ナイジェ王国の問題解決
オレはみんなと城までやってきた。城の前にいる兵士達はすでに話を聞いているようだった。
「昨日は大変ご無礼をいたしました。」
「いいえ、仕事に熱心だという証明ですから、気にしないでください。それよりも、寝かせてしまってこちらの方こそ申し訳ありません。」
「とんでもございません。では、王城内にご案内させていただきます。」
「はい。」
オレ達は兵士の案内の元、謁見の間までやってきた。すると、兵士がドアを開けて大きな声を発した。
「使徒様方、ご到着にございます。」
他の城同様に、入り口から玉座の前まで赤い絨毯がひかれていた。その左側には、この国の貴族達が物珍しいものを見るように立っている。そして、右側には剣を持った兵士達が立っていた。オレ達は、ぞろぞろと玉座の前まで来ると、王が玉座から降り、オレに片膝をついて挨拶をした。
「使徒様。先日はありがとうございました。ご指示の通り、この国の貴族と兵士を集めておきました。」
「ありがとうございます。スロベル国王。」
国王の態度を見て、貴族や兵士達の顔色が変わった。
「では、皆さん。これから、この国の大掃除を始めます。その前に、自己紹介をしましょう。
オレは、シン=カザリーヌ。魔王だ! 神の使徒です。隣にいるナツ=カザリーヌも神の使徒です。」
オレと師匠は背中から純白の翼を出した。その様子を見て、貴族達も兵士達も全員が平伏した。
「みんな立ってください。オレ達は最高神エリーヌ様よりこの世界の平和を託されました。世界中を回って、平和を乱す根源を取り除いているのです。今から、この国にはびこる病原菌をお渡しします。セフィーロさん。ここに連れてきてください。」
「畏まりました。」
セフィーロが一瞬でその場から消えたことに皆大きな口を開けて驚いている。そして、暫くして、広間の中央の空間に大きな穴が開き、そこから縄で縛られた貴族達が次々と出てきた。
「貴様達。わしは公爵だぞ。このようなことをしてただですむと思っているのか?」
アリスタ公爵が大声でオレ達に向かって怒鳴り散らす。
「アリスタよ! お前達の悪事は、ここに居られるエリーヌ様の使途様によって全て露見しているのだ。諦めるがいい。」
「兄上! このようなもの達の言うことを信じるのですか? こいつらは魔族ですぞ! 我々の敵ですぞ!」
アリスタ公爵の言葉を聞いて周りの貴族も兵士達も動揺している。
「そうですね。確かに私達はあなたのおっしゃる通り魔族です。」
セフィーロとハヤトが魔族の姿に戻った。それを見た貴族達は腰を抜かして、地面に座り込む者もいる。兵士に至っては、オレ達に武器を構えるものまでいた。
「シン。どうする?」
「仕方ない。本当の姿を見せるさ。」
オレは魔力と闘気を開放した。オレの身体から眩しい光が放たれる。真っ赤な髪は逆立ち、目は黄金色に輝き、背中には純白の翼が出た。
「皆のもの! よく聞くがよい! オレは魔王だ! そして精霊王でもある。神は人族だけを作り出したのではない。魔族も獣人族もエルフ族も同じように創造された。そして、すべての種族を愛しておられるのだ。お前達人族だけを愛しているのではない!」
オレの身体から放たれた神気に溢れた光が、その場のすべてのものに降り注いだ。一旦立ち上がった貴族達も、兵士達も再びオレに向かって平伏した。捕えられていたアリスタ公爵を始めとした貴族達も慈愛に満ちた光にあてられ、目から大粒の涙を流し始めた。
「わしが間違えていた。わしは何と愚かなことをしてしまったのか。何とか罪を償えないだろうか。」
「使徒様。出来の悪い弟ですが、後悔しているようです。何とか寛大なご裁決をお願いします。」
「わかりました。では、彼らにこの『魂の輪』を付けましょう。これは、悪事を働くと自然に締まります。そして、最後には首を切り落とすことになります。ですが、良き行いをすれば輪は徐々に緩くなっていき、最後には消えてなくなります。いかがですか? スロベル国王。」
「ありがとうございます。なんと慈悲深いご配慮!」
アリスタ公爵を始め、罪を犯した貴族達は全員が地面に頭を付け涙した。
「お前達! 全員、貴族の身分を剥奪し、財産を没収の上、自由に生活をすることを許可する。連れて行け。」
部屋の中に待機していた兵士達が貴族達を部屋から連れ出した。
「ありがとうございました。これで、我が国にも平和が訪れるでしょう。」
「後は、残った貴族の皆さんが、国王の意をくみ、国民のための政治を行えば大丈夫でしょう。」
「はは。肝に銘じまして。」
一番前にいた貴族が返事をした。
「さて、皆行こうか?」
「そうだな。セフィーロ、ハヤト、カゲロウ。行くぞ!」
オレ達は、魔王城まで転移して戻った。