第七話 俺は仲間のために行動を起こします
俺は仲間のために行動を起こします
俺が出した三つの条件を半ば強引にOKさせた俺はルシファーを仲間にしてついでに情報も手に入れた。
「で? どうするんですか、信五さん」
京子が横で心配そうに見て言ってくる。
「決まってんだろ。行くぜ、魔王を倒しに、仲間を助けにな」
俺の口元から笑みが漏れるのが自分でもわかる。
楽しそうだ。
そんな気持ちが俺の中を駆け巡る。全身をそんな感情でいっぱいだ。
「なんか燃えてませんか、信五さん? もしかして、助けるより魔王の方に興味があったりして……あはは、まさかねぇ」
俺は何も言わない。だって、その通りだもん。
京子は俺の真意に気づいたかいなか肩を落としうなだれた。
「信五さん、あなた魔王の強さ忘れたんですか? 信五さんだって恐れて逃げたじゃありませんか」
だからでもある。
だから、俺はまたあいつとやりたい。戦いたいんだ。この前のカリを返すためにも。
「行くぞ」
「もう魔王のところにですか?」
何を考えてるんだ、こいつは。先に仲間だろう、そこは。
「違う違う、先にあの女だ」
そうですよねぇと京子は言いながら俺についてくる。
「ルシファーによるとあいつはあの塔にいるみたいだな」
京子は首を縦に振って答える。
「でも、あんなに高いところまで登るんですか? なんか大変そうですね」
しみじみと感想を言いながらああもうメンドくせぇといった顔をしている。
「めんどいなら来なくてもいいぞ?」
俺がそう言うと京子は今来た薄暗い森の方を見た。
カラスの声と同時に俺の方に振り返り言った。
「いえ! 今日はなんだかたくさん歩きたい感じです」
「そっか。じゃあ、行くぞ」
俺たちは目の前に立ちはだかる塔の中に入った。
中は蜘蛛の巣や埃ばかりで異様に息がしづらい。
「ここは手入れってものを知らないんでしょうか。どうやったらこんなに汚せるのか不思議ですよ、まったく」
まったくもってその通りだ。なんて汚いとこなんだ、ここは。
辺りを見ると特に何があるわけでもなく、あるのは上に続く階段だけだ。
階段は俺たちを囲むようにあり、とても長い。
「こ、これを登るんですか!?」
京子は感嘆の声をあげながら俺に訴えてくる。
「さすがにこれを登ってると時間がかかるな。行くぞ、京子」
え? ええ? と声をあげる京子。
当然だ。俺が京子をお姫様抱っこし、何もないかのように立っているのだから。
「なな何するんですか!? お、降ろしてくださいよぉ!」
俺は京子にニコッと微笑むと言った。
「飛ぶぞ」
「はい?」
俺は困惑する京子を放っておき階段に向かって思いっきりジャンプした。
「え? も、もしかして信五さん、このままジャンプで階段を上がろうと思ってませんよね? そうですよね? そうなんですよね!?」
「大当たり~行くぜ!」
俺は勢いをつけて階段をジャンプで登り始める。
「ちちちちょっと待ってェェェェェエエエエエエ!!!!!!!」
「待たん!!」
俺は泣き叫ぶ京子にそう告げるとどんどん登っていく。
それから何十回かそんなことを続けると屋上が見えてきた。
「ほれ! 最後のジャァァァァアアアアアンプ!!!」
ドスンと音を立てながら着地した俺たちは(京子は泡を吹いて気絶している)ベルゼブブを探して周りを見る。
だが、そこにはベルゼブブはいなかった。いたのは俺たちの探していた美少女だった。
「な、によ。あんたたちホントに来たの?」
血まみれで十字架に縛られてる少女は皮肉気味なことを吐く。
「なんだ。案外元気そうじゃねぇか」
ふんっと少女はそっぽを向いてしまった。
「いやいや、餓鬼が増えたなここも」
聞き覚えのある声だ。
この声は確か美少女を連れ去った声じゃなかったか?
いや、絶対そうだ。
「で? 何をしに来たのかな?」
殺気だ。
言葉と同時に猛烈な殺気が辺りを包む。
だが不思議だ。俺の体がその殺気に反応でもしているかのように全身のすべての細胞が震える。喜んでいるのか?
俺の体がこいつみたいな強い奴に会えて喜んでいるのか?
「てめぇをぶちのめすんだよ!」
俺は振り返った。
だが、俺の目の前には誰もいなかった。
「ちっ! またこのパターンかよ!」
どこだ! どこにいる!
「ハハハ!! 見つけられないか! そうだろうな! ハハハ!!」
チクショウ! 見つけられない! いるとしたら目の前をブンブン飛んでるハエだけだ。
「ん?」
待てよ?
ベルゼブブっていうのは確かハエの王じゃなかったか?
てことは……
「お前がベルゼブブか?」
俺はハエに向かって聞いてみた。
「まままままさか! そそそそそんなことあるわけ無いじゃないか!」
動揺しすぎだろ!
てか、なんだよ、蝿の王様って。そのままじゃん!
