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第五話 俺は倒した敵は仲間だと思ってる

俺は倒した敵は仲間だと思ってる


「だから、あなた本当に人間なの?」

そう聞いてくる少女に俺はしばし考え、まとまったところで手を差し出して言った。

「俺以外にこんなにハキハキした人間はいないと思うがな」

少女は呆れながらも俺の手を取り立ち上がろうとしていたとき辺りから声が聞こえた。

『情けないな、マモンよ。人間ごときに苦戦、いや敗北するとはな』

声からして十代、二十代といったくらいだろう。

その声はまだ続く。

『マモンよ、人間に敗北しろと誰が命じた? 否だ。誰も命じてはいないぞ。私の命令はただ一つそこの餓鬼を殺せと言ったんだ。だがどうだ? お前はあっけなく負け、手加減までしてもらってる立場だと? これは裏切りだ。魔法使いの掟への裏切りだぞ』

少女を見ると震えている。恐れているんだ。だが何に?

魔法使いの掟か?

この声の人物か?

それともその両方か?

そんなのは今はどうでもいい。今はこの声が一体誰で俺の敵かどうかの判断が先だ。

「おい! 誰だテメェ! 姿を現したらどうだ!!」

ここは見晴らしのいい公園の真ん中だ。隠れられるところなんてない。

ならどうやってこの声は俺達の耳まで届いてる?

『威勢のいい餓鬼だ。だがな、その威勢が今後通じるかというと否だ。なぜなら私こそがこの世界のトップになるのだからな』

何を言ってやがるこのやろう! 戦いもせずに自分がトップだと? ふざけるな!

「姿も見せられねぇのか、おい! さっさと出てこいや!!」

俺の中に鬱憤だけが膨らんでいく。

『今の貴様に用はない。今はこの裏切り者への刑罰を会議せねばならないのでな。行くぞ、マモンよ』

未だに震えている少女に青年の声はとてもクリアにそしてはっきりと聞こえただろう。これはお前への死刑宣告だ、と。

「ま、待って、ください。わ、私は力の差を見誤っただけです! どうか、罰だけは!」

少女の声を聞くやいなや青年のいやらしい笑いだけが響く。

『見誤った? 力の差をか? 違うな。お前は見誤ったのではない。全力を出さなければ負けると私は言ったはずだ。それも命令の中に入っていたはずだがな』

「なっ……」

少女は目を見開き、涙を浮かべ絶句する。

何を話しているのかわからんが今、この少女を助けないといけないってことだけはわかったよ。

「おい、勝手に連れて行こうとすんなよ」

『なんだと? 貴様、私の邪魔をしようというのか?』

邪魔だと? それはお前だろう?

「違うな、こいつはたった今から俺の仲間になったんだよ。俺がそう決めた」

青年の疑問の声が上がる。

『敵を仲間にするのか? それは後に自分の首を絞めるかもしれん行為だぞ?』

そうかもしれないけどな、俺がそう決めたんだ、誰にも口出しはさせねぇよ。

「それにこんな美少女を簡単に手放すのは男として無理だな」

俺は少女の方を見る。まだ震えている。いや、増したか? まあいいだろう。

『そうか、なら私がここで貴様を完膚なきまでに叩き潰してやろう』

そう言うと同時に辺り全域から異常なまでの殺気が立ち上る。

これがこの声の主の力なのか!!

太陽が出ているのもかかわらず辺りが暗くなっているかのような感覚に陥る。

『ははは! どうだ! 怖いか! 人間なら当然だ! 恐怖に堕ちろ、餓鬼ぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいい!!!!!!!』

地震が起こる。プレートにヒビが入るんじゃないかと思ってしまう。

勝てない。そう確信した。まだ、敵を認識できればわからないが認識できない以上攻撃だって空振りになる可能性が出る。

俺は上下左右三百六十度見渡すが認識できない。

俺が困っていると助けるかのように声が上がる。

「……待って」

声の主はさっきまで震えてた少女だ。

『なんの真似だ、マモン』

少女は足が震えながらも必死で立つ。

「私を連れて行く代わりにこの人を助けてくれませんか?」

少女の提案はあまりにも無謀だ。それじゃあお前が不幸になるじゃないか。

『……』

青年はしばし考え結果にたどり着いたみたいだ。

『いいだろう。お前を連れて行く代わりにこの餓鬼を助けてやろう。だが、今回だけだ。次はないと思え』

青年は堂々と言うと殺気を消した。

すると少女は何もないところに真っ直ぐにブレずに歩く。瞬間、空間に亀裂が入り少女はその中に入っていく。

「待て、待てよ!」

少女は一瞬止まったがすぐに歩き出す。

「クソッ! 会ったばかりだけど、俺たちは一緒に戦ったライバルじゃないか! なんでいなくなろうとするんだよ! 待てよ! 待てよぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!!!!」

亀裂は塞がり公園には俺の声だけが響く。

まだ、あいつの名前も聞いてないんだぞ!

足だってちゃんと見てない。てか、エッチな部分は戦闘中に破れて見えるかと思ったら遠距離だったし! つーか、あんな美少女はなかなかお目にかかれないってのにきっとさっきの青年は帰ってからあいつにピーしたりピーしたりするんだ! そうに違いない!

「クソッ! クソッ! クソォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」

「何をそんなに叫んでいるんですか、信五さんは」

そこに何も知らない少女、京子が現れた。


俺はさっきまでの出来事を全て話した。

「それは大変でしたねぇ」

まるで人事だ。

「アイツ可愛かったよなぁ。くうぅ、もうちょっと見てけば……」

ジトっとした視線を感じ京子の方を見た。

「信五さんてエッチな人だったんですね」

興味なさそうに聞こえるが目は本気だった。痛い視線を感じる。

「そうじゃない。ライバルが変な奴に触られるのが嫌なだけだ」

俺は本音を言う。言っているはずだよな?

