちなみにここにいるのは、あなた方が恐れる魔族の四天王の4人と、あなた方が敬う神獣のフェニックスだよ。これがどういう意味か分かるでしょ!」
「恐れ入りました。皆様に対するご無礼の段、平にご容赦ください。」
「わかってくれればいいよ。それで、この国を復興してもらいたいんだけど、その役目をシュナイダーさんにお願いするね。」
「精霊王様のご指示とあれば、命を賭して精進いたします。」
「シュナイダーさん硬いよ。カエサルさんやリチャードさんのようにもっとフレンドリーでいいよ。」
「カエサル殿とリチャード殿というのは?」
「リリシア帝国の皇帝とアルベルト王国の国王だよ。それに、オレはシナトヨ王国の後見役もやっているからね。」
「皆さんは精霊王様とお知り合いなんですか?」
「シュナイダーさん。シンでいいからね。」
「わかりました。シン様。」
「いろいろあって知り合ったのさ。みんな友人だよ。オレ、この世界に結構友人居るからね。」
「そうなんですね。是非とも私も友人の一人にしてください。」
「いいですよ。そのかわり、みんなと同じようにこの世界の平和に協力してね。」
「はい。もちろんです。」
“これでまた一歩進んだかな。”
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