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恋敵は前世の孫  作者: 霧聖羅
2章 小学生
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入れ替わり

 お昼休みはあっという間にやってきた。

給食を食べてから、いつも通り明日太とりりんに合流すると、人目につかない場所でひっそりと制服の交換を行う。

明日太と私は良く似ているとは思っていたけれど、現時点ではあんまり性差もないお陰か、制服も問題なく互いの物を切る事が出来た。



――来年くらいになったら怪しくなってきたかもな。



 そう思うのは、少しズボンのウェストが緩かったから。



「蘭ちゃんの制服が、同じ長ズボンで良かったねぇ。」

「うん。まぁ、だからこそやってみたくなったんだけど。」

「……りりんと同じ二段フリルにしといたら、明日太の女装が見れたのか。」


 私は、元男だた意識もあってスカートは流石に避けていたんだけど、ちょっぴり精神攻撃を試みる。


「んじゃ、明日は蘭ちゃん二弾フリルにしようか!」

「それはちょっと……。」


 私の言葉にりりんが即座に反応し、明日太がそれをやんわり否定すると彼女は口を尖らせた。

あはは。

やっぱりりりんは可愛いなぁ。

明日太の微妙に嫌そうな顔も見れたし、拗ねたリリンの可愛い表情も楽しめたから私は満足だ。


「喋り方を気をつけて?」

「う……。」


 普段の明日太の話し方を真似して念押しすると、そこまで考えてなかったらしい彼は口籠る。


「ばれたら親にも連絡行くかもしれないけど、やめとく?」

「う。」


 そこまでは考えていなかったらしく、途端に視線を彷徨わせはじめる。

そうかそうか。

ただの思いつきか……。

まぁ、実際のところ親に連絡行ったとしても対して怒られないとは思うけど。

案の定、本人もすぐにその事に思い至ったらしい。


「兄さんも楽しみにしてるみたいだし……。それじゃ明日太、昼休みはなにしよう?」

「兄基準なの?」

「うん。」



――そういや、コイツは前世でも兄にべったりだったっけ。

5歳の時に引き離されちゃったけど。

あの後は一人ぼっちにさせてしまって申し訳なかったな……。



 不意に、前世での事が脳裏を過り、頭を振ってその思考をおいやる。

アレは、過去の話だ。

今は今の生を楽しまないと。


 気を取り直すと、残りの昼休みを明日太にリードさせて過ごす。

いつもと立場が変わるせいか、りりんの反応がなんだか新鮮。

というか、私が手を繋いでも普段は顔を赤らめたりしないよね?

りりんはやっぱり、明日太の方に気があるらしいと改めて突き付けられた気分でちょっぴり面白くない。

そりゃあ、あちら(前世)の世界では夫婦だったらしいから仕方ないんだろうけど……。


 午後からの授業で教師にばれるかと思っていたんだけど、特にそう言う事は無くてちょっと拍子抜け。

教師は気付かないのに、私の親衛隊の子にはあっさりバレた。


「蘭さまの男装姿も素敵です。」


 なーんて言われたけど。


「私、普段から長ズボンだよね? いつもと変わらないよね??」

「でも、男子カラーですからやっぱりちょっと違って見えます。」

「そう……。」


 思わず即座に問うと、頬に手を当てため息混じりにそう返される。

その返答にはなんと返せばいいのやらと、途方に暮れてしまった。

色が違うだけで男装扱いになるのか。

なんだか微妙な気分だ。


「……明日太の方を見ての感想は?」


 試しに彼女に訊ねてみると、可笑しそうに笑いながら「お可愛らしいです」だって。

あんまり違和感もないって事らしいと納得しつつも、もう同じ事はしないと心に決めた。

その日は結局、学校で制服を交換し直すタイミングがなかったので、私達の家で勉強会をすると称して明日太を連れ込んだ。


「あらあら。なんで蘭ちゃんの制服を明日太君が着てるのかしら?」

「「?!」」


 教師にバレなかったから、凛ちゃんも大丈夫かとタカをくくってたら、あっという間にバレました。


「何でわかったし。」

「だって、蘭ちゃんは私の娘ですもの♪」

「……。」


 無言で逃げ出そうとした明日太の肩を、凛ちゃんはそっと抱き寄せる。


「逃がさないわよー♪ 何がどうしてこう言う事したのか、キッチリ話して頂戴ね?」

「……ハイ。」


 結局、その日は怒られはしなかったものの、凛ちゃんは事情を聴きながら呼び出した蜜子さんと二人で私達をおもちゃに写真を撮りまくりましたとさ。

散々、女物の服を着せられて撮られまくった明日太は、二度と入れ替わりを提案する事はなかった。

そりゃあそうだよね。

小4にもなって女物の服を着せられるとか、恥ずかし過ぎるし。

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