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ファンタジークエスト

 翌日、心なしかいつもよりも長く感じた授業は全て終わった。


 アーシャ改め芦屋夏美は朝から悶々とし、授業にも身が入らないでいた。何度か先生にも注意される始末だ。それの原因というと


「はぁ、今日からどうしようかなぁ」


 昨日のパーティ脱退の件だ。脱退というかリストラだ。


「支援型にしちゃったからなぁ。ソロは厳しいし、中途半端だから組んでくれる人いないだろうなぁ」


 独り言ていると隣の席の少女が声をかけてきた。


「なになに?何の話?」

「あ、塚本さん」

「芦屋さん朝からなんか唸ってるけど大丈夫?独り言も多いし」

「うっ、ごめんなさい。ちょっと考え事を」

「ふーん、、もしかしてファンタジークエストってやつ?」

「え?なんで分かって?て、ファンクエ知ってるんですか!?」

「独り言の内容的にね。ゲーム自体割と有名だしね」


 VRMMORPG「ファンタジークエスト」。

 現実の不可能を可能にするゲームとの触れ込みで広大なフィールド、RPGでは当たり前のジョブを撤廃することで自由度の高いキャラクタービルドを行え、スキルを組み合わせることで自分だけの必殺技を手に入れられる!と言われていた。


 PVでも羽もない人間が空を飛んだり、1000を超えるモンスターを前に剣技や魔法を駆使し、一騎当千の活躍を見せたりと多くの人間を魅了した。


 だがしかし、いざ蓋を開けてみると、酷いものであった。


 ジョブが無く、キャラクタービルドを自由に行えるということは自分で方針を考えなければいけない。


 そして出来上がったのが、武器の要求値に届かず使いたい武器を自由に使えないもの、火力の出ない攻撃役、耐久の足りない壁役、回数制限を抱えた貧弱な支援、回復役。そういったもの、いわゆるビルドエラーをしたもので溢れた。


 あるものは空を飛ぶことを夢見て、風魔法で自分を飛ばすことに成功するも強風に煽られた凧のように錐揉みし、墜落して初のデスを経験する事となり、またあるものは魔法剣士に憧れ、一騎当千を試みるも、火力が足りず袋叩きにされリスポーン地点に戻された。


 そして、ファンタジークエストは稀代のクソゲーと呼ばれることとなるのが『第一回イベントバトルロワイアル』。それに際してのpvpの実装、そしてステータス補正の調整であった。


 今までなかった対人戦のイベントに合わせて、勝つためにSTR.INT極振りのプレイヤーが量産された。一発当てれば勝てる。そんな考えだったのだろう。


 だが、その数日後ステータス補正の調整が入った。大きな変更点としてはAGIの値による当たり判定と移動速度の補正が大きかった。つまり当てれば勝てるが当たらず、かたや当たりはしないがダメージを与えられないという事態に陥った。


 結果、期待されていた初イベントは泥仕合となり、多くのユーザーが離れ、現在に至る。


「うちの兄貴もやってたよ。そんなにゲーム得意じゃないからすぐ辞めてたけど」

「あー、確かにファンクエは好みが別れるかもね」

「ふーん。でも、芦屋さんはやってるの?」

「うん。私は好きかも」


 塚本は顎に手をあて、しばし考え込むとよし!と言った。


「私もやってみたいんだけど。一緒にやってもらえないかな?」

「え?ファンクエを?」

「なんか塚本さんの話聞いてたらやってみようかなって。ダメかな?」

「ううん。私は大丈夫だけど」


 つい先日ソロプレイヤーになった夏美としては一緒に遊べる人が出来るのは願ってもないことだ。しかし、


「今からゴーグルとソフト、、買うとなると結構するよ?」

「大丈夫、大丈夫。しばらくは兄貴の借りるからさ。さっそく今日の夜からお願いね!」

「えっと、なら初期スポーンまで迎えに行くけど、一応連絡手段。私のフレンドコード渡しておくね」

「おっけ。名前は?」

「アーシャって名前」


 苗字をもじってアーシャ。なんとも安直だとは思っているが結構気に入っていた。


「りょうかい。じゃあ私はハルナって名前にするから」

「それって塚本さんの名前だよね?あまり本名は使わない方が、、」

「大丈夫だって、ありがちな名前だし、、それにこっちの方がバレなさそうだし」

「え?」

「ううん、何にも。じゃあまた後でね!」


 最後に何か言っていたように思えたが、夏美が聞くよりも早く教室を出て行ってしまった。


「、、まぁ言及して教えてもらえるような仲でもないし」


 夏美は荷物をまとめると教室を後にする。


「それよりも初心者向けの狩場とか調べないと。楽しんでもらえればいいけど」


 安定した狩りができるゲーム生活のためにも、なんとしてもこっち側に引き摺り込まなければ。


「よし。がんばろう!」


 フンスと鼻を鳴らし、約束の時間まで攻略サイトを巡り情報を仕入れた。


 ちなみに余談ではあるが、風呂場でスマホを弄っていたせいで手を滑らせ、危うくゲームどころでなくなるところだったのは内緒である。


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