シナトヨ国のダンジョン(3)
31階層からは未知の世界だ。オレ達が31階層の探索を始めるとスケルトンが現れた。ハリソンさんは刀に火魔法を付与して戦っている。確かにゴースト系の魔物には火魔法と光魔法、聖魔法が有効的だ。オレは刀に光魔法を付与した。師匠も手刀に見せかけて光魔法で討伐していく。
32階層、33階層と進むにつれて魔物も強くなり、ゾンビ、ゴーストが現れた。ハリソンさんはもうヘトヘト状態だ。
39階層で少し休むことにした。安全地帯でないので、俺が見張り役をかって出た。
「すまんな。シンさん。」
「いいですよ。ここまでハリソンさんに連れてきてもらったようなもんですから。」
「そう言ってもらうと助かるよ。」
そして、いよいよ40階層の扉の前だ。
「オレ達は先に進みますが、一緒に来ますか?」
「えっ?!」
「2人とも大丈夫なのか?」
「はい。ここからは、オレが戦いましょう。」
オレ達は40階層の扉を開けた。そこにはリッチキングがいた。
「シンさん。まずいぞ! あいつはまずい! あいつは不死だ! 何があっても倒せんぞ!」
「大丈夫です。見ててください。」
オレは刀に闘気と魔力を込めた。刀が眩しく光る。リッチキングがオレに魔法を発動した。オレに向かって大小さまざまな石が飛んでくる。だが、オレの周りにまるで壁があるかのように石はことごとく跳ね返される。オレは一瞬でリッチキングの前に行き、刀を振りおろすとリッチキングの身体は左右二つに分かれた。そして、本来復活するはずのリッチキングが霧となって消えてしまった。その後に魔剣がドロップした。
その様子を後ろから見ていたハリソンさんは口を開けて驚いている。
「シンさん。あなたはいったい何者なんだ?」
「修行中の冒険者ですよ。ねっ、師匠。」
「そうだな。まだまだ甘いな。」
その後、41階層からは恐竜のような10m級の巨大な魔物が中心となった。キメラやワイバーンもいた。すでに、ハリソンさんの手に負える相手ではない。オレと師匠で倒していく。そして、とうとう50階層だ。
「ハリソンさん。いよいよ50階層ですよ。覚悟してくださいね。」
「はい。シン殿、ナツ殿。」
この時点でオレと師匠の呼び方が変わっている。ハリソンさんは尊敬のまなざしでオレ達を見ている。
50階層の扉を開けるとそこには巨大なドラゴンがいた。
「よもやここまでくるものが現れるとはな。」
「お前、しゃべれるのか?」
「当たり前だ。俺はこのダンジョンの、いいやこの遺跡の守護者だ。」
「遺跡? やはり、ここには古代遺跡があるのか?」
「お前は古代の遺跡を知っているのか?」
「ああ、知っているさ。この世界には不必要なものだ。オレが始末させてもらうぞ!」
「それは無理だ。どうせ俺には勝てないだろう。」
オレは刀を抜いて一気に間合いを詰めて切りかかった。ドラゴンが、鋭い爪でそれを受け止める。同時にドラゴンは翼をはためかせて風を起こした。オレは後ろに飛ばされた。次の瞬間、ドラゴンは口から強烈な火を吐き出した。オレは、咄嗟にそれを躱すが、オレのいた場所はマグマのように地面が溶けていた。
「なかなかやるではないか?」
「褒めてもらってありがとう。」
オレは刀に風魔法を付与して斬撃を飛ばした。ドラゴンの固い体にはかすり傷すらつかない。
「お前の攻撃など俺様に効くはずがないだろう。」
ドラゴンはオレに向かって火を吐き出す。オレは避けるのも面倒なので魔法で対抗した。すると、その衝突の影響から天井や壁に亀裂が入る。それを見た師匠がオレとドラゴンのいる空間に結界を広げた。
「シン。何を遊んでいるんだ! 早く終わらせろ!」
その言葉にドラゴンが反応する。
「遊んでいるだと?! この俺様をコケにしているのか! 許さんぞ!」
ドラゴンが翼をはためかせながら火力を上げて火を吐き出した。すると炎の竜巻が発生し、周りのものを巻き上げていく。
“しょうがないな。”
「グラトニー」
オレが右手を前に出して魔法を唱えると、オレの手から光が現れ、炎の竜巻が光に飲み込まれていく。
「なんだと~?! 俺様の攻撃をいとも簡単に防ぐとは! 貴様は何者だ!」
