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幸福の匂い
近所の焼き肉屋が混んでいた。
個人経営の地元密着型ながらも人気の高い、所謂地元の人間が通う店というものである。
普段から土日は混むものだが、今日の混み方はいつもよりも目を見張るモノがある。
だが、待つ人たちの目に倦怠や苛立ちなどはなく、皆楽しそうに順番を待っている。
そういえばもう少しでクリスマスか。少々の寂寥感が私の心に訪れる。
羨ましい。純粋にそう思う。
だが妬むものではない。あの目は様々な努力の積み重ねによって訪れた、一年間の成果である。
今日はカレーでも食べよう。シーフードカレーがいいな。
私は焼き肉屋から漂う幸福の匂いを背に車に乗り込みその場を去った。