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写真と可愛い

展開がなっかなか進まない…OTZ

その日の夜に、副会長から電話がかかってきた。


『今大丈夫か?』

「あ、はい大丈夫ですよ。」

『……今日は午後から連絡が取れなくて済まなかった。広報に問い詰めたり、会長バカがお前が彼女なのかとうるさく問い詰めてきてな…。』

「会いたくないので紹介していただかなくて結構です。」


美形なんて至近距離で見るものじゃないよ!美形は副会長で足りている。この上生徒会長とかお腹いっぱいです。


『わかってる。会わせる気も予定もない。』

「よかったです。副会長も大変でしたね。なんか常に誰かの視線を感じるのってしんどいんですね。」

『慣れればあまり気にならなくなるぞ。だが慣れないと居心地悪いだろう。巻き込んですまなかったな。』

「いいえ、謝らないでください。出会った当初ならまだしも、今となってはそんな周囲のくだらない声で副会長を避けるようなことはしませんよ。」


へらりと笑って答えた。

風紀委員の人ポジティブストーカーさん達に激励されたし、いまさらそんな簡単にさよならするほど薄情じゃない。


『…そう言ってくれてよかった。』


電話越しの副会長の声も笑っているようだった。

穏やかな空気が流れたところで、私は今日仕入れた衝撃の事実を副会長に問い詰める。


「……所で副会長。副会長、実は授業中は眼鏡だったんですね。」

『……ちっ!!』


なんて露骨な舌打ちをっ!!やはり事実だったのか…!

アドレス交換した風紀委員の人が、授業中の眼鏡姿も素敵!といっていたから詳しく聞きだしたのだ。風紀委員の人はAクラスらしい。特Aと教室が一緒だから知っていたのだろう。

何それずるい!


「私もみたいです…。」

『お前、写真撮ってただろうが。』


あ、ばれてらっしゃる。まぁペンネの記憶全部読んだら、当然そこも知ってるよね。むしろ今まで追及されなかったのは、さりげなく見逃されていたのだろう。

ちなみに風紀委員の人に副会長の写真とか持ってないんですか?って聞いたら「真のファンならば盗撮写真などは持たないものです。斎様の素晴らしいお姿は瞼の裏に刻みつけるもので、形に残すくらいなら心の中に残しなさい!」という名言をいただいた。でも生徒会として公式に掲載された記事のカメラ目線の写真と、クラスの集合写真なら持っているそうだ。これは本人が映ることを承諾したちゃんとした、誰でも手に入る写真だからいいんです!とごにょごにょと言い訳してくれた。複雑なファン心理らしい。

自分の持っている副会長の寝顔写真がやましいものに見えてしまった。いや、私は別に副会長のファンなわけじゃないからいいのか?わかんなくなってきた。


「えっと……その、勝手に撮ってごめんなさい。副会長が消せと言うならちゃんと消します。」


涙をのんで、30分ぐらい瞼に刻みつけてからちゃんと消す。

ペンネの写真に関しては、本人にちゃんと許可を得てるのでいいと思ってる。


『……まぁ誰にも見せないなら、持っているのは構わない…。そのかわり、お前がペンネと写ってる写真送れ。』

「え?えぇっ!?とんでもなく嫌なんですけれどっ!!」

『お前だけが持っているのは不公平だろう?俺も持っていれば盗撮の罪悪感が薄れるぞ?』

「罪悪感の代わりに羞恥心がわきあがってきますよ…。」


だって自分の知らないところで副会長が私の写真見てるかもしれないんでしょ?恥ずかしいよ!


『ちなみにその羞恥心、今は俺だけが持っているんだが不公平じゃないか…?』

「……送らせていただきます…。」


何も反論できない。うぅ…私、写真写りあんまりよくないんだよな…。ペンネと写ってるのだって、ペンネは可愛いが私は微妙なのだ。ペンネも副会長も写真写りがすごくいいので、自分ですらこの写真なら実物の私の方がまだ可愛いと断言できる自分の写真を渡すのがすごく嫌だ。


『ちなみに俺とのツーショットは撮らなかったのか?』

「寝てる副会長と自分のツーショットはなんか駄目な気がしたので。というか後で見返す写真に自分を入れたりしませんよ。あと私写真写りがよくないので、写真写りのいい副会長と絶対一緒に写りたくなかったんです。」


あともう一つの理由としては、自撮り写真って自分の腕の長さしか距離がないので、誰かと一緒に写る時は必然密着しなくちゃいけない。

副会長と密着するとか緊張するのでやりませんでした。直前まで距離感ゼロで抱き合っていたけれどあれはまた別の問題だ。

見返してるのか…となんとも言えない微妙な声音でつぶやいていた副会長が、次の瞬間爆弾発言を投下した。


『そこまで言われると俄然お前の写真が気になってきた。一旦電話切るからすぐ送れ。じゃ。』


そういってさっさと電話を切られてしまったので、仕方なく数枚あるペンネとのツーショット写真を比較して、自分なりに比較的一番可愛く写っているだろう写真を添付してメールを出した。送信ボタンを押すまでに10分費やした。

