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恋敵は前世の孫  作者: 霧ちゃん→霧聖羅
1章 幼児期
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前世の夢 その2

「ヤンデルキラーではあると思ってたが、まさか別の世界のヤンデル系までとは思わなかったな……。」


 地球の創造主(クリフ)は、地球とキトゥンガーデンとの間にある狭い通路でポツリと呟く。

少し、途方に暮れた様な寂しげな様子は珍しい。

随分と長い事、りりん(あの娘)が生まれ変わる度に、兄として面倒を見ていたらしいから……例えるなら妹を嫁に出した様な気分なのか?

それにしても、気になるのは……。


『ヤンデルキラー?』

「アイツは昔から、やたらと心に闇を抱えたのに好かれるんだ。」

『……私みたいな?』


 何の反応もないのは、どうやら肯定らしかった。

道理で、やたらとあの娘が魅力的に見える訳だと得心がいく。

今、私と一緒に居る彼は日本で暮らしている分身ではなく、この場所を通ろうとする誰かを待つ為に一時的に作った分身なのだそうだ。

あっちにもこっちにも、自分の意識を繋いだ分身を作れるなんて随分と器用なモノだと思いながら、私は何故自分をここに連れて来られたのかと首を捻る。

まぁ、死んでいて魂だけの存在だから首なんてないんだが。

気分的なモノだと思って欲しい。


 『誰か』を待つ間に思い返すのは、私が逃げ出してきたキトゥンガーデンへと行ってしまった彼女の事。

クリフが自由行動を許してくれるようになってから、彼女が地球で事故にあってあいつらに連れ去られるまでの間私はずっと彼女の側にいたのだ。

ストーカー?

それは、生きてるやつの話だろう。

魂が、生者の後をくっついて歩いてるなんて特に珍しい光景じゃない。

ちゃんと見えるやつは、それ位知ってるし。


 何はともあれ彼女が、『あの言葉』を口にするのを止める方法の無かった自分が呪わしくて仕方がない。

思えば、あっちの世界に行ってからそう言う事が多い気がするな。

大体が、キトゥンガーデンと地球という違う世界同士で、まさかパソコンと賢者の石(と言う、ある意味万能アイテムがあちらにはある)を経由して文通をしてるなんて、想像もつかなかった。

しかも、その相手が私があの世界から逃げ出す為に必死で作った後継者だとか。


 私はあちらの世界での最後の何百年かを、後継者候補の幼子を逃げ出させない為とはいえ閉じ込めて育てていた。

自分でやった事ながら、随分と非人道的な話だと思う。

あちらの世界では、『人道的』なんて言葉はなかったけれど。

まぁ言葉が無いだけで、ふんわりとではあっても、似たような考え方はあったのだ。

言い訳をするのなら、2番目の妻を喪った時に私は気が触れ始めていた……のだろうと思う。

無差別にではなく、自分の血を継いだ息子や孫だけではあったが、被害者が4人で済んだのは奇跡的な話じゃないだろうか?

それ位、私の後継者と言うのは必要とされる能力が高くないと務まらないものだったのだ。

 それぞれ、違う女に産ませた直系の息子2人は全くの期待外れで、育てながら随分と辺り散らしていたのを思い出す。

上の子の時の失望は本当にひどくて、よりひどく辺り散らしたのぼんやりとだけれど思い出して、当時の自分をぶん殴ってやりたくなる。



子供って言うのはもっとこう、可愛がってほめて伸ばしてやるもんだろう??

言葉で殴打してどうする?!



 散々詰られて育ったせいで、その子は能力不足なだけでなく、属性不足が判明した頃にはオドオドした自信のない子供に育っていた。

これ以上、側に置いておくのは危険だと乳母になってくれる女を探して後を任せた。

 下の子はもう少しマシな育て方をしていた気がするが、大差なく、結局は能力も属性も足りなくて乳母に丸投げ。

最悪な父親だ。

 そういえば、直系の子はもう一人いたな。

その子は女の子で……私と同じ管理者の1人として生を受けていて、私の後継者とはなりえなかった。

癇癪を起した私は、その子の管理者としての能力を分解して、彼女を人へと堕としてしまう。

今思えば、アレは無意識に自分と同じ道を進ませたくないとでも思ったんだろうか?

同じ道に突き落とす為に子供を作ったくせに、自分の後継者じゃないなら認められないだなんて、キ○ガイの考える事は訳が分からない。

我に返った後、自分がやってしまった事に慄きながら、後ろめたさからその子の事を溺愛した。

上の子がソレを見る時の暗い目を思い出すと、目から鼻水が出てきそうだ。

魂に目は無いけれど!

目から出るのは鼻水じゃない?

逆流してくるって事にしておいてくれ。

男が泣いて良いのは、財布を落とした時と親が死んだときだっていうだろう?

 結局、3人目の娘で希望が叶わなかった後、失望しきった私は直系の子供に期待するのを止めた。

次に当時の私がやったのは、上の子の元に産まれた双子を取り上げる事だった。

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