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第九話 俺は最後には勝つ男だ

俺は最後には勝つ男だ


俺の迫力に魔法使いたちがみんな揃って退散した頃、俺たちは行動を起こそうと作戦を立てていた。

「そうだ、お前の名前ってなんていうんだ?」

俺がマモンとの契約者にしてかなり可愛い女の子に聞いてみた。

「え? 私はマモンだよ?」

あれ? いつもと口調が違いやしないか?

「違う違う。お前のホントの名前だよ」

少女は顔を赤らめ恥ずかしそうに足をもじもじさせている。

「わ、笑わない?」

上目遣いで聞いてくる少女。これはこれで可愛いんだよな。

「笑う? なんで名前で笑えるんだ?」

それこそおかしいだろ。なんで名前で笑えるんだ?

「わ、私はエリミア。みんなマモンって呼んでるけど昔はエリーって呼ばれてた」

エリーか。なかなかいい名前じゃないか。

「じゃあ、改めてよろしくなエリー」

ボンッと白い湯気を上げながら真っ赤な顔で頷くエリー。

なんだ? どうかしたのか? まあ、いいか。

「さて、作戦だがエリー。お前は高位魔術が出来ないのか?」

エリーは首を横に振る。

「ううん、高位魔術の記された本さえあれば使えるわ。でも、詠唱は長いし安定させるので精一杯で相手の攻撃は避けられないわ」

そうか。まあ、そんなんだろうと思っていたけどな。

「まあいい。なら、作戦はこうだ。まず俺がサタンに一人でぶつかって――」

「待って、忘れたの? あなたは――」

「ああ、だから俺がやるんだ。俺がやらなきゃいけないんだよ、これは。」

俺が真剣な目で言うとエリーは負けたと言わんばかりの顔で続きを聞こうとする。

「で、俺がサタンと戦っている最中にお前は詠唱を開始する。その時お前は京子に守ってもらう」

「な、なんで私がこんな弱い奴に守ってもらわなきゃいけないわけ?」

とても嫌そうな顔をして俺に食いつくエリー。

「でも、そうしなきゃサタンには勝てないぞ?」

俺が言うとエリーは渋々下がった。サタンの強さを知っているのは俺だけじゃない、こいつもなんだ。魔術師だからじゃない。たぶん、オーラで感じ取ったんだこいつには勝てないって。

「大丈夫だ。俺は勝つから、お前はサポートに入ってくれ。俺だって勝機ないのに戦うような馬鹿な真似はしねぇよ」

まだ、エリーは了承してくれない。

それもそうだよな。なにせ、目の前で親を殺されたんだから。

「俺はあいつを許せないんだ。仲間を殺したあいつだけは」

俺は静かに言った。心の中では燃え立つ炎が今にも噴火しそうなのをどうにか抑えながら。

「……わかったわ。死なないでね」

うつむきながらエリーは言う。

それを俺はエリーの頭に手を乗せわしゃわしゃとかき乱す。

「大丈夫さ。俺はこの世界で、いや、すべての修羅神仏を倒すまでやられるわけには行かないらしいからな」

俺は京子の方を向いた。

お前の記憶もかかってるしな。負けられねぇよ、この戦いは。

「さ、そうと決まれば行動開始だ」


俺たちは作戦通りに分かれた。

俺はサタンと戦ったあの塔へ。

京子、エリーは魔道書ならぬ物が存在する書庫へ。

俺は現在、塔の根元にいた。

「はあ、なんだろうな。この震えは」

俺は無意識に体の震えに震えていた。

これが負けににはつきものの恐怖ってやつなのか?

いや、今はそんなこと関係ないか。俺は勝たなくちゃならない。さらに強い奴と戦うために俺に相応しい『ライバル』を見つけるために。

「こんな震えは震えじゃねぇ!」

俺は駆け出した。塔の中へ。サタンがいることを信じて。

さっきまでいたのに懐かしいと言いたくなるような階段をジャンプではなく普通に上がっていく。

1756段で階段は終わりを告げた。

そこにはやはり奴――サタンがいた。

薄暗い空の下、不敵な笑みを浮かべながらやつは中心に立っていたのだ。

「よう、待ってたよ。テメェみたいのが早々に死ぬとは思えねぇからなぁ」

率直に言うとサタンは最初に会ったときとは口調、いや、その中身すらもが違う気がしてきた。

「お前も感じ取ってるんだろう? 俺が変わってるってことをよぉ?」

サタンの笑みが最高潮まで満たす。

「お前は……魔王サタンなのか?」

ふへぇっと変な声を上げながら笑うサタン。

「やっぱりお前にはわかるんだなぁ。俺が変わっているってことが」

サタンは嬉しそうに言う。何がそんなに嬉しんだ?

