5話 《最初のお為事》
「奴を排除するのは確定だ。鳴神、お前には排除の方法を選ばせてやる」
「方法、ですか?」
自分が見てきた小説とは違い転生者が残酷なことを世界に振りまくことにショックを受けた私、メイド2号の鳴神薫はシュヴァルツ様に意味の分からない選択を迫られ困惑した。
「世界の流れを乱す要因が人間の場合、排除方法は二つある。一つは神の空間に拉致して実力で排除する。もう一つが世界の流れを乱さない程度に介入して違和感なく排除する。今回は毒殺だな」
「あ、あれってそのための物だったんですね」
私は最初に会ったときにシュヴァルツ様が取り出したビンを思い出した。
毒殺を最初の例に挙げるって事は結構多用しているって事だよね。神様を殺したときはナイフを使っていたし本当に暗殺者っぽいなこの神様。
「双方にメリットデメリットが存在する。実力で排除する場合は確実に排除できるが加護を受けた人間を倒すのは面倒だ」
「面倒で済むんですね…」
国家戦争を一人で終わらせるほどのチート転生者を倒すことが面倒の一言で済むのか…。
まあシュヴァルツ様は強そうだし言葉に嘘はなさそう。それに神様なんだからその下位である人間よりは必ず強いよね。
「さらに神の中には戦いに向かない神もいる。その場合負ける可能性があり本当に負けたら大損害じゃあ済まない。よって絶対に勝てるという状態でない限り前者は選ぶなと忠告をしている」
私が考えていたことを見透かすようにシュヴァルツ様が解説を付け加えた。
あ、戦いに向かない神様っているんだ。神様自体が弱いのか加護を受けた転生者が強いのか分からないけどシュヴァルツ様の面倒くさそうな表情を見る限り多分後者なんだろうね。
「もう片方は世界の流れを修正しながら排除できるため二つの為事をこなせるためその後の対処が多少楽になる。デメリットは極稀に排除できないことがあることか」
今回の場合は転生者の食べる物に毒物を混入して殺すってことですか。
で、後は世界の流れに任せて死ぬのを待つからもし転生者に強運が発動して毒殺できないって事もありえるってのがデメリットってことですか。
「殺せなかった場合はどうするんですか?」
「また排除するために動く。しかし人間に勘ぐられるため徐々に難易度が上がる。そのため失敗した場合は実力で排除できるなら排除したほうが世界にとって良い場合もある。俺の手順は基本的に後者を選んで失敗したら前者だな。この手順は神による、前者しか選ばない神もいれば後者しか選ばない神もいる」
前者しか選ばない神様は戦いの神だとかまどろっこしいことが嫌いな神様なんだろうな。そして後者しか選ばない神様は戦いに向かない神様とかだろうね。
「どうして今回は私に選ばせるのですか?」
「お前にはどちらの手段を見せておきたいからな。今回選ばなかった手段を次回の実習で見せてやる」
成程、というかまた転生者関係の実習になることが確定なんですね。それか転生者関係の実習しかまださせないということなのかな?