これ、誰かに写真を撮られるよりも、自分で自分の写真を送りつける方が羞恥心高いかもしれない…。

メールを送ってしばらくしたら、またすぐに副会長から電話があった。


『送ってくるのがえらく遅かったから、催促しようかと思ったぞ。それにしても……本当に写真写り悪かったんだな…。』


しみじみ言われてしまった。すごく意外そうな申し訳なさそうな声でいわれてしまった。もうやめて!


「わかってますよ!わかってるからやだったのに!!それでも一番いい写真なんですよ!それでもねっ!!」

『いや…一応送られてきたら、なんだ普通に可愛いだろみたいな言葉を言うつもりでいたんだが、これは素直に………お前、写真写り悪いな、うん。』


なんでなんだろうな、と本気で疑問に思ってらっしゃるようだ。もうやめてください。私のダメージがやばい。


『実物のお前はもっと可愛いのに、もったいないな……。』

「……っ!?」


なんでもないことのように、ごく普通に告げられたその飾らない言葉に、体温が一気に上昇した気がした。

か、可愛いなんて…異性に言われたの初めてかもしれない…。素でいったような口調がまたよりいっそう恥ずかしい。この人本気でそう思ったってことだよね…。

ち、違う。よく考えるんだ私!これは自他共に認める写真写りの悪い私を見て、これなら実物の方がましだと言われたにすぎないんだ!誰だってこの写真を見れば実物の方が可愛いというだろう。つまりはそういうことなのだ!別に私自身を特別可愛いと思ってなくても、この比較で見せられれば可愛いと思う錯覚のような話だ。

副会長は断じて私自身を可愛いと言ったわけじゃない!この写真の私と比較すれば実物の方がいいよと言っただけだ…!!


だけなんだけど……。

どうしよう。ちょっと副会長に可愛いって言われて嬉しかった自分がいる…。そりゃ副会長美形ですもんね。女の子として、かっこいい男子に可愛いと言われたら誰だって多少はときめくよ。

私がちょっと嬉しかったのも、そういうこと…だよね…?


『おい?…中原どうした?……聞こえてるか?』


私が無言になってしまったので、副会長が怪訝な声で呼びかけてくる。


「…………か、可愛いとかやめてください…。」

『…なんだ照れてたのか。電話越しに言うんじゃなかったな。直接言えばお前が照れてる顔が見られたのに…。』


ちょっとムッとしてぼそぼそ言い返すと、すぐに察したらしい副会長が、にやにやした声で残念そうにつぶやいた。


『……話がそれたが、あの広報に関してはとりあえず、俺から打てる手は打っておいた。明日にでも多少変化があるはずだから悪いがしばらく我慢してくれ。もし何かあったら隠さずに全部言えよ?今お前に迷惑をかけてるのは俺のことだから、俺に何とかする義務があるから変な遠慮とかしなくていいからな。』

「わかりました。ありがとうございます。」


仕事が早いなぁ。


『それじゃあ長く電話しすぎたし、この辺で切るよ。』

「あ、はい。それではおやすみなさい、副会長。」

『…おやすみ、中原。』


通話の切れた携帯を見つめ、私はベッドにぽてんと転がった。

どうやら副会長はこのおやすみの挨拶が好きらしい、と最近気づいた。

決まって声音が柔らかいのだ。一人暮らしだし、複雑な家庭事情でそういうやりとりがなかったかもしれないから、誰かとおやすみの挨拶をするのが新鮮なのだろう。

私は携帯の中の、眠っている副会長の写真を開く。

耳の奥には、副会長の先ほどの声が焼きついている。


「……可愛いとか…勘違いだよ…。でも、ちょっとでも可愛いって思ってもらえてたら…いいな。」


クッションに顔をうずめて誰に言うでもなくぽそりと言った。自分が乙女思考になっていてすごく恥ずかしい。

だが、今までの副会長とのやりとりを思い出して、そんな乙女思考はすぐさま消え失せた。


「可愛いとか無理だ……。餃子姫にはじまり、わりと副会長には醜態しかさらしてなかった……。あの記憶どれかひとつでも抹消できたらいいのに…。まともに女子と認識されてるかどうかも微妙なラインだ。」


というか、私副会長にちゃんと女の子として認識されているのだろうか…?とてつもなく不安になってきた。

自分で出した結論に悲しくなって、あれらの醜態を副会長は実はどう思っているのかが気になって、眠れぬ夜を過ごした。


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