「なら、少し本気を出させてもらうぞ!」
オレは全身の闘気と魔力を解放した。身体が眩しい光に包まれていく。そして背中に純白の翼が出た。赤い髪は炎のごとく立ち上がり、黄金の目は眩しく光りを放つ。
「行くぞ!」
「お前のその姿は・・・・・まさか?!」
「そうさ、オレは魔王だ!」
「魔王?!」
「違う! もっと神聖な!」
「ああ、精霊王でもあるからな!」
「違う! もっと神聖な!」
「それ以上はないぞ!」
シンの姿に恐怖を感じたドラゴンは破れかぶれに口から火を放つ。
「消えろ!『シャイニングビーム』」
前に突き出したオレの右手が光ると、太い光線が放たれドラゴンの身体に大きな穴を開けた。そしてドラゴンは霧となって消滅した。ドラゴンの消滅と同時に巨大な魔石がドロップしたので空間収納にしまった。次の瞬間、嫌な殺気を感じたので、構えながら前を見ると目の前に一人の男が現れた。
「久しぶりだな。シン。」
「お前はブラゴ。」
「そうだ! ブラゴ様だ!」
「お前も強くなったようだな。」
「お前がなぜここに?」
「そんなことはどうでもいい。決着を付けようじゃないか?」
すると、オレ達がいる場所全体に声が響き渡った。
「ブラゴ。今はその時ではない。調査は終了だ! 戻れ!」
「ハハッ!」
「シン! 決着はまた今度だ。じゃぁな!」
ブラゴは姿を消した。そして、階下に繋がる階段が現れた。
オレは全てが終わった後、師匠とハリソンさんのもとに戻った。師匠はニコニコとご満悦の様子だ。一方のハリソンさんは目を開けたまま気を失っている。オレは元の姿に戻ってハリソンさんを起こした。
「ハリソンさん! ハリソンさん!」
「ああ、シン殿か。俺は何か今夢を見ていたぞ! ドラゴンが現れて、シン殿の姿が変化したと思ったら魔王とか精霊王とか、とにかく不思議な夢だった。」
すると師匠が笑いながら言った。
「それは夢ではないぞ! シンは魔王だ。そして精霊王でもあるからな。」
「ええ――――――――――!!!」
「黙っていてごめんね。ハリソンさん。」
「なら、本当なんですか?」
「ああ本当だ。見てみろ。私も魔族四天王筆頭のナツ=カザリーヌだ!」
師匠が背中から黒い翼を出した。するとハリソンさんが再び気を失った。
しばらくして、ハリソンさんが目覚めたので、古代遺跡のこと、その調査に来たこと、オレも師匠も世界の平和のために動いていることを説明した。
「まさか、シン様とナツ様がそんなお方とは知らずに数々のご無礼をお許しください。」
またオレと師匠の呼び方が変わった。
「気にしないでください。それより階段を降りましょう。」
3人は階段を降りて行った。すると、地下とは思えないほどの広い空間に出た。そこには、大小さまざまなミサイルがある。もしかしたらこの中には核弾頭を搭載したものがあるかもしれない。オレの額から冷や汗が出た。
「シン。これはなんだ?」
「はい。ミサイルです。もしオレが知っているものなら、これだけでこの世界の人々を全員殺すことができるでしょう。」
「それ程危険なものなのか?」
「はい。たまたま生き残っても、その後放射能に汚染されてやがては死滅することになります。」
「放射能? それは一体なんだ!」
「すごく危険な汚染物質です。」
「シン。消滅させられるか?」
「はい。やってみます。」
オレは全身に魔力を高め魔法を発動する。
「グラトニー」
オレの手から放たれた光がどんどん大きくなり、次々とミサイルを吸い込んでいく。そしてすべてのミサイルを吸い込んだ。
ハリソンはもうその様子を茫然と見ているだけだ。
「師匠。この施設を消滅させてください。」
「ああ、わかっている。『ディスアピアランス』」
施設が黒い霧に覆われていく。そしてしばらくして黒い霧が晴れ渡ると、そこにはただの岩の壁があるだけだった。
ハリソンさんは大きな口を開けたまま固まっている。
「シン。戻るぞ!」
「はい。」
オレ達3人は転移装置を使わずに、ダンジョンの外に転移して戻った。
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