「じゃあ今回は…後者でお願いします」
※
私は今回の方法に関しては後者を選んだ。こっちなら戦えもしないし偽装とか変装とか役に立つ技術を全く持っていない私にも何か手伝えることがあるかもと考えたから、というのもあるが敵国の兵士を皆殺しにするという残酷な考えをするあの転生者とまともに会いたくないという気持ちも少なからずあったからだ。
それで、今の私は後者を選んだことを凄く後悔している。
「確かに!雑用をするのかなと思ったけど!なんで!穴掘りを!一人で!しないといけないのよ!」
なぜなら私は現在、何もない、誰もいない草原にて、穴を掘っていた。
あの後重い空気が漂う王宮から空を飛んで移動することになった。時間は既に夕暮れで夜になりかけていただった。そして私は何もない草原にたった一人で放り出され、シュヴァルツ様にスコップを渡され、これを使ってここに穴を掘れと命令された。
何故ここで穴を掘るのかと質問する前にシュヴァルツ様とミーシャさんは私を置いて移動してしまい、私は一人でぽつんと草原に置いてけぼりにされました。しかも時間帯は夜になりかけの夕暮れです。直ぐに夜になり明かりも何もありません。何か出てきそうで怖いです。
それで恐怖を忘れるために、怒りに任せて全力で穴掘りをしているのです。
「ハァ、ハァ、疲れた」
そして結構な深さまで掘ったら疲労感が押し寄せてきて私は正気に戻りました。私は仰向けでその場に倒れこみました。
あ、ミーシャさんに借りたメイド服が汚れている。後で謝らないと…。
「…何やってるんだろう私」
異世界の夜空を見ていると私は何でこんなことをしなければならないのか、こんなことが為事なのか、私である必要があるのか、私の存在価値ってなんだろうと考えが一気にこみ上げてきた。
私はちょっと前までは普通の女子高校生で、和気藹々と女友達と一緒に話したり、おしゃれな服やアクセサリーに目をキラキラさせて、漫画や小説を読みながらゆっくりと自分の時間を過ごしていたはずだった。
それなのに、なんでこんなことをしているんだろう。
為事なんて、する意味があるのだろうか。
「いけない!文句を言ったら殺されるんだ!」
そこまで考えたところでシュヴァルツ様と最初に出会ったときに忠告されたことを思い出し起き上がった。
今まで考えてきたことを忘れるように転生者がこの世界で起こす惨劇のことを思い出す。そうだ、もし私達が対処しないと沢山の人たちが死ぬんだ!
そして文句を言ったら私も死ぬ!私は死ぬのはやだ!何のために私は土下座をしたんだ!
「よし!頑張るぞ私!」
元気が出た、まあ空元気なのは自分でも分かっていたが無理やり元気を出して穴掘りを再開した。
怒りで掘っていたときは全く気づかなかったがここの土は女の子の私でも掘りやすいやわらかい土だったのが幸いしたのかどんどん掘ることが出来た。シュヴァルツ様も掘りやすい地形を選んでくれた?いや、ありえないな。あの神様にそんな配慮をする気持ちはない。
ちなみに穴を掘ってる間、誰も何も来なかった。逆に怖いわ。
そして休憩を挟みながら穴掘りをしていたが何時まで穴掘りしなきゃならないのと思っていた矢先、シュヴァルツ様が何か大きな袋を右肩に背負って降りてきた。
遅いよシュヴァルツ様。置いてけぼりにされて多分2、3時間経ってるよ。後半から結構寂しかったよ私。ちょっと物音がしたら涙目になったくらい怖かったですよ。
「掘り過ぎだ馬鹿」
そして数時間もの間頑張った私にシュヴァルツ様が掛けた最初の言葉はあまりにも酷いものだった。
「頑張った女の子にかける最初の一言がそれかー!」
あまりの一言に私は持っていたスコップをシュヴァルツ様に向けて思いっきり投げた。しかしシュヴァルツ様は無表情で空いている左手でスコップをキャッチした。
おい、そこは当たっとけよ馬鹿!
まあ確かに掘りすぎたと思う、多分この穴は転生者を埋めるものだろうとは思っていた。深さは1mくらいでいいかなと思ってたけど私の全身が全部入るくらい掘っちゃったもん。あまりに土が柔らかいもんだから掘りすぎちゃったのは自覚している。
「えっと、背負ってるのって?」
「ああ、毒殺した」
シュヴァルツ様が背負っていた袋を下ろして少し中身を開けるとそこにいたのは空から見た転生者だった。
相変わらず完璧な顔だぁ…。
「…安らかな顔ですね」
その転生者はまるで眠っているかのように死んでいた。
寝ているときに注射で毒殺したのかな?方法は怖いので聞かないでおこう。
「言ったはずだ、苦痛もなく殺せる毒だと」
「本当だったんですね…」
あの時は嘘だと思って済みませんでした。それでも飲むという選択肢はなかったと思いますけど。
「おい、さっさと登ってこい。一緒に埋めるぞ」
するとシュヴァルツ様は開けた袋を閉め、キャッチしたスコップを私に渡して、どこから取り出したのか分からないもう一つのスコップを持った。
あ、その前に私を穴から引き上げてください。私ごと埋めないでください。
「おい、もしかして出られないのか?」
「う、うるさいですよ!」
シュヴァルツ様の指摘に私は恥ずかしくて顔を赤く染めた。
そ、そんなことないですよ!周りが怖すぎて恐怖を忘れるように掘ってたら掘りすぎて、ちょっと穴から出ようとしたら出られなくて、借りたメイド服や髪や顔が土まみれになったのはミーシャさんには内緒ですよ!
