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その後とご飯

難産しました。

なんだろう…副会長のキャラが急に変わってないか心配で怖い。

「―――おい…起きろ…中原。」

「んんぅ…あと45分…。」

「結構寝る気だな…。」


起きろ起きろと、肩を揺さぶられる。うぅ眠い、誰だよ…。


「中原、中原…そろそろ起きろ。」

「ん~……。」


ようやく眠い目を擦りながら開けると、副会長がいた。


「ん……んんっ!!え?副会長!?」

「お前結構寝起き悪いんだな。」


なんで目の前に副会長が??あ、ここ副会長の家だっけ?てか寝顔見られた!?よ、よだれ垂れてないよね…?

よだれの有無を確認しながら、そろりと上半身を起こす。


「とりあえず副会長、体調はどうですか?まだ調子悪いですか?」

「いや…体調は大丈夫だ。」

「そうですか…。ちょっと心配だったので、問題ないならよかったです。」


心からそういうと、副会長はちょっとバツが悪そうに言った。


「…すまなかったな。色々と…ありがとう。」

「え?何を……まさか覚えてるんですか…?」


副会長の意識はなかったはずだ。


「ペンネの記憶を読んだ。」


おおふ、読んじゃったのか…。

瞬間、自分の顔が真っ赤になるのがわかった。あれをペンネ視点で見られたとか恥ずかしすぎる。

人命救助とはいえ、副会長に抱きついてたんですけど、私。服脱がせたんですけど、私!

副会長の反応をそろそろと伺うと、目を泳がせている以外は平静に見えるが、よく見ると耳は赤くなっていた。


「副会長、耳赤いですよ?」


副会長がバッと耳を押さえる。実は、ものすごく動揺していたらしい。指摘されて、ちょっと慌てたような表情が可愛かった。

そして、両耳を隠している手を見て気付いた。

副会長、萌え袖だ!!

私が着せたシャツとは色が変わっていたから、私が起きるまでに着替えたのだろうと思っていたが、Vネックの長そでで萌え袖の動揺した副会長とか御褒美ですね!御馳走さまです!!

私が鼻と口を押さえて無言で悶えていると、動揺から立ち直ったらしい副会長に睨まれた。笑ってませんよ、悶えてたんです。…言えない。


「それで中原……。」

「は、はい…。」


咳払いをして副会長が切り出した。ちょっと背筋を正して話を聞く。


「どうする?今5時過ぎなんだが。帰るなら送っていくぞ?」

「か、帰ります…!」


そんなに時間たってたんだ…。いくら集中して魔法を使い続けたとはいえ、どれだけ寝てたんだ私。

副会長はいつ起きたんだろう?もっと早く起こしてほしかった。

帰ろうと思って立ち上がったとたん、ぐぅ~と間抜けな音が鳴った。私のお腹から。


「………。」

「…もしよければ…一緒に晩飯でも食べるか?」


気を遣って聞いてくれる副会長の優しさに涙が出そうだ。羞恥心的な意味で。


「いえ…大丈夫です。帰ります…。」


ぐぐぅ~とさらに盛大な腹の虫が鳴った。お腹を押さえたって音は止まったりしない。


「…………。」

「中原、ご飯食べないか?」


笑いをかみ殺して再度尋ねる副会長を、真っ赤になりながら睨みつけて、ご飯を一緒に食べることになった。どの道由紀と晩御飯食べるつもりでいたから、家に晩御飯の用意を断っていたので、有難くお願いした。


…のだが。


「中原、お前料理出来るか?」

「お手伝い程度のスキルならばありますよ。」

「そうか、じゃあ手伝え。」

「え?」

「俺は父親と不仲だから一人暮らししてるが、料理は実家の家政婦さんが、いつも作り置きしてくれてるものを温めて食べるぐらいしかしてない。出来ないわけではないと思うが、お前も一緒に作って助けてくれ。」

「はぁ…。わかりました。」


副会長とお料理することになりました。

そして意外と複雑な家庭事情らしい。そして家政婦さん。そんな存在、現実で初めて聞きました。


「副会長の家お金持ちなんですか!?電車通学してるのに?」

「お前の金持ち基準は、家政婦と車通学なんだな…。ひき肉と玉ねぎがある。とりあえずハンバーグでも作るか…。」


副会長は呆れたような突っ込みを返しながら、冷蔵庫をがさがさと漁ってメニューを決めた。


ということで、副会長と私の、第一回チキチキお料理大会が始まった。第二回はない。

玉ねぎ多めに入れたい!という私に、副会長が「じゃあ、お前が切れ。」と言われたので、現在、玉ねぎをみじん切りしている。めちゃくちゃ目が痛い。

副会長は、横でボウルとパン粉を探している。


「う~…涙がやばい。」

「耐えろ。」

「う~ぅ…。」


私が今必死で耐えているのに、副会長は鼻歌を歌いながら卵を割っていた。我が家の子守唄だった。気に入ったのだろうか?

