聞いちゃダメ
葵ちゃんはアレから、月に一度位の頻度で遊びに来るようになった。
一人だったり、親衛隊の子と連れ立ったりとその時々によって違うけれど。
彼女達との会話で、私は色んな事を教わった。
私のクラスに居る女子10人の内、7人が私の親衛隊メンバーだと言うのは驚いたけど、確かにその事を知った上で見て見ると、他の3人とはあからさまに態度が違っていた。
うん。
なんというかね、私が視線を向けた時に目を逸らすんだけど……。
ほっぺが赤かったりとか、他のメンバーの子に向かって喜びのあまり「きゃー!!!!」と心の中で叫んでるのが分かるような感じ?
何で気付かなかった?
私。
りりんがそう言うのに鈍い子だなんて、とてもじゃないけど言えないな……。
ちなみに親衛隊のメンバーじゃない子達は、それを呆れて遠目に見てる感じ。
私も、そっちに入りたかった……。
幸いなことに、うちのクラスで仲良くしてる男子の婚約者って言うのは、他のクラスの子だった。
でも、男子と今までみたいな距離間で親しくするのは泣く泣く諦める事に。
今まで、同性のつもりで接してたから、異性との関係として見るなら近過ぎたんだよね。
今の性別は女でした……。
男子同士の距離感っていうの?
ソレが心地よすぎて自分の今の性別をうっかり忘れてたよ。
さらば。
男のアホ話の出来る友人達よ……。
たまに混ぜてくれると、超嬉しい。
無理かもしれないけど。
寂しい気持ちはあるけれど、あんまり違和感が出ない様に離れていっているところだ。
どの道、そろそろ年齢的にも男女の差が気になってくる頃でもあったから、丁度良いところだったのかもしれない。
つくづく、違う性別に産まれると言うのは不便なモノだと思ってしまう。
それもこれも、全部地球の神のヤツがいけないんだ。
まったくあの男は何を考えてるんだか……。
姉のまりあと結婚した後は、本当に親族として最低限の接触しかしてこないから余計に謎だ。
私やりりんを見守る為に結婚した訳じゃないと言うのはどうも本当らしい。
まりあと一緒に、家に来た時に様子を窺っているけど、どうみても姉にぞっこんだし。
「ところでさ、明日太の『ネガティブキャンペーン』って上手く行ってるの?」
昼休み。
子供は外で遊ぶものとばかりに、全校生徒は校庭に追い出される。
実際に校庭の遊具やらボールやらで遊ぶやつも居るけれど、そうじゃないのもいるもんだ。
私達は、あんまり遊具で遊ばない組。
ああ、私達って言うのは私とりりんと明日太の三人だ。
「なんでそれを……。」
困った様に明日太が眉を寄せると、りりんがシタッと手を上げる。
「こないだ話しちゃった。」
「……まぁ、別に内緒話でも無かったからいいけど。」
あんまり話されたくなかった訳ね。
「んで、成果の方は?」
「イマイチ。」
「だよねぇ……。」
「でも、そう言うのを話すのも楽しいから良いんだ……。」
「……楽しいんだ?」
「うん。」
ちょっぴり気まずそうに頬を染めて、視線を逸らす明日太。
女の子だったら萌えるけど、コイツは男だしなぁ……。
でも可愛いとか、どんなマジック?
「女子はそう言う話題ってないもの?」
「似たようなのはある気がする……。」
「男の品定め的なのとかねぇ……。」
男のと違って、女子の話題ってちょっとエグイ気がする。
なんか、最終的に『自分にとって利益が多いのはXX』って方向な感じがして。
「エロい話はまだ出る年齢じゃないんじゃない?」
「そう言うモノなのか。」
「男子ってどんな話するの??」
私の言葉に、素直に頷いた明日太に、りりんが爆弾を落とす。
ソレ、女の子が聞いちゃダメ!
「男子の話しはこう、セ……」
「ふむふむ?」
「明・日・太!!!」
私が少し大きめな声で名を呼ぶと、明日太は肩をビクリと揺らして目を見開いてこちらを見る。
なんとうか、こう、あからさまに怯えた表情だ。
りりんは明日太のその表情をみて、驚いた顔で私と彼を交互に見てる。
「りりんの耳が穢れるから、ソレは言っちゃダメ。」
「……うん……。」
「りりんも、男には男の、女には女の。秘密にしといた方が良い事もあるんだから、聞いちゃダメだよ。」
しょげた様子で俯く明日太を心配げに見やりながら、りりんは不承不承頷く。
コレは、理解してないな。
後で家に帰ったら、りりんには特別授業をする事にして、今は他の話題で明日太の気を逸らしてやる。
りりんの疑問に素直に答えようとしただけなのに怒鳴ったのは悪かったけどさ……。
いきなりストレートにエロ話始めるのはどうかと思うよ、明日太……。
明日太は、聞かれた事には割と直球で答えてしまいます。




