特別授業
「ね……?」
「うん?」
「ちょっ……、らんちゃ……ッン」
「なぁに?」
今はお風呂のお時間だ。
シャワーをジャージャー流して音を誤魔化した浴室で私は、妹をバスマットの上に押し倒してる。
小柄で非力な彼女は、同い年でも身長の高い私なら易々と抑え込む事が出来てしまう。
両手を頭の上で抑えつけるのも、片手で十分だ。
――正直、もうちょっと育ってからの方が良かったけど、これはこれで悪くないな。
ちょっぴり、幼女愛好家の気持ちが分かってしまったかも。
蘭は新しい世界の扉を開いた――的な感じ?
私に抑え込まれて居心地悪そうに身をよじる姿に、少し嗜虐心をそそられながらそう思う。
別にロリコンな訳でも無ければ、ロリコンになりたい訳でもないんだけどね?
この子が相手だから、そう思うだけ。
「りりん、ココ、気持ちイイの?」
「や……アッ……!」
「ほら、昼間さ。明日太に男子の話題について聞こうとしてたでしょ?」
耳元に唇を寄せて囁きかけながら、水気を帯びた肩から手首へと、触れるか触れないかと言う位の接触を保った状態で指を滑らせると、彼女は息を飲み背をのけぞらせる。
――エッチな反応。
まぁ、私のせいだけど。
二人でお風呂に入るようになってから、ひっそりと行ってたエッチポイント開発事業が、予定よりも早かったけど今日、日の目を見た。
まぁ、今日はちょっぴりお灸を据えるだけのつもりだけどね。
腕と太もも、首筋を弄るだけでおしまいの予定だ。
本番は……中学校~高校の間かな。
実は私達の通っている学校の中等部・高等部は近県にある全寮制。
りりんがエッチな事に本格的に興味を持ちはじめるのがその辺りだろうし、丁度、凛ちゃんの目が離れる時期だから都合も良い。
凛ちゃんがいくら鈍くても、流石に完全にヤッちゃったらすぐにバレそうだし。
「それにしても敏感だね、りりん……。」
「やン……変なとこ、触っちゃヤダぁ」
「別にヘンなとこなんて触ってないでしょう? 腕と、わき腹と、太股を撫でてるだけじゃない。」
耳にねっとりと下を這わせながらからかうと、涙混じりの甘い声が上がる。
「……明日太の言おうとしてた、男の子同士のお話ってのはさ……?」
「あン……」
「女の子にこう言う事した場合のお話ね。」
悩ましげに眉を寄せて羞恥に耐えるりりんの額に口付けを落として、一番敏感な場所をそっと一撫で。
耳に口を寄せて、小さな小さな声で放っておいたら明日太があの場で説明したに違いない事を囁く。
「!?」
「男の子は、そうするとキモチいいんだよ?」
「そ、そんなの無理だよ?!」
「無理じゃないよ。」
「無理! 無理だよ?!」
――今日はここまでかな。
これ以上は、やりすぎちゃいそうだ。
拘束していたりりんの手を自由にしてやり起き上がらせると、座り込んだまま眉を寄せて足をぎゅっと閉じる。
さっきの言葉で、警戒心が芽生えたらしい。
――まぁ、警戒心が芽生えるのは良い事かな。
あんまり無防備すぎるのも、この子の場合は拙いし。
いや、ついね?
反応が良かったので予定よりはやりすぎちゃった気はしないでもなけど……。
妹の前に座り込んでそっと頭に手をのせたところで、上目遣いにキッと睨みつけられて思わず息を飲む。
「蘭ちゃん。」
「うん。」
「蘭ちゃん。」
「はい。」
「蘭ちゃん。」
いつにない迫力に思わず正座してしまうと、それを確認したりりんが私の肩を強く引き寄せる。
「?!」
思いもよらない事に体勢を崩した私の肩に、りりんの唇が触れたと思った瞬間、ソコに鋭い痛みが走った。
「~~~~~~~~~いったぁあああああああああああああ?!」
噛みつきながら、りりんは私が逃げ出すのを許さないとばかりにギュウギュウとしがみついてくる。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!!!」
やっと口を離して貰えた時には、ホッとして身体からガッツリと力が抜けてへなへなとその場に座り込んでしまった。
痛さのあまり、目に溜っていた涙が頬を流れる。
少し落ち着いてきてから、まだひどく痛む噛みつかれた場所に目を向けるとくっきりと歯形が残っていた。
端に微かに血が滲んでいるところを見ると、皮膚も一部裂けたらしい。
痛い筈だ。
「りりん、腕大丈夫?!」
自分の状態を確認したところで、噛まれてる最中にりりんの腕に爪を立ててしまった感覚があったのを思い出す。
プクっと頬を膨らまして目を尖らせていたりりんが、私の言葉に目を瞬く。
やっぱり、私が握ってしまった部分は赤く跡になって、爪が食い込んだ肌から赤いものが滲んでいた。
痛みを逃がそうと、無意識に随分と力が入ったらしい。
「うわ、手形残っちゃうかな……。次の体育いつだっけ?」
「明日。」
「すぐ冷やしたらどうだろう?!」
私は慌ててりりんを抱き上げると、浴室を飛び出した。
オロオロしながら手当てをする私を見ている内に、りりんの勘気もとけたらしい。
「ああいうのは、同意が無い時にはしちゃダメだよ?」
そう言いながらりりんは、私の肩の手当てをしてくれた。
「……同意くれるの?」
「その時になんないと分かんない。」
「なるほど。」
思いもよらない言葉だったけど、りりんが私の求愛を受けるかもしれないと言う事かとちょっぴり嬉しくなる。
「りりん。」
「なぁに、蘭ちゃん?」
「その……ごめん。」
「次はやめてね?」
肩の手当てを終えたりりんの額に、自分のおでこをこっつんこ。
至近距離で見詰め合う。
「次は、許可取るよ。」
「……許すとは限らないけど。」
「許可貰うまで頑張る。」
「許すまで延々と?」
「うん。延々と。」
私の決意表明に、りりんが笑いだす。
「それって、結局私に選択権ないんじゃない!」
腕にばんそうこうをベタベタ貼りつけて、裸のままカーペットの上で笑い転げる彼女を見ている内になんだか私もおかしくなってきた。
「そうかも。」
そうして、二人で裸でカーペットの上を転げまわる。
ずぶぬれのままお風呂から飛び出してきたから、廊下はびしょぬれ。
服も着ずにじゃれ合う私達を発見した凛ちゃんに、雷を落とされるのはほんの5分先の出来事だ。
次回から中学生です☆
そして、冒頭は明日太のターン。




