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自分探しの異世界冒険  作者: バーチ君
新たな大陸で自分発見の旅!
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復活

 オレは、師匠とカゲロウを追いかけて神界に向かおうとした。次の瞬間、大きな光の玉が現れた。



「お前はこれから神界に行くのだろう。では、お前の刀を出すがよい。」



 オレは自然とその大きな光の玉に言われるまま、自分の刀を差しだした。すると、その刀が不思議なことに七色の光を放ち光始めた。



「戦いにはこの刀を使うがよい。」



 大きな光の玉はそれだけ言うと、オレの目の前から消えてなくなった。オレは、再び刀を手にして神界まで急いだ。



 オレは神界まで来て目を疑った。清らかに清んだ空間がどす黒い魔力で満ちていた。そして、目の前には武神のタケルと魔法神のマジクが倒れている。奇麗な花が咲き乱れていた神殿まで続く道には、花はなくそれ以外の神々が倒れていた。



「エリーヌ様―――! カゲロウ――――! 師匠――――――!!」



 神殿に近づくにつれてまがまがしい魔力が濃くなっていく。そして、神殿のドアを開けると、目の前には十字架にかけられたエリーヌ様がいた。その脇にエリーヌ様を守るかのように師匠が倒れている。さらにその前に、両方の翼を切り落とされたカゲロウが倒れていた。

 

 そして、十字架の前では真っ黒なオーラに包まれた邪神ミッシェルが漆黒の翼を広げて、エリーヌ様を睨んでいる。

 


「師匠―――――!!」



 師匠がオレの姿を見て立ち上がってオレに何かを言おうとしている。オレに気が付いたエリーヌ様も何かを言おうとしている。



「お前がシン=カザリーヌか? なるほどな。やはりお前はただの人間ではないな。」


「ふざけるな! 貴様の目的はなんだ?!」


「この世界は元々俺の世界だ! 俺の世界を返してもらうだけさ!」


「そんなこと、創造神様が許すわけがないだろう!」


「ならば、この私が創造神となればよいだけのことだ!」



 ミッシェルがオレに向かって手をかざすと、オレは大きく後ろに吹き飛ばされた。



「シ―――ン!!」


「うるさい女だ! お前にはもう用はない!」



 ミッシェルがどす黒いオーレに包まれた剣で師匠に切りつける。それを十字架に磔にされているエリーヌ様が目から光を放ち防いだ。



「貴様は上級神だ! 貴様を消滅させることはできん。だが、力を奪い封印することはできるさ。だまって、こ奴らが殺されるのを見ているがよい。」



 ミッシェルはエリーヌ様の心臓の辺りに剣を突き刺した。すると血ではなく、眩しい光が外に放出された。そして、エリーヌ様は顔を下にうなだれてしまった。



「ミッシェル―――――!!! 貴様は許さん! 絶対に許さん!」



 オレはミッシェルの前まで瞬間移動し、剣で切りつけた。だが、ミッシェルはそれをいとも簡単に手でつかみ、オレの腹に拳を打ち込んできた。オレは後ろに転げまわる。口から血を流しながらも、再び瞬間移動してミッシェルの後ろに回り込み、剣で切りつけた。だが、結果は同じだ。



「ブラックホール」



 オレはブラゴを倒した必殺の魔法をミッシェルに放った。だが、ミッシェルが刀を振るとオレの渾身の魔力で作ったブラックホールも消滅してしまった。



「お前の力はその程度か? その程度の力にブラゴもナザルも倒されたのか? なんと脆弱な奴らだ。」



 オレは全身の魔力と闘気を解放した。赤い髪は逆立ち、純白の翼が背中に出た。そして黄金色の瞳が輝き始める。全身からはまがまがしい魔力を打ち消すかのように神々しい光が放出される。



「やはりな。貴様は人間ではないな。そうか?! 貴様はエリーヌの子か?! ならば完全に神格化していない今なら殺せるな!」



 十字架に磔にされているエリーヌ様の目から涙が流れた。



「我が子が殺されることがそれほど悲しいか? エリーヌ!」


「ちがうわ! 創造神様があなたに期待していたことがすべて裏切られていることが悲しいのよ。」


「何を言う?!」


「創造神様が初めて創造された世界を私や他の神でなく、なぜあなたに託したのか考えたことがありますか? あなたのことを信じていたからですよ。」


「うるさい! いまさらそんな世迷言聞きたくない!」


「俺は絶対的な力を手に入れたのだ! この力で創造神になって見せるさ。」



 ここで、倒れていた師匠がミッシェルに言った。



「お前なんぞの力で創造神になれるわけがないだろう! シン! こいつを倒せ!」


「うるさい女だ!」



 ミッシェルが師匠の背中に剣を突き刺した。オレの見てる前で、最愛の師匠の背中に剣を突き刺したのだ。


 オレの心の底から湧き上がる感情が魔力や闘気とは異なる形で溢れだす。それこそ神力だ。


 オレの髪が黄金色に変化し、黄金色の瞳が輝きを増し、背中の純白の翼は大きな黄金色の翼へと変化した。そして、全身からあふれ出す慈愛に満ちた神力が、強烈な光を放ちながらどす黒いミッシェルの魔力を打ち消していく。そして、すべての記憶が蘇ってきた。自分が何のためにこの世界に転生したのか。自分が何者なのか。