「オラァよぉ。変わっても誰も気づかれなかったんだ。元が強いからな、こいつは。だが、俺を認識できる奴が今、目の前に現れたよ。こんなに嬉しいことはないね! さあ、始めようぜ。お遊戯を」

こいつにとって戦いはお遊戯か。だがな、俺にはこの戦いこそ俺を強くする糧なんだ!

俺は両手に拳を作る。

「いいか。これはお遊戯じゃないぞ? これは俺がお前を倒して先に進むための戦いだ。お前には、魔王サタンには俺の踏み台になってもらう」

「はっはっは! 踏み台か!、できるものならやってみろ!」

俺はサタンに向かって駆け出した。

サタンは威風堂々と立ち尽くす。俺はそこに特大のストレートを打ち込む。

俺の拳はサタンの右頬にクリンヒットした。だが、サタンは立ち尽くしたままだ。

「この程度か?」

サタンがつまらなそうに聞いてくる。

「へ、化物かお前は」

実際目の前にいるのは化物なんだがつい言いたくなってしまう。

俺は右手を引き左手でボディーブローを放つ。

これもサタンにヒットする。だが、サタンはビクともしない。

「つまらんな。これなら最上級魔法使いの方がまだマシだぞ?」

クッ、ホントにこいつは化物かよ。俺の最高の一撃をビクともしないなんてありえないぞ。

俺はそれからも単発の攻撃を繰り返す。だがサタンは毎回つまらなさそうな顔をして言う『この程度か?』と。

「これなら、ルシファーの方がまだ強いな。やつめこんな雑魚をおいて死にやがってな」

死にやがって?

殺したんだろうがテメェが!

雑魚だって?

俺は雑魚じゃない!

「許さねぇ」

「あん? なんだって?」

「ルシファーはお前に殺されたんだ、お前に。それに俺は雑魚じゃない。お前だけは許さねぇ。他の誰もが許しても俺は絶対に許さねぇ」

俺の中に怒りという名の炎が燃え立つ。

こいつとの戦いで俺は恐怖を得た。だけど、それ以上に負けという悔しさを味わった。それは初めての味だ。とても苦い。この世の全てよりも苦かった。もうそんなのは嫌なんだ。それにこいつは俺の仲間を侮辱した。それは絶対に許せねぇ。

「こっからは本気で戦うよ」

俺の中に一つの打開策が生まれた。

俺はさっきまで単発しか打っていなかった。なら、連発ならどうなる? 威力は減るかもしれないがダメージは増えるんじゃないか?

