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迅魂夢想の神姫謌  作者: お隣 韻
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四章 [忘却と忌]

彼女の背に聳えるその焔に彩られし竜は禍々しくも神々しくもあった。


「ふぅん。話に聞いていたよりは根性在る見たいですね。でもそんな物じゃこれからの聖戦への道筋は遠い」


彼女は何を言っているんだ?恐らく独り言だろう。

今はそれどころじゃない。もう既に[決闘]が始まっている以上、途中棄権は出来ず、戦意を喪失するしかない。

もうこれは力ずくでも彼女を負けさせるしか方法は無いのか。

いや、考えている時間もない。傾城を狙うしか方法は無い。

そうして俺は少し目を閉じ、もうひとつの眼を閉じた。

俺は徐に呟く、相手に聞こえない程度に。


創造(ドレインシージ)、起動。」


聞こえていない様で此方には気付いていない、好都合だ。

俺はすくみ始めている足に踏ん張りを付け、熱すぎる熱風の中を歩く。

これでも十分熱い、足の裏が焼ける様な熱さ。

その俺の向かってくる行動に目を取られたのか、彼女の視線は俺の方に向くのが分かる。

分かりやすくて助かる。こういう絶体絶命、背水の陣の環境差でも俺の冷血脳は働いてくれる。

俺が()()の背後に砂を創造した。

このぐらいで気付く筈だ。

予想は的中し空中から落とされた砂は地面に落ちる。

その時、彼女は振り向いた。

初めて俺に見せる隙を逃さない。

全速力で彼女の懐に走り込む、その間約十メートル。

間が縮まると同時に熱風が押し寄せてくるのがわかる。

俺が彼女の懐に入る前に俺の行動に気付いたのか彼女が振り返る。

だが俺も足は止めない。


「へぇ、流石は[時空間形成創造魔法(クリエイティブドレイン)]ですね。私の真後ろに砂を創造させるなんてねぇ?」


間に合わなかった。彼女の手から伸ばされたのは炎。そうして俺の身体に触れる。

瞬間だった。

刹那、俺の身体は逆方向に吹っ飛ばされ、落ちた周辺には砂埃が舞う。

痛い。

鋭い熱さと響くような痛みが俺を襲う。

だが、勝負の終わりをもたらす終止符は余りにも簡単に訪れた。


「私はもう疲れました。貴方の強さは分かりましたし。[時空間形成創造魔法]とても興味深い能力です」


[時空間形成創造魔法(クリエイティブドレイン)]


それは能力保持者が脳内で創造した物を任意でこの世界に創造する、という能力。

神に等しい能力とされ、[神殺しの能力(ゴッドスレイブ)]等別名が在る能力。

俺はその自分の能力を忌む対象として見ていた。

その能力は全てを可能な領域として見てしまう。

その能力は世界の理を無視して無から有を得る。

その能力は俺から[世界を美しく見せる目]ではなく、[世界をつまらなく見せる目]にした。

この能力のせいで名声や誹謗の目で見られる事となったのかも知れない。

そんな能力が俺の架け橋となっている。

そんな能力が、今の俺を創っている。


「何でこのつまらない能力が興味深いんだよ。こんな領域を無視した能力なんて全てをつまらなくしかさせてくれない」


「だから興味深いんじゃないんですか?」


その応答は唐突だった。

その時には辺りを包んでいた灼熱の熱風は止み、優しく語りかける彼女の姿が有った。


「その全ての理や法則をねじ曲げる能力。まさに在るべき姿へと戻す能力でも在るんじゃ無いんですか?」


彼女は俺の制止をも無視し、その無垢な目で此方を見つめる。


「その貴方言う[つまらない世界]とは貴方の傲慢です。我慢です。ただの自己中心的な意見をその罪の無い能力に擦り付けてるだけです」


「だったら何だよ。俺にはこの能力に助けられた事も無いし、無くても構わない」


「そうですか。だったら貴方は今頃死んでいましたね、彼のとき殺す気でやってましたし」


そう言いつつ此方に近づいてくる。仰向けに倒れたままの俺の顔を覗きこむ様に俺の横に座る。


「だったら、貴方がその能力をつまらなく無くせば良いんじゃ無いですか?」


「だったら俺はもう既にそうしている筈さ」


「へぇ、でしたら貴方は今日、とても運が良い。何故なら今日、そのきっかけが出来ましたからね」


彼女はそのすっとんきょうな声で話を続ける。


「ならば、私達と一緒にその世界とやらをつまらない観点から面白い観点へと変えれば良いだけじゃ無いですか?」


「意味が分からん」


その一言で彼女はフルオートなお喋りの口を止めた。

俺は仰向けから背を起こし、目の前の海岸線を見た。

その景色はこれ迄見た物よりも綺麗で、美しく見えた。


「どうです?綺麗ってハッキリ言って下さい。ここ、海が良く見える所なんですよ?良く来るんです」


俺は疲れきった体を伸ばし、力強くそこ足で地面に立った。そこで俺は彼女に聞こえない様に、呟いた。


「まぁ、少しは綺麗かもな」


そうして俺とおかしな彼女はそこで別れた。

彼女は一体何者なのか、等色々聞き忘れたが、その事は後で上條に聞けば良いと思いつつ家路を急いだ。


《だったら、貴方がその能力をつまらなく無くせば良いんじゃ無いですか?》


どうしてもその言葉が俺の心に突き刺さる。

その言葉に、感謝をしているのか。

その言葉に、感動を抱いているのか。


俺の心には良く分からない問題だった。一体、彼女は何なんだ。

あい、作者です。ヒロイン回の続きです。先伸ばしって良く無いですね。次回は新キャラ登場なるか?!乞うご期待!!

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