 


「お前はいったい何者なんだ! その姿、ま、ま、まさか・・・・」


「お前はやりすぎた。もう封印などしないさ。」



 オレは刀を抜いた。刀からは七色の光が放たれている。



「この刀の意味がお前に分かるな!」


「それは創造神のみが持つことを許される神滅剣! なぜお前が!」


「オレが持つことを許された存在だからだ!」



 オレは瞬間移動でミッシェルの前に飛び出し、目に見えない速さで刀を振る。ミッシェルの身体は一刀で両断された。



「何か言い残すことはあるか?」


「・・・・・」



 オレは刀をミッシェルの頭に突き刺した。ミッシェルは光の粒子となって消えて行った。



 十字架からエリーヌ様を下ろし、すぐに師匠を抱きかかえた。だが、すでに師匠は息をしていない。オレの目から、大粒の涙が溢れだす。後ろからエリーヌ様が声をかけてきた。



「シン。よく頑張ったわね。」


「ダメです。地上世界も消滅し、師匠も守れなかった。お、お、オレは何も守ることができなかった。」



 そこに、地上で見た大きな光が現れた。そして、その光は徐々に人の姿に変化していく。光がおさまり、目の前に現れたのはオレと同じ姿をした男性だ。そう、オレと同じ顔なのだ。オレを10歳年取らせた姿だ。



「父上。申し訳ございません。母上の管理する世界をオレは守れませんでした。」


「シン。お前には世界を守る覚悟はあるか?」


「覚悟があっても守れなかったんです。」


「一つだけ方法がある。究極の魔法、復元魔法だ。お前が亜空間を作った時のように、復元を望むならば、世界は復元できるだろう。ナツもカゲロウも復活できるだろう。」


「本当ですか?」


「だが、これは禁呪の魔法だ。禁呪を犯せば我が子と言えどもただではすまん。その覚悟はあるのか?」


「はい。世界が復元できるのであれば、師匠が生き返るのなら。オレはどんな罰でも受けます。」


「よし。ならば、やってみるがよい。願ってみるがよい。」



 オレは全身からもてる限りの魔力、闘気、神力を解放して、世界の復元を願った。師匠やカゲロウの復活を願った。


 目の前の景色が変化していく。そして、オレの意識が薄れていき、深い眠りについた。




「シン! 目を覚まして! シン! お願い!」



 オレの耳元で師匠の声が聞こえる。オレは師匠の声に呼ばれるように深い眠りから覚めた。



「シン! シン! シン!」



 目を覚ましたオレに師匠が抱き着いてくる。師匠の豊満な胸にオレの顔が埋まってしまい、息ができない。



“えっ?!”



 オレは自分の手を見た。再び手が小さくなっている。まさかと思い、布団をめくって自分を見ると5歳児の時の自分に戻っていた。



「師匠。ここはどこですか?」


「何を言っている。ここは私の家だ。お前、10年眠っていたんだぞ!」


「本当ですか? でも、オレの身体小さくなっていますよ。」


「エリーヌ様が言うには、お前は禁呪の魔法を使ったからその罰を受けるそうだ。」


「なら、また子どもからやり直しってことですね。」


「そうだな。私は嬉しいがな。」


「世界はどうなっていますか?」


「元通りさ。エリーヌ様の力でこっちの大陸と向こうの大陸を遮断していた結界はすべて取り除かれたから、人族も魔族も獣人族もエルフ族も関係なく交流できているぞ。」


「なら、平和な世界が実現できたってことですか?」


「そうだな。今のところだがな。そのうち、また金や権力を求めて戦争が起こる可能性もあるが、お前の伝説が残っている間は大丈夫だろうな。」


「オレの伝説ですか?」


「そうさ。神の使徒シンとナツがこの世界を救ったという物語さ。」


「なら、もうオレは魔王や精霊王をやめて師匠と静かに暮らせるんですね。」


「それは無理だな。だが、次の修行が始まるまでは2人でこの世界を楽しむさ。」


「はい。師匠。」



――― 完 ―――


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