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自分探しの異世界冒険  作者: バーチ君
魔王?! 精霊王?!オレが?!
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内戦の終結

 前方には国王軍が約10,000人で進軍してきている。対する狼獣人族は3,000人で籠城作戦のようだ。このままでは多数の犠牲者が出るだろう。



「シン。どうするつもりだ?」


「獣人族は元々妖精族ですよね? だったら、精霊王になったオレにしか止められませんよね?」


「なるほどな。管理神様の考えも少しは理解できたそうだ!」

 


 前方から土煙が上がっている。それにすごい地響きだ。前方には、獅子獣人を中心にした王国軍がやってきた。それに対して狼獣人達は戦闘準備を始めている。オレは城門の上に転移して、王国軍の様子を見た。前方からくる兵士達は見事な隊列を組んでいる。城門から500mほど離れた地点で王国軍が止まった。先頭には煌びやかな鎧をまとった国王ライオネルの姿が見えた。狼獣人族の方も城門が開き、中から族長のバロンが出ていく。そして、双方のにらみ合いが続いた。




“頃合いだな。”




 オレは黒い翼を広げて2人の真ん中まで飛んだ。そして、風魔法にのせて両軍に向かって告げた。



「オレは戦争を許さない。それでも戦うというのであれば、オレがこの国を滅ぼしてやろう。」



 すると国王ライオネルが高笑いをしながら言い放った。



「貴様のような小僧が一人で何ができる。見たところ魔族のようだが。」


「オレは魔王シン=カザリーヌだ!」



 魔王と聞いて一瞬、ライオネルとバロンの様子が変わった。



 今度はバロンが反論した。



「魔族がこの国を乗っ取るつもりか?」


「愚か者ども見るがいい!」



 上空にいるオレの周りに大きな7つの球体が現れた。そしてその球体が人の姿に変化していく。



「我らは7大精霊である! 精霊王様に無礼は許さない!!」


「精霊王?!」



 オレが魔力を高めていくと眩しい光に包まれていく。そして光が収まると、背中の黒い翼は純白の翼に変化していた。さらに、全身から神々しい光が放たれている。



 オレや7大精霊の姿を見た兵士達は全員が跪いたが、2人だけ立ったままのものがいた。ライオネルとバロンだ。



「お前達はまだオレに逆らうつもりがあるようだな?」


「魔王が精霊王であるはずがあるまい!」



 ライオネルが大声で叫んでいる。



「そうか。ならば仕方あるまい。ビャッコ! 前に出よ! 精霊王であるオレが許可する。こ奴を打ち取れ!」


「承知しました。」



 ビャッコが剣を抜いて、ライオネルに切りかかった。ライオネルも自分の持っている剣でその攻撃を防ぐ。ビャッコは鋭い動きで、フェイントをかけ左右に体を揺らしながら一気に間合いを詰める。そして、ビャッコの姿が消えた瞬間、上から雷魔法を付与したビャッコの剣がライオネルに襲い掛かった。ビャッコの姿を見失ったライオネルは一瞬防御が遅れた。次の瞬間、ビャッコの剣がライオネルの頭上で止まっていた。



「わしの負けだ。なぜ殺さぬ!」


「それが精霊王様の願いだからだ!」


「なんだと~!」


「精霊王様は平和を望んでいる。管理神様からの指示でここにいるのだ!」



 その言葉を聞いて、ライオネルもバロンもオレに跪いた。



「数々のご無礼、どうかお許しください。」


「オレはみんなが平和で平等に暮らせる世界がいいんだ。ライオネルさん、バロンさん。協力してくれるよね?」


「はい。是非協力させていただきます。」


「7大精霊のみんなもありがとう。この国を良くしたいんだ。みんなも協力してね。」


「シン様。我々7大精霊も是非協力させていただきます。」


「みんなありがとう。」



 オレは元の姿に戻って師匠の下に行った。



「シン。ご苦労だったな。」


「はい。でも、師匠がいてくれるからオレは頑張れます。」



 いつものように師匠がニコニコしながら腕を掴んで体を密着してきた。



 その後、両軍は武装を解除して自分達の領地に戻って行った。オレは、師匠とビャッコ

と宿の部屋の中で話し合っている。その結果、新たな首都をこの国の中心である兎獣人族の街にすることにして、各部族の代表からなる議会を創設し、連邦制の国にすることにした。その初代議長は当然ビャッコだ。



 オレ達はバロンの屋敷に行った。ものすごく丁寧な対応だった。



「バロンさん。いろんなわだかまりはあると思うけど、新しい国を作るにあたってそのわだかまりをなくして欲しいんだ。」


「大丈夫ですよ。精霊王様。」


「バロンさん。その精霊王はやめてくれるかな。できればビャッコさんの様にシンって呼んで欲しいんだけど。」


「わかりました。シン殿。それで、この後どうするんですか?」


「ビャッコさんとも相談したんだけど、今まで王都になったことがなくて、この国の中心にある街を王都にしたいんだ。」


「兎獣人の街ですね?」


「さすが、バロンさんだね。それで、各部族の代表をその兎獣人の街に集めて会議を開きたいんだよね。その会議をこの国の最高機関として、この国自体を連邦国にしたいんだ。」


