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テスト返しと魔具


テスト終わりの翌日登校すると、校門前で生徒がにぎわっていた。というか詰まっている。

どうやら、校門前で風紀委員と教職員が中心となって、何かを配っているようだった。


私と由紀が門のそばにくると、風紀委員の一人から呼びとめられた。


「入る前に点呼をします。クラスと名前をお願いします。」

「1-C、中原美耶子です。」

「……はい。確認しました。ではこれをつけたら通っていいよ。」


弾力性のある太いゴムバンドを渡される。蛍光イエローで、内側にびっしりと呪文が刻まれている。


「これなんですか?」

「魔力放出を阻害する簡易魔具。私達は魔具リングと呼んでる。今日一日、学園にいる間はこれをつけてもらうから。一度つけると学園を出るまでは外せないようになってるからね。詳しいことは朝、各担任から教えてもらえるから。はい、つけて。」


後がつかえてるから、と言われ目の前で腕にはめて見せる。そしてそのまま門をくぐるとカチンと音が鳴って、柔らかいゴムは伸縮性が消え、固いプラスチックのようになり、外すことが出来なくなった。

たぶん門からでたらまたゴム素材に戻るのだろう。


「んー…。どうやら魔法が使えなくなってるね。魔力が練れないって感じかな?これ魔力酔いとかならないんでしょうね…?」


別の風紀委員に呼びとめられていた由紀が、魔具を睨みながらぶつぶつ言いつつやってきた。魔法を使ってみようとしたらしい。

どうやら今日一日魔法を全面的に禁止しようと言う試みらしい。

大多数の困惑している生徒とともに、教室へ向かった。



「あー…お前達、朝校門で魔具を配られたと思う。全員ちゃんとつけてるかー?」


やはり、朝の連絡も早々に担任が切り出したのは魔具のことだった。


「実はうちより一足先にテストを行った学校で、魔法を使った成績改ざんという不正行為があった。

テスト中は先生達も監視の目を光らせているし、カンニング対策用の魔法感知の魔具も多く用意されているが、これまでテスト後は通常通り、学園規則に則った範囲であれば自由に魔法を使うことが出来た。

そして今回他校で不正行為が起きたことで、それを踏まえて我が学園でも、教師の採点が終わる今週いっぱいは、生徒の全面的な魔法の制御を禁止する制度が出来た。」


へぇ。つまり、悪いことにばかり頑張る人たちの巻き添えを食った形かな。よく思いつくなぁ。その努力と熱意を、素直に勉強にまわせばいいのに…。

今日は不意打ちの形にすることで、似たようなことを考えていた生徒がいた場合に、対策させないために事前連絡が回されなかったらしい。あと先生達もだいぶ混乱したし、魔具を全校生徒分手配するのがどれだけ大変だったと思うー?みたいなぼやきがあったから後半が本音なんじゃないかな。


「今回は事前連絡がなかったから、視力が悪い者で眼鏡を持ってきてないやつや、他の授業に支障出るやつは担任に申請しておくこと。ちなみに身体から自然に放出される魔力は素通りするから魔力飽和で魔力酔いする心配はないからな?だたし、自分の意思で魔法を使おうとすると、邪魔されて魔力を練ることが出来ないようになってるから、今日一日、学園では魔法使うなよー。」


担任はその後も、生徒達のぶーぶーと不満げな声と質問に答えている。

授業開始のチャイムに担任はほっとしたような顔で、さっさと逃げ出した。


今日一日は、テスト返却と魔法を使わない授業のみが行われた。

明日もこんな感じだろうか?これはこれでめんどくさいなぁ。

ちょっとしたことにも魔法がつかえないって不便だ。

魔具があるので、視力補助が出来ないと申請する生徒が結構いた。みんな眼鏡ちゃんと持っとこうよ…。

他にもちょこちょこしたところで色んなトラブルがあった。

私達って、意外に日常的に魔法を使ってたんだなぁ。

教室の掃除を、全部手作業でやるのが大変だった。


テストは苦手科目が伸びて、得意科目も若干上がったので、平均点が上がった。

ケアレスミスも減ったし、副会長に勉強見てもらった面目が保ててよかった。

割と自信あったけど、ちゃんと点数に出ててよかった。まだ返って来てない科目もあるが、たぶん似たような感じだろう。

これは報告にいかなくちゃね!

と思ったら副会長からメールが来ていた。


『ペンネがいないので、今日はやめておく。』


そっか、副会長も魔具をはめてるから、ペンネが召喚できないんだ。もし明日も魔具をはめなきゃならないなら、明日も中止になるのかな?じゃあ今週までの約束なのにこのままペンネに会えずにお別れってことなのかな…?

この間いっぱい遊んだとはいえ、ちょっとさみしい。


テストのお礼を言う時にちゃんとペンネとも挨拶出来るといいんだけど…。


気を取り直して今日は由紀と一緒に帰ることにした。


久しぶりに由紀と一緒だったので、色々と寄り道して駅のそばのいつもの喫茶店に落ち着いた。

やっぱりここはいいなぁ。紅茶が美味しくて落ち着く。そしてケーキも美味しい。

どうしようかな…。ケーキ頼んじゃおっかな…?


