鯨はただ潮を噴く。
加湿器を買った。
とある百円均一のチェーンにて売られている500円前後のものである。
くじらを象った可愛らしい形をしており、噴出口であろう場所から水蒸気がそれこそ潮吹きの様に放出される。
以前同チェーンで似た様なものを見かけ気にかけてはいたのだが、Twitterで良さが語られているのを見かけ思わず購入する折となったのである。
単純ではあるが、良い時代だな、と思う。
一つに自分が気に入ったものを気軽に勧め広めることが出来る今という時代が非常に好ましく思った。
人が実際使い、喜び、他人に嬉しそうに広める姿はとても素晴らしい。
良いものを良いと分かち合い共感することが簡単に出来る。なんと幸せなことか。
私もその輪に加わりたくなり、加担してみたが中々楽しいものである。
企業が執拗にステマに拘る理由がなんとなくわかったような気がした。
もう一つ、このレベルのものがこの値段で手に入る技術力を得たこの時代は良い。
私もまだまだ若いと思いたいが、三十路の足音も聞こえる今、時代の移り変わりを感じることが多い。
私の中では未だ加湿器というと結婚式のビンゴ大会で当たると嬉しい、それくらいの価格帯の印象なのである。
様々な企業が努力し、効率化し、今や百円均一で百円ではないものの提供される。
商品のサービスレベルに対し物価の相対的下落を引き起こすそんな技術力と努力を感じる今という時代がすごく好ましい。
私は物価とサービスの推移にいつまで着いていけるのだろうか。
若いと思うならばどこまでもついていきたいものである。
ところで加湿器は名の通り、空気中の湿度をあげるものだが、湿度が上がることに何のメリットがあるのだろうか。
一つに体感気温の差がある。
日本の夏とインドの夏ではインドの方が気温は暑い。
だが体感気温で言えば日本のがずっと暑いのである。
それは湿度が低いほど体の表層で汗が気化しやすく、熱が奪われやすい。
水をたくさんすったスポンジより、からからのスポンジの方が水を吸いやすいのは自明の理かと思う。
湿度をあげれば寒い日本の冬も若干は暖かく…なるのだろうか。
さすがにこれは誤差な様な気もする。
さらに湿度が高いほどウイルスは活動が弱くなる。
湿度が高すぎると今度はカビの活動が活発にはなるが、ある程度の湿度を保つことは健康において重要である。
加湿器を買う人の多くはこの効果を期待して購入しているのではないだろうか。
しかし、実はインフルエンザウイルスは湿度に弱いと言われていたのはある側面において間違いであるのではないかという論がある。
人間の体内から出たインフルエンザウイルスは飛沫等に守られ、あまり湿度の影響を受けることはないのだそうだ。
インフルエンザ対策をするのであれば素直に空気清浄機を買う方が良いらしい。
そこまで語ったところで私はではこの加湿器をなぜ買ったのか。
そこに行き着くことになる。
ああ、この詮無き思考も一緒に霧にして吐き出してくれると良いのだが。