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恋敵は前世の孫  作者: 霧聖羅
2章 小学生
18/27

至福の時間

 ウチの小学校の制服は選択制。

だから、みんなそれぞれにある程度好きに組み合わせて学校に来てる。

選択できるのは、上はブレザー・セーター・カーディガンにブラウス(固定)。

下は男子だと半ズボンか長ズボンの二種類、女子はソレに追加で膝上キュロット・膝上2段フリルスカート・膝下フレアスカート・箱襞スカートの7種類。

まぁ、男子も同じ選択肢に出来るけど、実際にはそう言うのはまずいないかな。

生地を男子ズボンは紺の無地と、紺ベースのタータンチェック。

女子のスカートは無地のワインカラーか薔薇色(焦眉色)ベースのタータンチェックだ。

上は単色で、ズボンやスカートの色よりも濃いめの色合いになる。

ネクタイやリボンは規定にないので、みんな割と好きなモノを着けたり着けなかったり。

私的にはリボンはあんまりピンとこなかったんだけど、りりんが喜ぶのでお揃いで可愛いのを毎日とっかえひっかえしている。

その日のりりんの髪を結ぶリボンに合わせてね。


 りりんの髪は肩ぐらいの長さなんだけど、コレを毎日可愛らしく結んだり巻いたりするのが今の私にとって一番のお楽しみ。

りりんに可愛い格好をさせたいって言うのは勿論あるんだけれど、本人にやらせると寝癖がそのまんまなんだよね。

女の子として、ちょっとあんまりすぎる……。

ちなみに凛ちゃんがやっても似たようなもんだ。

どうも、凛ちゃんは自分の髪を整えるのも得意じゃないらしくて、通いの使用人が来てからやってもらっているらしいし仕方ない。

生粋のお嬢様だし?

だから必然的に私がやる様になった。

ある意味役得。

たまにお休みの日なんかには、りりんだけじゃなく凛ちゃんのもやってあげてるんだけど、りりんの髪を整えるより楽しくない。

コレは愛情の差か。

ゴメンね、現世の母(凛ちゃん)


 今日のりりんの髪型は、耳から下をゆるふわに巻いた上でのハーフアップ。

体育のある日はサイドの髪を上げておかないと、本人がてきとーに後ろでくくって折角セットした髪型を台無しにされちゃうからね……。

その台無しにされた髪型を整え直すと言うのも、また楽しいんだけど。


「ねー、蘭ちゃんまだ終らない?」

「もうちょっと。コレ読んで待っててね。」


 髪を整える間読んでいる様にと渡した漫画を読み終わったりりんが鏡越しに上目遣いで、そろそろ終わりにして欲しいと要求を伝えてきた。

ハーフアップにする部分を編み込んでいるから、まだ時間が掛かる。

そう言う時の為に用意してある続きを渡すと、りりんはまた漫画に熱中しはじめる。

りりんってば、速読スキルでもあるんじゃないかと言う位読むのが早いから、さっさと終らせよう。




☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




 最近学校へ行く時は、いつも明日太と一緒だ。

去年までは運転手の送迎だったんだけど、従兄の(サイ)が明日太を送るついでに連れていってくれている。

帰りは時間を合わせて運転手が迎えに来るから、朝だけは明日太も一緒という訳だ。

ところで、いつもは自分の真後ろの席に座っているりりんにばっかり話しかけがちな明日太が、今日に限って珍しく私に話を振ってきた。

いつもりりんを優先して離しかけるのは、明確に(・・・)自分に話しかけられているって分からないとりりんが話題をスルーするせい。

多分、私が嫌いな訳じゃない……と思う。

うん。

多分。

今生では明日太に嫌われる様な事はしていない。

……と思う。

少なくとも今のところは。

なにはともあれ、今回はりりんに関係のない話らしい。


「蘭。」

「ん? なに?」

「今度、制服を交換して見ない?」

「へ??」


 一瞬、何を言ってるのか解らなかった。

助手席から身を乗り出す様にしてこちらを見ている明日太は、なんだか最高の悪戯を思いついたような表情をしている。

前世では一度も見た事のないそんな表情に、心臓が跳ねあがった。



――こいつ、こんな顔するんだ……。



 期待感をにじませるその表情にどぎまぎしているのを悟られない様に、気持ちを落ち着けながら「なんで?」と問いを返す。


「僕と蘭って似てるでしょう?」

「……まぁ、そうだね。」

「だからさ。入れ替わってみない?」


 驚いた。

前世では、私とそっくりな自らの容姿を嫌っていた様子すらあった明日太が、こんな事を言うなんて。


「面白そう。」

「でしょ?」


 珍しく、自分に振られた話じゃないのにりりんが反応した。

期待感に目をキラキラさせながらこちらを見る二組の瞳に耐えかねて、バックミラー越しに従兄に助けを求める。


「確かに面白そうだね。」


 ……助けにならなかった。

クスクス笑いながら、結果を教えてと言う彼に了承の返事をすると、明日太とりりんは嬉しそうに歓声を上げる。



――そんなに嬉しいか。

そうかそうか。



 んじゃ、元お祖父ちゃんとしては頑張るしかないね。

私は苦笑しながら、その日の昼休みに明日太と入れ替わってやる事にした。

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