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恋敵は前世の孫  作者: 霧ちゃん→霧聖羅
1章 幼児期
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前世の夢 その1

 一気に襲いかかってきた、大量の情報に私はぶっ倒れた。

そりゃそうだろう。

前世の記憶がたかが数十年であったとしても、結構な情報量だ。

それなのに、前世で末端とはいえ神の一員であった私の記憶がたかだかそんな量であるわけがない。

私は、キトゥンガーデンと言う異世界で過ごした直近数百年位の出来事を、夢の中で体験する羽目になったわけだ。



くそ……。

寝てる間に、妹にヘンな虫が付いたらどうしよう?!



 倒れる瞬間、私はただそれだけを考えていた。

だって、明日太(前世の孫)がなんでこんなところに居るのかも、倒れる瞬間に思い出したんだから仕方がない。



ああ……なんてこった。

私だけのにゃんこ(天使)だと思っていたのに……!






 まず、思い出したのは転生直前の10年間。

私は魂の状態のまま、地球の創造主と共に生活していた。

この男がまた変わり者なのか、キトゥンガーデンでは下働きの下位神にさせている様な仕事も、全て自分でやっていて、その挙句に現地の人間に融け込んで生活している。

私も、下位神として世界の管理をしたいた時は、現地の人間の混じって生活してはいたものの、それは一応神の一員であると言う事を公言した状態であり、この男の様に、『人間として』ではなかったのでおおいに戸惑った。

本人は、『分け身』だと言っていたが、わざわざ人間に自分を出産させてまで融け込んでいるのには舌を巻く。

分け身の名前は『藤咲クリフ』。

日本人の父と、アメリカ人の母の間に産まれたんだそうだ。

黒髪に灰色の瞳のちょっと冷たく見える美形で、ちょっと表情の変化に乏しいヤツだ。

 彼はその分け身の、半分だけ血の繋がった妹をひどく溺愛していた。

5歳離れた、彼の妹の名前は『りりん』。

当時の名は『藤咲りりん』と言ったのか……。

現在の私の妹の前世の姿だ。

 思い出して見ると、私の妹に対する執着が始まったのはここからだったのかと納得がいく。

いや……。

3歳児位までって、確かに性格の差はあるにしても私があそこまで夢中になるのはやっぱりどう考えてもおかしいだろう??

彼女はこう……なんというんだろうか、適度に不器用で……なんというか私みたいな、『世話をしたい系』にとって何とも理想的な娘だったのだ。

なので、なにくれとなく世話を焼く地球の創造主にひどく共感した。

 顔立ちに関しては、どちらかと言うと美人系??

美人と断言するのには足らず、かと言って可愛いとも言えないとまぁ、そんな感じだが、その仕草や言動によってとても可愛らしく見えた。

造形的に言うのなら、私が妻にしてきた女性達の方が客観的に見るのならよっぽど整ってはいたのだけど、それでも何故か彼女たち以上に魅力的に見えたのだ。


 クリフその頃、オフィス街で小さなパスタ屋をやっていた。

カウンター席だけしかない細長い店で、従業員が要らないのが魅力らしい。

お前だったらもっと楽に金を稼げるんじゃないかと聞いて見ると、「楽しいからいいんだ」と言う返事が返ってくる。

モノ好きなんだなと思ってその姿を見ていると、客の少ない時間を狙って2人、頻繁に足を運んで来ている嫌な奴等が現れたのに気付く。


「こんなところに来る暇があるなら、きちんと仕事をしろ。」

「その仕事の為に通ってるから……。」

「と言う訳で、早くりりんちゃんを嫁に欲しいのにゃー♪」


 クリフの言葉に苦笑を浮かべつつ答えるのは、地球では見る事のない銀髪の美青年。

女の様に澄んだソプラノの声と、角度によって色合いを変える瞳が、只人でない事を告げる。

ふざけた事を口にしたのは黒と茶が斑に混じった髪色の愛嬌のある笑顔を浮かべた小娘だ。

声は鈴を転がしたかのように可愛らしいが、そんなのはどうでもいい。


『あいつをキトゥンガーデンなんかに行かせる訳ないだろう!』


 私がそう抗議すると、青年は嬉しげに目を細める。


「大分、元気になったみたいだね? グラムナード。」

『その名前は嫌いだ。』

(お前)は黙ってろ。」

『でも』

「どの道、本人が望まない限りはアレにしろ、他のにしろ、誰1人としてどこにも出すつもりはない。」


 その言葉と同時に目の前に置かれた、カルボナーラスパゲティをフォークに絡めながら、そいつ(異世界の創造主)は困った様にため息を吐く。


「そんなの、時間の問題にゃぁ。」

「本人の口から、そっちに行くという言葉が出たらだな。」

「相変わらず、クリフちゃんのご飯は美味しいにゃー♪」


 ニャーニャーとうるさい小娘(猫神)は、相変わらず都合の悪い事は聞こえないらしい。

結局、私が異世界で死んでから10年後に、奴等の望み通りに彼女はあちらの世界へと旅立っていく事になった時には怒りで身の置き所が無かった。

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