「なら、いいんですけどねぇ」

道の途中で買ったアイスを食べながら京子は言ってくる。

「なあ、あいつを助けに行けないか?」

京子は少し考え何か思いついたのか俺の方を見る。

「それなら、安心してください。もう、私たちは魔法使いの皆さんに狙われる対象になっているはずです」

なぜ、そんなことがわかる?

「どうせ、理解できないでしょうから言いますがたぶん先の戦いは小手調べでしょう。それが終わったらあなたならどうしますか、信五さん?」

俺なら――

「俺なら、もっと強い奴――そうか! つまり俺のところにもっと強い奴が来るわけか!」

京子はやっと分かりましたかと言わんばかりの顔でやれやれと首を振っている。

「それはそうと気づいてるか?」

京子はハテナマークを頭に浮かべ首を傾げている。

「早速お出ましのようだぜ? その魔法使いさんたちがよ!」

俺は京子を担いで走った。

もう、公園は使えない。先の戦いで魔法使いってのは遠距離が得意だそうだからな。俺は走りながら近くにあった廃ビルの方に潜り込んだ。

「ここなら、今度は俺らしく戦えそうだな」

俺は辺りを見回し見えているものの構造を瞬時に記憶する。

「京子、危ないから俺から離れるなよ?」

「それは無理な話ですよ! 私、あなたみたいに早く走れないですもん!!」

それもそうか。じゃあ、どうするか。

「いいです! 自分の身は自分で守ります!」

そう言うと京子は何やら唱え始めた。

それなら無視して戦いに集中しますか。

「貴様に恨みはないが私たちの目的のために死んでもらう」

在り来りなセリフを口にする男。

敵は見る限り二人か。俺を甘く見てもらっちゃあ困るぜ。

「増援は呼ばないのか? 今なら待ってやらなくもないぞ?」

俺は不敵な笑みを浮かべる。

「何を言うか! 私たちは先の戦いで戦った魔女の上のクラスの魔法使いだぞ! その減らず口を今すぐ閉ざしてくれるわ!」

男の片方が杖をあげる。

「時間がないんだ! さっさとさっきの美少女が連れて行かれた場所まで連れてけや!」

俺は魔法なんてお構いなしに突っ込む。

「火よやつを食い止めろ!」

突進している目の前に炎の壁が作られる。だが、俺は回り道をするほど器用じゃないんだ! さっさと通してもらおうか!

俺は炎の壁に突っ込み粉砕する。

「ば、馬鹿な! なぜ人間にこれほどまでの力が備えられている!」

魔法使いが驚いているが構わず俺は右手を振りかぶる。

「そこどけや、このクソがぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!!!!!」

俺の右ストレートが魔法使いの顔面にクーンヒットした。

男は頭を中心とし何十回も回転しながら廃ビルに衝突した。

廃ビルは無残にも男と一緒に崩れ去った。

俺はそのままもう片方の魔法使いを見た。

「お前も飛ぶか?」

男は笑いながら拍手をする。

「いや~ 参ったねぇ、こりゃ。正直ここまでの人間は初めてだ。まさか中級クラスを一撃とはねぇ。いやいや、参った参った」

戦う気はなさそうだ。俺が構えを緩めると次の瞬間背筋が凍るような言葉を発した。

「ここまでとなると僕が本気で潰さなくちゃいけないじゃないか~」

殺気だけで体が硬直しそうだ。もしかしたらさっきの青年よりも高い。いや、確実に超えている。何もんだコイツは?

「僕の名はアルゴロール・リッチ、サタンの契約者さ」

無邪気な笑顔でとんでもない事を言う。

サタンだと!? 魔界の王様がなんでこんなところに!

「いや~、ベルフェゴールから変な人間がいると聞いたから簡易転移をしたらホントにいたよ~。でも、僕の力を一割も出さないうちに硬直しちゃうくらいなんて思わなかったな~。もうちょっと強いと思ったのに……残念だ」

最後の一言が目の前の男の声だとは思えなかった。まるで誰かが一瞬だけ乗り移った感じさえする。

「ごめんね~。サタンって強力過ぎてたまに僕の意識を強制的に渋めちゃうことがあるんだよ~。でも安心して~。僕この街好きだから簡単には壊さないよ~一人だけ人間を残して鬼ごっこするんだ~。見つかったらこの街と一緒に消滅してもらうって条件付きで~」

く、狂ってやがる。

こうしてる間にもさっきの美少女は! そうじゃない! 今俺が置かれてる状況は最悪だ。魔王の目の前にいてしかもこの町を消すつもりらしい。そんな中俺ができる最高の策は……

「京子! 魔法使いの世界に俺とお前を飛ばせ!」

京子は意味がわからないと言った顔で俺を見る。

「え? それって、相手の本拠地に行くってことですか?」

「そうだ! 早くしろ!」

京子は言われた通りに空間に亀裂を入れた。

「あ、繋ぐところ間違えた」

「早くしろぉぉぉぉぉぉぉっぉおぉぉぉおっぉおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」

亀裂を入れ直した中に俺と京子は飛び込んだ。


いや~、最強の人間と最弱の神様も皆様のおかげで五話まで書ききることが出来ました!!


本当にありがとうございます!


今回はコメディの部分が少ないと思いましたが(いつもそんなに多くはないだろ!)これはこれでしょうがないかと思い書いてみました。

先程も言いましたがコメディの部分が少なかったかと思ったので次話ではコメディの部分を増やしたいと思います!


最強の人間と最弱の神様をこれからもよろしくお願いします!

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