「ほら、手を貸してやるから出ろ」
するとシュヴァルツ様が私に手を貸してくれた。
「あ、ありがとうございます…」
案外優しいところがあるじゃないかとちょっと見直した。だが私はここで数時間穴掘りをさせられたことを一生恨むからな!覚えていろよ!
そして穴から出た私とシュヴァルツ様は転生者の入った袋を穴に入れ、スコップでその穴を埋め始めた。
いや、こういうときは魔法とか神様の力を使ってくださいよシュヴァルツ様。
なんであなたもスコップ使って地道に埋めているんですか?あなた本当に神様ですよね?本当は人間とか言うオチじゃないですよね?
で、無言のまませっせと埋めているのが辛くなってきた所で私はシュヴァルツ様に色々と聞いてみることにした。
「あの、ミーシャさんは?」
「こいつの部屋の偽装中だ。誘拐、及び暗殺されたように見せかけるためにな」
シュヴァルツ様は黙々と作業をしながら即答した。
ミーシャさんってそんなことも出来るんですね。シュヴァルツ様が無条件で連れているから他にも色々と出来そうだよね。
「何で転生者を埋める必要があるんですか?それに偽装の意味はあるんですか?」
「鳴神、お前の世界に未解決事件はあったか?」
「え?ありましたけど…」
次の質問を投げかけると今度はシュヴァルツ様に質問し返された。
未解決事件なんて行方不明事件とか殺人事件とかで山ほどあることは覚えている。具体的な内容は全く覚えていないけど。あ、大昔にあって物語の題材になるような未解決事件も当てはまるのかな?
「未解決事件の中には本当に未解決で世界が終わる事件もある。しかし大概は時を経て証拠が発見されて後世の人々によって解明され解決する。大きく解釈すればそれが歴史学だ」
ああ、確かに歴史的大発見とか偶にニュースで見たことがある。つまり後々この世界の人たちに転生者の骨を発見してもらうのね。
「こいつが死んだ事を今の人々には気づかれず、後世の人々に発見させるのが今回最も世界の流れへの干渉を最小限に済む」
「ああ、成程」
ここで埋めていた穴が完全に埋まった。二人でやるとあっという間に埋まった…。
これなら一人で掘らなくてもよかったんじゃないのという疑問を飲み込む私だった。それだと私は完全に必要ないと自虐するのと同じじゃん。
「でも、これって直ぐにバレませんか?」
だが埋めた場所が草原だったためどこからどう見ても埋めた場所が丸分かりだった。周りが芝だらけの草原なのにそこだけ土がむき出しだし。土の色も違うし。
私が疑問を投げかけるとシュヴァルツ様が地面に手を当てた。すると埋めた場所に草原の芝がニョキニョキと生えた。土の色も周りと遜色なくなった。
ぱっと見だったらここに何かを埋めたなんて気づかないだろう。
あとは戦争とかが起きるからここを掘り返す酔狂な人間はいないため数十年は確実に隠せるだろう。
「うわっ、凄い!」
「この程度造作もない、ただ草原の芝を生やしただけだ」
シュヴァルツ様が神様の力を自発的に使ったのを初めて見た私はちょっとだけ凄いと思った。
明らかに地味な力だけど。というかそれが出来るなら掘るのも簡単に出来ましたよね?一体なんで最低限しかそういった力を使わないんですか?一種の縛りプレイなんですか?
