帰路 五
七月九日、第五艦隊は空母モハーヴェイ上にて殉職者の宇宙葬を行った。レシーバーを通して弔いのラッパの音が全員の耳に入るのと同時に遺体が収められた円筒型の棺がモハーヴェイから宇宙空間に放出されていく。駆逐艦から弔砲が発射される中、並んだ乗員は敬礼でそれを見送ったがこらえきれずに涙するものもいた。
「貴様達の死を決して忘れはしない。」
チェルノフ艦隊司令はアリアンの艦橋から宇宙へ旅立っていく殉職者達を見守っていた。シワの多いその顔はやつれ果て、実年齢よりかなり年老いて見えた。
「司令、少し休まれては」
「そうだな。すまないがこれが終わったら休ませてもらうよ。マクシム艦長後を頼む」
葬儀が終わるとチェルノフ艦隊司令はひとり静かに長官室に入っていった。
「この艦もしばらくはドッグ入りか」
マクシム大佐はこの艦の修理が終わり再び若い命を乗せて出港する前に戦争が終わって欲しいと真に願って止まなかった。艦の損傷状態から見て最低でも六ヶ月はかかりそうだと彼は予想した。しかしその程度の期間では収束しそうにはない程に戦争の規模は拡大していた。
「こんな光景はもうたくさんです」
戦争が終わって欲しいと思う気持ちは副長も含め皆同じだった。
「しかしあの爆発はなんだったんでしょうか?」
「わからない。が、ただ一つ言えることはあれがなければ我々は反乱軍に捕らわれていたことだけだ。こちらもリュウセイも突然爆発したがな。あの爆発が偶然ではなく何者かの攻撃である可能性が非常に高いと思う」
「海賊の可能性も」
「その可能性もゼロではないが、限りなくゼロに近い。あんな攻撃ができる武装を海賊が装備しているとは思えない。新兵器を装備した反乱軍が誤射したのかあるいは・・・」
「地球外生命体・・・」
「・・・」
副長の言葉に対してマクシム大佐は何も答えなかった。
「それなら我々と反乱軍両方に被害が出たことにも納得がいきますね」
「攻撃したのが何者なのか突き止めるのは我々の仕事ではない。今やることは戦争に勝つこと、それだけだ。」
間もなくして第五艦隊は国連軍の勢力圏内に入った。