「それにしても、学園で魔法がつかえないってびっくりするほど不便だったわー。」


うへぇ、と由紀がテーブルに突っ伏している。

誘惑を振り切ってメニュー表を元に戻す。

私も頬杖をつきながら同意する。


「そうだね…。普段意識してないところで結構魔法に頼ってたんだね。階段からジャンプしたらあんなに足に負担掛かるなんて思わなかった。飛び降りたのが三段程度でよかったよ。」

「そもそもなんで飛び降りたのさ?パンツ見えるよ。」

「いや、移動教室なのに教科書を置いてきちゃったから、慌てて取りに行ってたの。」

「テスト返しって明日まででしょ?明日一日、今日みたいに魔具つけてなきゃならないんだろうね?」


はーやだやだ、と体いっぱいに表現する由紀にちょっと笑ってしまった。

全部余計なことをした、他校の学生のせいなのだ。


ちなみにネットのニュースでも、このことが既に記事になっていた。

学生掲示板や広報でも話題になっている。学園で一時的にとはいえ、魔法禁止の措置が取られたのは大きかったらしい。

一部では、体調を崩して早退した生徒もいるなど、問題も生じているようだ。

次からのテストはどうする気だろう…?先生達も様々な対応に追われているようで、今日と明日はなるべくさっさと帰宅して欲しいらしく、部活動や委員会も休みになっていたので、ほとんどの生徒が早々に学園を出ることになった。

おかげで駅までのあちこちが学生まみれで、電車もラッシュのようだった。ちなみに校門を出た先で待機していた風紀委員によって、魔具は回収された。

予想通り、魔具は校門を出ると元のゴムバンドのような材質に戻り、簡単に外すことが出来た。

ついでに言えば、魔具から解放された喜びで、校門前で盛大に魔法を使った馬鹿な学生が、風紀委員に取り押さえられていた。そのせいで余計にごたついたのは、本当にいい迷惑だった。

明日もまた、点呼と魔具の支給で校門前で待たされるのかと思うと気がめいる。



翌日も案の定、校門前で待たされた。

魔具をつけたくないとごねる生徒もいて、風紀委員も大変そうだった。

そういえばこの件には生徒会は何か関わっているのだろうか?表だって先生と一緒に動いているのは風紀委員会だけれど。

他の委員と違って、風紀委員は若干生徒会とは別の勢力みたいなところがあるからなぁ…。

副会長に聞いてみようかな…?

そういえば、お礼言わないと。でも忙しいかなぁ?メールしておこう。

休み時間にメールを送ってみた。


『今日は勉強室にいっても大丈夫でしょうか?』


お昼に副会長からメールが返ってきた。


『無理だ。』


あら、そっけない。私が眼鏡関連の話題を出さなければ、基本的にメールでは丁寧なのに…。どうやら忙しいらしい。直接関与してないだけで、生徒会も色々大変なのだろう。

思えば昨日は、副会長からメールが来なかった。

電話でご褒美のやり取りをした後からのテスト中は、夜に一時間程副会長とメールのやり取りをしていたのに。思えば、わりとくだらない質問や世間話にも、副会長はノリよく返事をくれた。

『眼鏡ー!!ヽ(゜∀゜ヽ 三 ノ゜∀゜)ノ』と送ったら『Σ(゜∀´(┗┐ヽ(・∀・ )ノ』と返ってきたときは、おもわず笑ってしまった。あの人顔文字使えるんだ。その後『眼鏡でなら蹴ってください。』と送ったら『むしろ眼鏡に蹴られてしまえばいいのに…。近寄らないでください。』と返ってきた。

副会長とのメールは返しが面白いので、結構楽しみにしていたのに…。

ちなみに検証してみたところ、絵文字を使っても、絵文字で返してくれるようなことはなかった。いったい何を検証しているんだ私…。

さすがに副会長相手に、ハートマークを送りつける勇気はなかったのでやってない。由紀相手に送りつけたら、ハートを破って返してきたし。

……私のメール相手、みんな私に手厳しいな。いや、もちろん愛があるのはわかってるんだけどさ。


…話が脱線した気がする。何の話だっけ?


そんなこんなで、今日も由紀と一緒に帰った。

二人で明日のデートの待ち合わせ時間などを確認して別れた。

家に帰ってきて寝る時間になっても、副会長からメールはなかった。

テストのお礼も早めに言っておきたいし、ペンネともちゃんとお別れをしたい。メールか電話してみようかな…?

けどもしかして忙しかったりしたら、煩わしいかもしれない。

月曜日に時間があれば、直接会って言おうかな?もし副会長が忙しそうなら、メールでお礼言えばいいか。

私は明日の由紀とのデートを楽しみに眠りについた。

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