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恋敵は前世の孫  作者: 霧聖羅
2章 小学生
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りりんの気持ち

 私には双子のお姉ちゃんが居る。

良く、学校の子達から言われるのは『本当に姉妹なのか?』って言う言葉だ。

言いたい事は良く分かる。

顔の造作も、頭の出来も全然違うから。

私はどんぐり眼なのに、お姉ちゃん(蘭ちゃん)は切れ長で涼しげな目元の美人さん。

蘭ちゃんは私の事を『可愛い』と言うけど、正直なところ身内のひいき目だと思う。

まぁ……不細工ではないな。

自分の事を不細工だなんて言ったら、20も年の離れたまりあお姉ちゃんに梅干しされてしまう。

まりあお姉ちゃんの子供の頃に、私はそっくりなんだって。


「蘭ちゃんは美人だよねぇ~。」

「りりんとまりあは可愛いからいいでしょぉ~?」


 何かの折に、まりあちゃんに蘭ちゃんの容姿についてそうコメントしたら、遠まわしに『まりあとそっくりな事に、何か不満でもあるの?』という返答が返ってきたんだよね。

顔は笑ってたけど、目が笑ってなくて滅茶苦茶怖かった。


「……でも、蘭ちゃんは背も高くて、それは羨ましいなぁ。」

「手が届かないところのモノは、クリフちゃんに取って貰うから不自由してないなぁ。りりんは、蘭ちゃんか明日太ちゃんに取って貰えるからいいんじゃない?」

「クリフちゃんは旦那さまでしょう?」

「見た感じ、どっちもりりんに首ったけだから大差ないよぉ?」


 ちなみに私は背も低いのに、お姉ちゃん……蘭ちゃんは同じ学年の女子の中で一番背が高い。

スタイルも、同じ小学校4年生だなんて思えない位スラッとして綺麗。

蘭ちゃんの、このモデル並みの美貌とスタイルは、お母さんの凛ちゃん譲りなんだよね。

私とまりあちゃんは小ダヌキみたいなお父さん譲りのちんまりくりくりした感じを受け継いでいるから、あの素晴らしいプロポーションは正直に羨ましい。

それを口にすると、まりあちゃんはわざと明後日の方向に返事をよこす。

彼女自身も、背が高ければなって言うのは思った事があるっぽいなと、それで見当がついた。

もう、すっぱりと諦めて開き直ってるらしい事も。

でもねぇ。

成人してるまりあちゃんと違って、私はまだ成長期!

これからの伸びに期待させてくれてもいいんじゃないだろうか?

蘭ちゃんと明日太を上手く使う事なんて、考えたくもないなって言うのが正直なところです……。

 

 ちなみに蘭ちゃんは、それだけの容姿に恵まれたその上で、頭も良くて運動神経も悪くないとか、どんだけ?! と、たまに言いたくもなる程の高スペックぶりだ。

正直、蘭ちゃんが美人で優秀なお姉ちゃんであることに鼻が高いのと同時に、やっぱり羨ましいなと思ってしまう。

私は、頭も特別良くないし、運動音痴だからなぁ……。

でも、まりあちゃんが開き直った通りで、ない物ねだりしても仕方がないのだ。

私は私でしかないんだし。




 ところで、この蘭ちゃん。

滅茶苦茶、私の事を溺愛してる。

正直なところ、ちょっぴり異常なレベルで、たまにどう反応すればいいのか困ってしまう程だ。

こっそりと、私が蘭ちゃんにつけた分類は『ヤンデル系』。

そう。

蘭ちゃんの溺愛っぷりは、どうかんがえてもちょっとアブナイ感じなんだよね……。

学校ではクラスが違うから、昼休みくらいしか一緒に居ないんだけれども、ともかく、出来る限り私の側に居たがる。

家の中では、隙あらば膝の上に抱き上げたがるし、ほっぺにキスなんかは日常茶飯事。

お風呂は勿論一緒。

私の頭と身体を洗うのは蘭ちゃんのお仕事らしい。

自分でやると、その後ブチブチ文句を言われてうっとおしいのでお任せしてるんだけど……。

何でスポンジで擦った後に、手で洗い直すのかは謎すぎる。

くすぐったいから止めて欲しいんだけどなぁ……。

最近、ちょっと手付きがエロい事に気が付いた。

気が付いたきっかけが、お母さんの蔵書の18禁コーナーに似たようなシーンがあったせいだと言うのは、一応内緒。


 この間、ソレが思いすごしである事を願いつつ、昔の少女マンガを見ていてふと思ったと言う風に装って『キスの味』の事を口にしてみたら、物凄くエッチなキスをされてしまった。

あれは絶対、親愛のキスとか言うんじゃない!

だって、口の中をベロで舐めまわされたもん……。

「ファーストキスの味、した?」ってからかう様に言われて、「蘭ちゃんの、えっち……。」と返したんだけど、その後は2人きりの時に日に一度はそう言うキスをしてくる様になってしまった。

まずい質問しちゃったんだなと、そう思った時にはもう手遅れなのは、なんだかいつもの事だなぁ……。


「ねぇ……。蘭ちゃん?」

「なーに? りりん?」


 今日もまた、お母さん(凛ちゃん)の見ていない隙を狙ってきた蘭ちゃんを押し戻そうと頑張りながら、疑問を投げかける。


「私、お口にチューは許可した記憶が無いんだけど……?」

「えぇ? ゴメン、聞こえないや。」


 また、都合の悪い事は聞こえないらしい。

私なりに頑張って抵抗してみたけど、結局、今日も蘭ちゃんの勝ち。


「ごちそーさま♪」

「もぉ、やだぁ……。蘭ちゃんてば、ホントは男の子なんじゃないの?」


 蘭ちゃんは、蕩けそうな笑みを浮かべて、の唇を解放した後は、いつも通りおでこと瞼にもチュッチュと音を立ててキスをする。


「明日太に生まれたかったなぁ……。そしたら、絶対りりんと結婚するのに。」

「何故に明日太……。」

「好きでしょ、明日太。」

「……従兄だし。」

「従兄は結婚できるからなぁ……。」


 蘭ちゃんは本気で悔しそうな表情だ。

確かに、「大人になったら、結婚しよう。」ってしょっちゅう言ってくる明日太が気にならない、って言ったら嘘になる。

同い年の従兄の明日太は、私の事が好きなんだそうだ。

私も、好きだとは思うけど……そう言う好きかどうかには自信が無い。

でも、蘭ちゃんにキスされてる事は、彼には内緒にしとかないといけない……気がする。

彼は昔からしょっちゅう私に抱きついてきてたんだけど、最近、手付きが蘭ちゃん並みに怪しくなってきたので逃げるようにしてる。

セクハラ禁止! なのです。


「結婚とか、まだ早すぎ。」


 だって、私達まだ小学生なのに。


「じゃ、2人で一生独身って言うのはどう?」

「なんか、同性で結婚できるようにでもなったら『結婚しよう!』って言い出しそうだね……。」

「良いね、ソレ。女同士で結婚出来るようになったら、私のモノになって?」


 クスクス笑いながら私を膝の上に抱っこした蘭ちゃんは、機嫌よさげに耳元でそう囁く。

蘭ちゃんのこのセリフが、半分以上本気だなんて事は気付かないフリして、私は投げやりに同意する。


「そーだねー。万が一、そんな法律ができたらね。」

「ん。約束?」

「はいはい。約束しまーす。」



……そんな約束、しなくてもさ。

私は一生、蘭ちゃんの側にいると思うよ。

蘭ちゃんが、他の誰よりも私の事を必要としている限りは。

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