別れは唐突。しかも理不尽
「今日も一狩り、おつかりさまでしたー!」
「おつかれー!」
「おつかれさまです」
席を囲んだ3人は運ばれてきた飲み物を手に取り、互いを労う。一人の男が飲み物を一気に飲み干すと斜向かいに座る少女に声をかける。
「なんかアーシャちゃんテンション低くない?もしかして疲れてるぅ?」
アーシャと呼ばれた少女が引きつった笑みを浮かべる。
「すいません、少し、、」
「アーシャちゃんにセクハラすんなよアベルー」
「はぁ?してねーし」
「あはは、大丈夫です。ありがとうございますキティさん」
「でもアーシャちゃん頑張ってくれてるもんねー?今日はお姉さんが奢ったげるからいっぱい頼みなよー」
「そんないいですよ。私に出来るのは拙い支援だけですから」
「盾役も任せてるし大変だよねー。ちゃんとした支援役をアベルが探してるみたいだからさー」
そういえば、とアベルがアーシャに向き直り、バツの悪そうな顔で手を合わせる。
「ごめんアーシャちゃん。今日でウチ抜けてね」
「、、え?」
あまりにも突然のことで危うくアーシャは飲み物を落としそうになった。なんとか落とさずに済んで安堵したのも束の間。すぐ隣で陶器が割れる音が響いた。
「はぁ!?あんた何言ってんの!?」
「いやさぁ、支援役募集してたらさちょうどいい感じのタンクとヒーラーのペアがいたわけよ。これはもー運命だって思ってさ。声かけたらさ、オッケー貰ってさ。でも、パーティって4人までじゃん?だからごめんだけどアーシャちゃんには抜けてもらいたいなって」
「アベルてめー、ウチらに何も言わずに決めるなって何回言えばわかるんだよ!」
「いや、でもさ」
「でももクソもねー!!」
キティがアベルに掴みかかる。よくある光景なのか、周りの者たちははやし立てるだけで止めるものはいない。
「アーシャ抜けさせるくらいならお前が抜けろ!」
「いや、俺がリーダーだし?」
なおもヘラヘラ笑うアベルにキティが拳を振り上げる。
だが、その手を掴まれ、キティは我にかえる。
「キティさん、ありがとうございます。でも、いいんです」
「アーシャちゃん」
「正直、私足手まといでしたよね?」
「そんなことは、、」
「私もう落ちますね?今までお世話になりました」
ペコリと頭を下げたまま、アーシャが指をスイスイと空中を走らせるとアーシャの体は光の粒子を残して消えて行った。
「今までおつかれー」
そんなアベルの薄情な言葉もキティの耳には入ってこなかった。
周りも興味が失せたようでそれぞれの席に戻っていく。
アベルも特に気にも留めず、席に戻り飲み直している。だが、キティはどうしてもその席に戻る気にはなれなかった。
アーシャはゆっくりと目を開ける。頭をスッポリと包み込んだ、電源の切れたVRゴーグルを外すのも忘れて、ベッドに体を預けたまま呆然としていた。
しかし、ふと先ほどの出来事を思い返し、やるせない気持ちが込み上げてきて、それは言葉となって溢れ出した。
「納得いかなーーーい!!!」
「うるさいわよ夏美!!今何時だと思っているの!!」
「ごめんなさい!」