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恋敵は前世の孫  作者: 霧聖羅
2章 小学生
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親衛隊

 予定があると、時間が流れるのは随分と早く感じるものだ。


「お招きいただきまして、ありがとうございます。」


 風通しの良いテラスでりりんを膝に載せて宿題を見ていた私は、使用人に連れられてやってきた彼女の言葉にはっと我に返る。



やばい。

今、ナチュラルに葵ちゃんが来るの忘れてた。



 お陰で見られちゃいました。

りりんにセクハラしながら勉強を教えてるところ。



うわ。

やっちゃったなぁ……。



 私が内心で焦ったせいか、拘束の手が緩んだすきをついてりりんが腕の中からスルリと抜けだした。


「蘭ちゃん。予定があったのにごめんね。」

「あ、ううん。また後で見てあげる。」

「ん。」


 セクハラに関しては、既にいつもの事だからりりんは気にも留めてない。

彼女はテーブルに広げられていた勉強道具を片付けると、葵ちゃんに「ごゆっくり」と声を掛けて家に入って行く。



ああ。

私の天使が去っていく……。



 残念な気持ちで葵ちゃんの側を通り抜けるりりんの背中を見ながら、やっぱり妹は小柄なんだなと痛感する。

私は年の割に155センチと背が高すぎるからともかく、葵ちゃんはほぼ平均の140ちょっと。

りりんは130にまだ足りない程度で、葵ちゃんと比べても見るからに小さかった。

私の脳内では、小さくて可愛いに変換されるんだけど。

葵ちゃんは、なんだか複雑な表情でりりんの背中を暫く見送った後、じっとりとした視線を私に向ける。


「……妹さんをネコかわいがりしていると言う噂は聞いてましたけれど……。」

「そんな噂が、あるんだ……。」


 立ったままでいさせる訳にもいかず席を勧めると、彼女は対面に優雅に腰掛けた。

使用人が飲み物を持ってきて、下がると噂の入手先を口にする。


「蘭さまの親衛隊の皆様から色々お伺いいたしております。」



ナニソレ?!

私の親衛隊って、知らないんだけど?!



 私がギョッとしたのが分かったのだろう。

葵ちゃんは困惑した表情で、頬に手を宛がい首を傾げつつ言葉を継ぐ。


「吹雪家のお三方には、それぞれ親衛隊と言うかファンクラブと言うか……。そういった団体が出来始めているんですけれど、ご存知ないのですね。」

「へ、へぇ……。」



ご存じありませんでした。



「メンバー構成としては、明日太様は割と男女まんべんなく。りりん様は男子中心にひっそりと。蘭様は女子中心で熱狂的な方が多いですわね。」

「私のは女子中心なんだ……。」



明日太は女子に人気があるかと思ってたんだけど、男子も親衛隊に居るとかびっくりだ。

りりんが男子にひっそり人気あるのは、ちょっと納得。

小柄で可愛い顔立ちをしてるし、学校ではあまり無駄口を利かずに大人しくしてるからなぁ……。

私に『熱狂的』な女子のファンとか、怖すぎるんだけど?!



「はい。入っていないメンバーは、許嫁が蘭様と親しくしている方が多いですわ。」

「もしかして葵ちゃんって……。」


 ちょっと嫌な予感がして口を閉ざすと、葵ちゃんは恥ずかしげに目を伏せつつ頬を染め、私の恐れていた言葉を口にする。


「……会長をさせて頂いております。」

「そ、そう……。」

「恥を承知で申しますと、先程は、妹さんに成り変わりたいと切実に思いました。」

「……葵ちゃんだとりりんにしたようにするのは無理だけど、お姫様抱っこ的な方向なら……。」

「!!!」


 思わずと言った様子で、頬を赤く染めて飛び上がる様に立ち上がった葵ちゃんは、背後で椅子が倒れる音に我に返る。


「あ、申し訳ありません。……その、帰る前にお願い出来ると……うれ……しいです。」

「了解しました。それでは、申し訳ないんだけど本題に入りましょうか。」

「はい! 喜んで!!」


 どっかの居酒屋で良く聞く言葉が彼女の口から上がって、そこからは今回わざわざ来て貰った、婚約者の居る同級生の話題に取りかかる事に。

葵ちゃんがもってきてくれた資料は写真付きで、どの子同士が婚約してるかと言うのが分かり易く編集されていて、なんというかプロの仕事を感じる。

間違いなく、大人の手が入ってるよね?

っていう代物だ。

見やすくて素晴らしいけど。

なんだか、話しを聞いている内にいつのまにやら、季節ごとに追加や変更について報告してくれると言う話になっていた。

助かるっちゃ助かるけど……。

そこまで細かく知ってないと拙いんだろうかと、そっちが気になる。


 ちなみに今日教わった結果、私と仲良くしていた男子の3分の2が婚約者もちだった。

まだ小4だし、婚約者が居るって言うのと他の女子と仲良くするのが結びつかないのかな。

前々世の私も、やっと男女の差を意識するかどうかって辺りだった気がするし。


「彼等に私が女子として見られていないと言う線は……。」

「ありませんわね。」


 試しにそう言って見ると、即座に否定の答えが返ってくる。



そうですか。

ないですか。

そんな事もないと思うんだけど……。



 葵ちゃんをテラスから送る時に、彼女をお姫様抱っこをして玄関まで行くと、嬉しげに黄色い声を上げていた。

葵ちゃんがそう言うキャラだと思わなかったからビックリしたけど、コレもコレで可愛いな。

お見送りに出てきたりりんには、ちょっぴり嫌味を言われたけど。


「蘭ちゃんって、手が早いなぁ……。」



失礼な。

今は、りりん一筋ですよ?

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