そしてシュヴァルツ様が何か小さな端末を取り出した。暗闇で色はよく見えなかった。
ポケベル、だったっけそれ?何でそんなレトロな物を…いや、神様が使うものだから実はハイテクノロジーなのかな?
「ミーシャからの連絡だ。偽装完了したから回収して帰るぞ」
「なんですかそれ?」
「連絡用の携帯端末だ。お前にも必要になれば渡す」
いや、今渡してくださいよ。てか掘るの完了したとか毒殺失敗とかの連絡するのに今回必要だったでしょ。
「何をしている、行くぞ」
「は~い」
そして私達は学院の近くにいたミーシャさんを回収して渦巻く黒い穴を経由して教室へと戻ってきた。
帰るときは浮き上がる感覚だから全く怖くないんだよね。落ちるときもこんなに快適だったらいいのに…。
「あの、流れが修正された確認とかは必要ないんですか?」
「そんなもの既にしている」
で、私はそのまま帰ってきたことに疑問を持っていたのでぶつけてみたらシュヴァルツ様が世界の本を手に持って答えた。
ああ、本を確認すれば流れが修正されているとか分かるんですね。
「それで、あの世界はどうなるんですか?」
「気になるか?」
「はい」
そら滅茶苦茶気になりますよ。私は物語のエピローグとか裏話とか気になる性格なので。
「シュヴァルツ様、私も気になります」
ほら、ミーシャさんも気になってるみたいだし教えてくださいよ。
「本来世界の流れが修正された時点で為事は終わりだが、今回だけ特別だぞ」
「やったー!」
喜ぶ私達二人を他所にシュヴァルツ様はため息をはいて世界の本を開き解説を始めた。
「あの後ルージュ王国は解説したとおりに事が進み為す術もなく戦争に敗北、アジュール王国に併合された。死傷者は順来どおり極少数だった。アジュール王国からアジュール帝国となり後は解説どおりに進んだ。そして戦争の原因となった二人はそれぞれ悲惨な結末を迎えた」
ああ、転生者に惚れていた二人ね。あの二人も災難だったね、した行動は同情の余地がないけど。
「ルージュ王国の王族が国王と件の王女のみだった。国王は礼節を持って迎えられ諸侯となりルージュ公爵となった。そして滅亡させた責任感からその後は自身の領地を豊かにするため心血を注いだ。王女は魅了の加護から正気を取り戻したが公の場で婚約破棄ということで恥知らずの烙印を押されてルージュ王国の王城跡に造られた離れの小屋で監禁され一生を終えた。ルージュ公爵家は元国王が死亡後王女が元々結婚するはずだった王子が継いだ」
つまりルージュ王族の血は残らなかったのか。あの憔悴しきったルージュ国王が転生者に対する最大の被害者だろうね。生き残って元祖国の領地発展に尽力したってことは本当にいい国王だったんだろうね。
「公爵令嬢は?」
「戦争前に公爵の領地に避難したがルージュ王国から反乱した低い爵位の貴族の兵に捕らえられ、その後学院の生徒の証言により彼女が騒動の首謀者、戦争の原因を作った首謀者であるということが白日の下にさらされ、最終的に悪女としてルージュ王国の諸侯達によって処刑された。二人とも正気は取り戻していたが記憶はそのままであったため文句ひとつ言わず生涯を終えた」
ああ、二人とも正気に戻って自分達が取り返しのつかないことをやってしまったと自覚して死んじゃったのね。あのまま転生者に惚れたまま死んだ方が却って幸せだったのかな?それとも貴族として、王族として罪を自覚して死んだ方が誇りを保てたのかな?