俺は再びサタンに向かって駆け出した。そして、ストレートを放つ。

案の定ヒットした。だが、サタンは涼しい顔をしている。そこに俺は左ストレートを入れた。

「何!?」

思った通りだ。サタンは一発の攻撃は必ずと言っていいほど我慢できる。だが、連発は我慢ができないんだ。

俺の放った左ストレートはサタンの意表をついた攻撃となり顔面へ綺麗に決まった。

「舐めるなよ? 俺は仲間に助けられたらその恩は必ず返すんだよ」

まだ、俺の連発は終わらない。

倒れかけているサタンにボディーブローが炸裂する。

肩を掴み俺の方に寄せながら膝蹴りを入れる。

「グハッ!」

サタンが血を吐く。そのままサタンは地に伏せた。

「まだだ! サタン、今のはお前にとって対したダメージはないはずだ!」

地に伏せたサタンは笑いながら立ち上がる。

「はっはっは! そうだな、その通りだ。俺も本気をだそう。ここまでの敵は早々に出会えないぞ!」

望むところだ。俺は構えをとる。

そして、俺たちは同時に突進する。相手の右ストレートが俺の頬に、俺のボディーブローが相手の腹に、そんなことを繰り返し始めた。


その頃、京子、エリーの方では書物から最上級魔道書を手に入れたところだった。

「えーっと、その古ぼけたのがそうですか?」

京子が埃まみれの中でゲホゲホと咳き込みながら聞く。

「うん。これがあれば最上級魔法が使えるわ」

エリーは嬉しそうに微笑みながら飛び跳ねる。

「な、なら、早く屋上へ行きましょう。ここは埃っぽくて嫌いです」

エリーが頷くと屋上まで駆け出した。

屋上、遠くから何かが砕ける音がする。

「あれ、きっと信五のせいよね?」

「え、ええ」

ここから見てもわかる。なぜなら信五が向かった塔が本来あるべき形、否、もはや存在すらしていないのだから。

「そこまでヒートアップしてるってことよね? じゃあ、私も準備をしないと」

エリーは魔道書をペラペラと開く。

「エリーさんは何も気にせず詠唱に集中して下さいね。あなたは私が守りますから」

ムスっとした顔をしエリーは頷く。

「じゃあ、始めるわよ。天と地を生みし神、母なる海を守りし神、冥界を守りし神それらを糧とし我らは唱えよう、この詩を――」


「へ、魔法使いが肉弾戦かよ。ゲームとはかなり違うな」

俺とサタンはかれこれ三十分間も殴り合いを続けていた。

そのせいで塔は半壊を超え全壊となっている。

俺は荒い息を整えようを試みるがどうやら収まるまでかなりの時間を要するようだ。

「はっ! ゲームの魔王は魔法だけ使うのか?」

それもそうだな。ゲームでは魔王はどちらかというと肉弾戦か。

「なら、俺は魔王を倒す勇者だな」

「勇者が必ず勝つという確証はどこにもないがな」

両者皮肉を言いながら次を行動を考える。

先に行動を起こしたのは俺だった。

ローキックを放ち、そのままの勢いで後ろ回し蹴りを放つ。

ローキックの方は当たるが後ろ回し蹴りの方はサタンが素手で掴む。

俺は掴まれた足を持ち上げられ宙に浮く。サタンはそのまま地面へを叩きつける。

俺は叩きつけられながらもかかと落としのモーションに入る。

だが、かかと落としはサタンの腕でガッチリとガードされ逆にストレートを食らってしまう。

まだか。まだ詠唱は終わらないのか。

「クッ、なかなかやるじゃないか」

「テメェもなぁ」

すると空に京子が現れる。

合図だ。詠唱が終わったと合図が来た。

「なぜ、あそこに女が!」

驚いているサタンをさておき俺は京子がいる場所までジャンプした。

「クソッ! そういうことか!」

サタンも気づいたらしく俺の足を掴みにかかった。

だが、俺はサタンの手に捕まる前にサタンの肩で再度ジャンプした。

「お、俺を踏み台にしただと!?」

肩でジャンプされたサタンは地面まで一直線だった。

「信五さん!」

俺の手を掴み京子が俺の名を叫ぶ。

「京子! もっと高くだ、もっと高く飛べ!」

京子は頷くと高度を上げた。

「行け! お前の全てをサタンのぶつけろ、エリー!」

俺は遠くに待機しているエリーに向かって聞こえないであろうが叫んだ。

遠くでエリーが頷いたように見えた瞬間特大の炎の玉『太陽』が飛んでくる。

「「「いっけぇぇぇぇぇえええええええええ!!!!!!」」」

俺、京子、そして遠くからエリーの三人の声が重なる。

特大の炎を避けられるわけもなくサタンは炎の中に飲まれていく。

あたりの森も巻き込み炎の玉は大爆発を起こした。

俺は京子に掴まりながらその光景を静かに見届けた。

「サタン……勇者はひとりじゃない。ちゃんと仲間がいるんだよ。お前の敗因は仲間の強さを甘く見たことだ」

炎の玉が落ちたところは火事となっていてその中心ではサタンであろう人影が力なく倒れていた。

魔法使いって使いようによってはうっひっひ♪


ということで書き終わりました第九話!

いやぁ、サタンが強くてどうやって倒そうか試行錯誤してたらまさかの二日経ってました!


うんうん。仲間って大切だよねぇ。

一人より二人、二人より三人ってよく言いますもんね♪


てことで、なんだかんだで魔法使い編が終了致しました!

ってことは今度は新しい敵を用意しないといけないのか!?

ま、まあ、考えてあるんだけどねぇ(疑)


見てくださった皆様、これからもこの作品をよろしくお願い致します。

では、お暇させていただきます。

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