小学校で変わった事
小学校に上がると人数が倍になって、クラスが2つ増えた。
60人と少しで3クラスだから、1クラス20人程度だ。
贅沢だなと思う。
わたしの前々世の小学校は、1クラス30人オーバーだった気がするんだけど、今はこんなもんなのか?
でもまぁ、増えたのが30人ちょっとって考えるとこの学校も随分と狭き門なんだなぁ……。
新しく入ってきた連中も、やっぱり金のある家の子供らしくて、なんか勘違いした感じのから、のほほんとしたのまで色々と居てちょっと面白い。
ちなみに、うちのリリンと明日太はのほほん系だ。
のほほん系万歳。
ほんわかした感じが可愛くて大変よろしいです。
クラスが3つもあるから、私達が同じクラスになる事はなくなってしまった。
明日太の方はアレで、意外と人付き合いが上手い。
幼稚園の頃は女の子ばっかりが周りに居たモノの、小学校に上がって中学年にもなると男友達が各クラスに何人もいるらしく、休み時間になると一緒にグラウンドでボール蹴りに勤しむ姿が良く見える。
りりんの方もまぁ、何とかかんとか大きな諍いに巻き込まれる事もなく平穏に毎日読書に励む日々。
相変わらず、オタク路線まっしぐらでちょっぴりお姉ちゃんは不安だ。
ウチは母親がオタクイーンだったらしく、漫画や小説専門の図書室に、昔のアニメのDVD観賞用のシアタールームなんてのがあるんだよ。
お陰で彼女の宿題終了後の生息地は、大体そのどちらかになっている。
将来がとても心配だ。
ちなみにオタクが悪いって訳じゃなくて、りりんの場合引き篭もりになりそうだっていう方向性が。
前世では、生活の為もあって働きに出てたみたいだけど、今回は実家が金持ちだから働かないって選択肢があるのがまた……。
でも、まぁそれもいいかもなぁ……。
友達も多くはなくても気の許せる相手が何人か入るみたいだし、いざとなったら、私が養ってやるっていう方向で。
え?
私は読まないのかって??
読むけど、りりん程熱心じゃないとだけ言っておこう。
前々世ではそこそこはおたくだった様な気はするな。
そうして私の方はと言うと、とても不思議な事に女の友人が居ない。
……と言う事に、最近になって気が付いた。
普通に男友達と馬鹿話をしたり、球蹴りしたりするのが楽しくて全然意識していなかったんだけれども。
ソレに気が付いたのも、自分で気が付いたって言うんじゃなくて他の人に指摘されて初めて認識したレベルだ。
「吹雪様は、男の子にしか興味がございませんの?」
私にそう言ったのは、聖園葵。
体育の時とかに、女同士で組まなきゃいけない時に私と積極的に組んでくれている変わり者で、小学校になってから入ってきた子だ。
「え? えっと、それはどういった意味で?」
「ご交流があるのが、男子生徒に偏っている様に見受けられたのですけれど……。」
言われて思い返して見ると、確かに小学校に上がってからは何故か女子よりも男子とばかり遊んでいる事に気が付いた。
小学校に上がるまでは、男女関係なく同じ位仲良くしてた筈なのに。
いつの間に、男の子としか遊ばなくなってたんだろう?
そうか。
私と組んでくれる子が他に居ない時点で、何かおかしいと気付かなきゃいけなかったんだ。
りりんや明日太の事ばっかり気にしてて自分の事は放ったらかしとか、一体何やってるんだ、私!?
「……言われてみれば……。」
「お気づきになられてませんでしたの?」
「全然。」
「少し、お気を付けになられませんと面倒事に発展しかねませんわよ?」
「……具体的には……?」
「婚約者と仲良くし過ぎていると気を揉んでいらっしゃる方が何人か。」
背中合わせになって腕を組んで、彼女をぐぐーっと持ち上げたり、彼女に持ち上げられたりするのの合間に言葉を交わす。
まじか。
小学校4年生程度でもう、婚約者とか居るのか?!
彼女の言葉に、『うわ、めんどくせー!』と言う気持ちと、『まずったなぁ』という気持ちが入り乱れる。
いや、正直困った。
「聖園様は、そう言ったご関係にお詳しくていらっしゃるの?」
「それなりには。」
こんな話を、さり気なく振ってくるんだから詳しくない訳はないだろうと思いながら訊ねると、サラリとそんな答えが返ってくる。
成程。
お詳しくていらっしゃると。
「ご教授いただく事は……?」
「学校では難しいですわね。」
『わざわざ、耳打ちして来るんだから教えてくれるよね?』と聞くと、『ここじゃ駄目』。
まぁ、確かに学校じゃ本人達の耳にも入っちゃうからなぁ……。
でも、逆に言うなら『学校以外』でなら話してくれるって事だ。
「今度、お時間のある時にでも我が家でお茶でもいかがですか?」
「予定の確認をしてみますわ。」
外で話す話題でも無いなと、家に誘って見ると遠まわしに了解の返事が貰えてほっとする。
今度来て貰えたら、できるだけ丁寧におもてなしをしよう。
こんな事を態々耳打ちしてくれるような人は早々現れるもんじゃないし。