割るのをちょっと失敗したらしく「あ。」という声が聞こえたので、全力で笑って差し上げた。肘で軽く小突かれた。わ、脇腹はだめです!!

私が泣きながらみじん切った玉ねぎを、副会長の手元のボウルに入れて、腕まくりした副会長がこねる。そこに横から適当に塩やコショウ、ナツメグやパン粉を放り込んでいく。

ペンネは私と副会長の足元を、うろちょろと物珍しげに動き回っている。蹴っちゃいそうで怖いんだけど、たぶん避けてくれるよね…?ペンネねこふんじゃったとか嫌だよ!?


「分量わかってるのか?」

「適当に入れてもやりすぎない限りは不味くなりません!」

「そんなところで男らしさを見せるなよ…。手の感覚がなくなってきた。肉と卵がめちゃくちゃ冷たい…。おい…。」

「絶対代わりませんからね。男らしさを見せて下さい、副会長!」


副会長が小判形に成型している間に、フライパンとフライ返しを探す。ようやくフライ返しを見つけ出して焼く準備もできた。

手が空いたので、レタスとキュウリを水で洗って適当な大きさにする。冷蔵庫にドレッシングがあったから、お皿に盛るだけでサラダの出来上がりだ。

副会長はハンバーグをキャッチボールして空気を抜いている。


「副会長、副会長。副会長の手の平サイズだと私にはちょっと大きいんですけど…。それひとつ食べきれるかなぁ…。」

「一人二つで作ったんだが無理そうか?まぁ無理ならたぶん俺が食べれる。…そんなでかいか?」

「私は自分の手の平サイズでちょうどいいんですもん。大きさの差考えて下さいよ。」


ほら、と副会長に自分の手の平を見せると、副会長が自分の手の平をぴったりと重ねてきた。

ハンバーグをこねていた副会長の手だ。もちろん肉の油分でにっちゃりしている。

その感触に、私がうわぁ…と嫌そうな顔をすると、ニッと笑った副会長はあろうことかそのままぎゅっと恋人繋ぎをしてきた。

当然指と指の隙間に入った副会長の指のせいで、私の手は見事に油まみれだ。


「ぎゃあーっ!!最悪!」

「ふっ、はははっ!」


ちっくしょう、えらく楽しそうですね。洗っても油分がなかなか取れない。

副会長はたぶん恥ずかしさを紛らわすためだろうが、いつもより私に構ってくる。私も多少の照れくささがあるので、全力でそれに乗っかってテンション高めに突っかかる。

お互いくだらない仕返しをしながら、なんとかハンバーグが完成した。

家政婦さん作り置きのかぼちゃスープを温めて添えれば、なかなか立派な晩御飯になった。


二人で手を合わせて、一緒に食べた。私も副会長も料理が全く出来ないわけではないので、段取りは悪いが普通にうまくできたと思う。家政婦さんのスープもとっても美味しくて、ご飯が進む。


「美味しいですね。」

「美味いな。」

「自分で作ると、美味しさも一入ひとしおな気がしますよね。」

「あと誰かと一緒に食べると美味しいな。お前と一緒に食べてよかった。」


そういえば副会長は、お父さんと不仲で一人暮らししてるんだっけ。それだと、誰かと一緒の晩御飯は特別かもしれない。

私は副会長と、他愛ない雑談をしながら楽しく晩御飯を食べた。

副会長は、いつもよりちょっと穏やかな表情をしてたような気がする。気のせいかもしれないけど。


ご飯を食べ終えて、食後のお茶を飲んで一息ついた。お皿は副会長が、全部食器洗い機に放り込んだ。文明の利器万歳。


一息ついて、穏やかな時間が流れた後で、私はそろそろいいかなぁと、ずっと気になっていたことを、おそるおそる切り出した。


「副会長。…副会長はどうして今日倒れていたんですか?あれは魔力酔いの症状でした。副会長が魔力飽和を起こそうとしたら、相当魔力を溜めこまないといけないはずです。なんであんな状態になってたんですか?」


急に副会長が静かになった。そして一呼吸置いた後に、ゆっくりと切り出した。


「そうだな…。助けてもらったし、心配もさせたんだ。

お前には話しておこうと思う。俺の身体の秘密のことを。」

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