「連邦国ですか?」


「そうさ。各部族の街ごとに自治権を与えて、国全体のことは会議で決めるのさ。」


「なるほど、それであれば各部族の不平不満も出ませんな。」


「その最高機関の議長は選挙で選んでもいいし、持ち回り制にしてもいいよね。初代はビャッコさんにお願いするつもりなんだけどね。」


「確かに、ビャッコ殿なら適任ですな。」


「各部族の代表を兎獣人の街に集めてくれるかな? バロンさん。」


「はい。早速手配しましょう。」



 オレ達は再び宿に戻った。今、オレと師匠の部屋にビャッコが来ている。



「シン殿。新しい街の名前はどうしましょうか?」



 ここで師匠がオレの顔を見て言った。



「バニーガールにするのか?」


「師匠流石です。それにしましょう。首都バニーガール。」


「お前は馬鹿か?」


「冗談ですよ。」



 3人で笑った。



「国名をエレメント連邦国として、首都の名前をアニムにしてはどうですか?」


「ビャッコさん、ナイスだよ。」


「なら、それで決まりだな。シン。」


「はい。」



 オレ達3人は宿を引き払い、兎獣人の街まで転移した。ビャッコは転移が初めてだったらしくものすごく興奮していた。

 


「さすが、魔王であり精霊王でもあるシン殿ですな。」


「別に大したことじゃないよ。魔族の四天王は全員出来るよ。7大精霊もみんなできるし。」


「シン。私達が普通じゃないんだ。お前の感覚もおかしくなってないか? 転移とかお前が何気なく使っている魔法も普通ではありえない話だぞ!」


「えっ?! そうなの? 昔から師匠に鍛えられて使って来たから、普通のことだと思ってた。」



 そして、その日は宿を取った後、解散となった。オレと師匠はいつもの通り師匠の家に行った。



「シン。お前何歳になった?」


「12歳だよ。」


「そうか。なるほど。」


「どうして?」


「精霊王になったからかとも思っていたが、年齢かもしれんな。」


「何が?」


「お前、自分で気づいていないのか? 口調が変わったんだよ。」


「そう?」


「そうさ。今だって、以前は“そうですか”と言っていただろう。」


「ん~。・・・・・・・確かに!」


「大人になっていく姿を見ると少し寂しいが、でも嬉しいもんだな。」


「良かった。でも、もっと歳を取ったら自分のことを“わし”っていうかもしれないよ?」


「ダメだ! それは私が許さん。本当はいつまでも“僕”でいてもらいたいぐらいだ。」



 オレは大人認定されたことが嬉しくて、その夜は思いっきり師匠に甘えた。



 翌朝、食堂で朝食を取っているとビャッコがやってきた。



「シン殿。ここを首都にするにあたって問題があります。」


「どうしたの?」


「この街の料理は野菜と果物ばかりで、身体に力が入りません。」



 確かにそこまで考えていなかった。すると、師匠が言った。



「ここが首都になれば、移住者も増えるだろう。そうしたら、近くに森もあることだし、冒険者も増えて肉料理も出るんじゃないのか?」


「ならば、“わし”の議長としての最初の仕事は移住者を増やすことですね。」



 オレと師匠は顔を見合わせて笑った。ビャッコはなぜオレ達が笑ったのか不思議そうな顔をしていた。



 それから数日の間、オレと師匠とビャッコは7大精霊のみんなに手伝ってもらって、街の整備や議事堂を作ったりして忙しい日々を送った。道路もしっかりと拡張工事を行った。兎獣人族の族長のミルフもすごく喜んでくれた。因みにミルフは独身女性だ。兎獣人では珍しくとてもグラマーな女性だ。気になるのはビャッコとやたら仲がいい。いつもビャッコと話をしている。



「ビャッコさんにも春が来たようだね。」



 ビャッコも否定しない。



「シン殿。わかりますか?」



 すると師匠がきっぱりと言った。



「あれだけ露骨にしていれば誰でもわかるさ。早くプロポーズしてしまえ!」


「はい。わかりました。ナツ殿。これから行ってきます。」



 ビャッコがすごい勢いで走って行った。



 その日の夜は、レストランでオレと師匠とビャッコとミルフで食事をすることになった。



「シン殿。ナツ殿。わしとミルフ殿で結婚することになりました。お二人には報告しておきます。議会が終了したらすぐに式を挙げますので、是非出席してください。」


「ごめん。ビャッコさん。オレと師匠は議会が終わったら、すぐに次の国に行かないといけないんだ。」


「もしかして、カゲロウ殿がいないのが何か関係していますか?」


「カゲロウがいろいろ調べてくれているからね。」


「そうですか。ならば、今日は是非とも飲みましょう。」



 飲むと言ってもオレは果実水だ。師匠達は美味しそうにエールや果実酒を飲んでいる。なんか仲間外れ気分で寂しい。でも、オレは酒は苦手だ。


読んでいただいてありがとうございます。

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