「転生者スバル・スリジエはその後行方不明扱いになった。その後奴が村で広めた小麦の栽培技術が注目されアジュール帝国全域に広まり発展に貢献、スバル・スリジエは謎多き若い天才として名が残った。その後お前が掘った場所で彼の骨が発見され後世の人々は当時の状況からアジュール王国の誰か、もしくは低い爵位の貴族の子息が暗殺してその場所に埋めたと断定した。画期的で発展の土台となった小麦の栽培技術の開発者を暗殺したという事実に後世の歴史家は多大な損失をアジュール王国は犯したと酷評した」
転生者が生きていたら起こしていた惨劇を知っていた私達は後世の歴史家の評価に驚くしかない。そうか、あのままだと転生者は若くして村の内政改革を成功させた天才として名を残すんだね。
「もし転生者が生きて世界の流れを乱した場合の後世の評価は最も人を殺した大量殺戮者、攻撃魔法という兵器を大量に開発してばら撒き戦争を激化させた死神、女を何百人も侍らせ肉欲に溺れた皇帝。他にもあるがとにかく酷評されることになる。数百年ほどの間、奴の子孫が治めた時代の世界では史上最高にして唯一無比、無敵で神にも等しい存在の初代皇帝として絶対的に賞賛されていたがな」
もし転生者が生きていたら世界の流れを乱すどころか世界そのものを悪い方向へ変えていく、酷いなんてものじゃあ表現できないほどの混乱を招くみたいだった。
これを聞いて私達が世界にとって良いことをしたんだという達成感が湧いてきた。
「満足か?」
「はい、今後も聞きたいです!」
というか毎回異世界に行くときは最後にこういう解説を希望します!
「今回だけ特別だといっただろう」
そういってシュヴァルツ様は世界の本を閉じて消した。だからどうやって消しているんですか?
「次の授業まで休憩だ。部屋で休んでいろ」
シュヴァルツ様が踵を返したときに私の部屋に何もないことを思い出した。
「あの!せめて寝るための布団くらいサービスを…」
「寝なくても別に支障はない」
シュヴァルツ様はそう吐き捨てて姿を消した。
「こっちは寝たいんだよ馬鹿ー!」
私はまだ持っていたスコップを叩きつけて怒りをぶつけた。ミーシャさんにまた何か貸してあげると言われてありがたかったけどそれでもシュヴァルツ様のケチっぷりへの怒りは収まらなかった。
「まったく、あの神様は本当…」
そして怒りながらドアノブを遣って私の部屋の扉を開けた。土まみれになった身体を洗わないとと思い直ぐにシャワー室へ入ろうとした。
「あれ…?」
だが私は部屋に入って直ぐに違和感に気づいた。何もなかったはずの部屋に幾つかの家具があったのだ。
そこには木製のテーブルと椅子、そして白い掛け布団と枕があるベッド、そして小さいクローゼットが置いてあった。
どれもどこかのビジネスホテルでも置いてないようなシンプルすぎるデザインで女の子としては直ぐにでも模様替えしたいと考える家具だった。
「最低限だけどある…」
絶対にシュヴァルツ様が置いたものだ。そう確信した。
そしてテーブルの上に何かが書かれた紙が置いてあった。
『サービスだ シュヴァルツ』
綺麗な字で書かれたシンプルな言葉にちょっと涙腺が脆くなった。
「口に出してよ馬鹿シュヴァルツ様…」
全く、ツンデレなのかなあの神様は…。お礼、言わないとね。
だが今日受けた仕打ちは絶対に忘れない、絶対にデレないと心に深く誓った。
こうして私の慌しく長かった神様の世界での一日が終わった。
で、ここで私はこの部屋の中に、というかこれまでに見たもので時計とかカレンダーとか一日の基準が判るものが全くないことに気づいた。色々と細かいところで気遣いが出来ないなあの神様は!
おまけ『クローゼットの中身』
「さーて、クローゼットの中には何が入っているかな?」
「洗ってもらった制服と、バスローブと、白のTシャツに、黒のジャージ…あとはハンガーだけ?」
「白のTシャツと黒のジャージって…もっと可愛い服をチョイスしろよ馬鹿シュヴァルツー!」
「…シュヴァルツ様、なぜ可愛い私服を用意しなかったんですか?」
「最低限しかサービスしない。それ以上は鳴神が付け上がるからな」