「いっぺん死んでみろ!」
俺は両手で目の前のハエを叩き潰した。
「ぐはっ」
なんか、あっけねぇ。
「てか、なんでこんなのにビビってたわけ、お前」
俺は振り向きながら聞くと少女のとなりにはサタンがいた。
「あ~らら、ベルゼブブも倒れたか~、まあ、いいかな~、だって、結局僕がいれば魔法使いは最強なわけだし」
ニコッと笑いながら言っているが嘘ではないらしい。
なぜならサタンから漏れる殺気が尋常ではないのだ。
「ルシファーは君の仲間、ベルゼブブは君が叩き潰した。まだ、幹部はいるけど勝てないだろうね~ だって君強いんだもん」
サタンから笑顔が取れない。いや、それともあれが真顔なのか?
「はは、それにしては余裕そうじゃないかよ」
俺は苦笑いをしながら皮肉を言う。
「それは君が弱いと気づいたからさ。君は僕にどうやっても勝てないね~ なんなら賭けてもいいよ~」
勝てないだと?
ふざけんな! 俺が勝てない相手いないんだよ!
「いいぜ、来いよ。俺はテメェを叩き潰してそいつを助ける」
握りこぶしを前に突き出し言い放つ。
「だ、ダメよ! 逃げて!」
サタンに口を抑えられていた少女がどうにか一瞬だけ口から手を外し叫んだ。
「黙ってろよ。今からいい気分になるところなんだからよ」
サタンの口調が変わった。ついでに殺気の大きさまで変わりやがった。
「そうだぜ。俺がこいつを叩き潰すまで待ってろよ」
「そりゃあ、楽しみだ!」
言い残すとサタンは目の前から消えた。
「って、また消えるのかよ!」
それは理不尽ってもんだぜ!
俺の後ろから殺気を感じた。俺は咄嗟にしゃがむと俺の首をあった場所に手刀が横切った。
「あっぶねぇ! テメェ! 殺す気か!」
ニッと笑うと再び手刀で今度は俺の体を両断するかのように手刀を放った。
「クソッ!」
殺すってことかよ!
俺は横に飛ぶと俺がいた場所に綺麗に手刀の輪郭が描かれる。
「ほらほらどうしたよ! こんなもんかよ、てめぇは!」
それからも幾度となく手刀の嵐を寸前で躱しながらチャンスを狙ってみるがチャンスが一向に現れない。
俺の肩から腰に向かって斜めに放たれるであろう手刀を躱そうとしたら当たる寸前で手刀を引き蹴りのモーションに切り替わった。
「フェイントか!」
避けてしまっている体はその蹴りに反応できるわけもなく腰を蹴られる。
「グッ!」
俺は飛ばされながらも倒れないようにバランスを取ろうとするがそれも虚しくサタンは消え次に現れたのは俺が落ちるであろう場所で蹴りの準備に入っている。
俺は何もできずただ蹴られてしまった。しかもさっき蹴られた場所を一寸のズレもなく正確に蹴られた。
「グハッ!」
俺の腰に激痛が走る。足が動かない。
「く、クソッ」
動け、動けよ!
サタンは今までにないくらいのニヤ顔で近づいてくる。
「逃げないのか? 死んじまうぜ?」
サタンは俺が逃げられないことを知っていながら聞いてくる。
「逃げないのか、まあ、いいや。……死ぬか?」
サタンのニヤニヤが最高潮に満ちる。
死ぬのか?
俺が?
負けるのか?
俺が?
「クソッ、タレェ」
体が動かない。動かせない。
サタンは手をあげる。次には手刀が飛んでくるだろう。
俺は負けたのだ。まあ、もともとそういうのを探すのが目的だったがこんなやつに負けたくない!
「逝けよ」
手刀が放たれた。
だが、刃は俺まで届かない。
「何!?」
「お、お前……なんで」
手刀を受けたのはルシファーだった。
「逃げなさい。君にはまだ早かったのだよ」
ルシファーはそう言い残すと力なく倒れた。
「おい、おい! なんだよそれ! テメェ!」
俺はルシファーに向かって叫んだ。だが、聞こえてはいないだろう。
「マモン、いや、私の娘よ。すまなかった。こんな父親を許しておくれ」
ルシファーは血を吐きながら意識をなくした。
「チッ、ルシファーめ、こんなところで無駄な命の使い方をしやがって。まあ、雑魚だからいいかな。さて、続きを始めますか」
サタンは何もなかったかのようにまた手を挙げて手刀の準備だ。
「信五さん、今は退却です」
「お、おい! 京子何しやがる!」
京子は俺を持ち上げて塔のてっぺんから飛び降りる。
「き、京子、なんで飛び降りた!」
「え? ええーっと、な、なんとなくです!」
ちなみに高さは百階の高層ビルと同じ高さだ。
「どどど、どうすんだよ!」
「な、なんとかしてくださ~い!」
なんかこの頃高いとこから落ちることが多い気がする。
「京子! テメェェェェェエエエエエエエエエ!!!!!!!!」