五章 [風に消え逝く言葉]
「ったく、どうも騒がしいな」
「ま、そりゃそうでしょ。あれだけ派手にやらかしたんだから」
まぁ、俺も思っていた所だ。一昨日の爆発事件もあり、流石に慌ただしくなるわな。
俺と上條は教室の前で別れ、また、何時もの日常が始まる。
*
「おい、珀呀。お前に客だぞ」
暑苦しい空気とご対面する様に頭が覚醒する。
徐に時計を見るともう既に4時を回っていた。そうか。俺は六時限目を寝過ごしていたのか。
先公がイライラした表情で睨み付けてくる。呼んだのはお前だろうが。
先公が指を差す先には、やはり彼女が立っていた。
「こんな風に話すのも昨日ぶりですね。どうです?少しはマシに世界を見れましたか?」
「そう簡単に見える物じゃ無いだろ。つーか、何でわざわざ俺の帰りに一緒に着いて来るんだ」
厄介だった。
うざったかった。
だが彼女は無垢なその目で俺を見てくる。まるで全てを見透かしている様に。
「いえ、単に理由等は在りません。ただ、その近況報告が聞きたかっただけです。」
「俺たちは赤の他人だ。別に関係なんて無いだろ」
「えぇ~?この前は彼処であんな事したのにぃ~?」
コイツ!わざと大声で言いやがった!!
周りの目が此方を向く。その瞳は真っ先と俺に来る。
そうして周りからはコソコソと声が聞こえる。
「お前………!!仕方ねぇ、こっち来い!!」
「や~ん、珀呀君ったら大胆~♪」
「黙ってろ!!」
そんな訳で、俺の長い一日が始まった。
*
「お前……。なんてデタラメな事を大声で言ってるんだ………。少し手を引っ張った位で………!!」
俺がそう言うと、彼女は知らないような顔をして何もない方向に首を傾ける。
「えぇ?私は事実を述べたまでですよ?」
「だとしてもそんな例えは無いだろ……!!」
「ですが、そのお陰で少しは面白く見えたんじゃ無いですか……?」
面白く等無い。ただ疲れただけだ。それを面白いとするお前はどうかしてるな。
「さらに、か弱い女の子をこんな薄暗い路地まで強引に連れ出して………。何する気ですか?」
「説明だよ!どうしてんな事を大声で言ったんだって事をだよ!!」
町外れから少し抜けた場所。そこまでコイツを連れてきたとは言え、流石に不味かったか?
だが、一応コイツは迷惑していなそうだし、同意の上か?
「だーかーら。これで貴方は少しでも世界を面白く見えたか、を少し試してみただけです」
物騒すぎる試し方だな。
「あーあー、疲れた。別に面白く見えない物を面白く見せる様にするなんて無理な事だ。もう声掛けんなよ。これっきりだ」
俺がさっきまで掴んでいた肩から手を離し、踵を返し歩きだした。
コイツと一緒に居るとロクな事が起きないのは目に見えている。
「それで良いんですか?そんなことで諦めるんですか?」
だが、案の定コイツは突っ掛かってくる。迷惑な女だ。
「アンタは何がしたいんだよ。何で俺にここまで突っ掛かってくる?」
「それはただ、貴方のその能力。そして貴方自身を手に入れたいからですかね?」
キモッ。
「はぁ?」
何なんだコイツは。いきなり突っ掛かってくるとはいえ、これは無いだろ。
能力は未だしも、俺って何だ?
「それは簡単です。貴方が世界の鍵であり、貴方が秩序でもあるからです」
「何だ?その厨二チックな言葉は。アンタ、高校にもなってまだ厨二なのか?」
「もうこの能力があり得るこの世界でそんな事が言えますか?と、その前に。貴方、やはり前世の記憶を持っているでしょ?」
待て、前世って何だ。おいおい、いい加減この話は止めてくれ。
一体何なんだ。たかが戯言に過ぎないだろうが。
「一にただ事では在りません。全ては事実」
「だから!そんなふざけたみたいな話を俺に信じられるかってんだ!!」
彼女は一瞬怯んだ様な素振り見せたが、直ぐに平然を取り戻す。
「そうですね、今は話している時間も在りませんし、場所も場所です。今度は私が連れていく番です!!」
いきなりそう叫ぶと、俺の後ろに抜け、背中に回って襟を引っ張り走り出す。
待て、この体勢は首が閉まるって!!
「おいおい!!意味わかんねぇんだけど!!いきなりそんな事言われても……。ってうわぁ!?」
「少し我慢して下さいね、軽く音速越えますから。ってあれ?遅かったかな?」
気付いたら俺は、空を飛んでいた。そうして真っ逆さまに落ちていく俺達。
そうして風に消え行く言葉は、微かに俺の耳元に響いていく。
「少しは、思い出して下さいね……」
ちょらーっす。音韻です。五章になりました。ここから結構早回しに展開が動きます。結構開いて仕舞いましたが、このようなペースで投稿しまーす。
では、次回まで。