第二十七話 俺は最強になります
俺は最強になります
「なん、で京、子がここ、に」
俺は必死に問いかけた。なんでだ。なんで京子がここにいるんだよ。お前は時間を止められて動けないんじゃないのかよ。
「信五さん。私思い出しました。全部ではありませんが思い出しましたよ」
ニッコリと笑いながら京子は俺を見る。その顔は笑っているのにかわいそうに見える。悲しそうに見えるのだ。
「その人は死んではいけない人。この世とあの世をそして神にも害を成す人。そして、同時にその人は世界を変えられるだけの力を持つ人です」
俺はそんなに大層な人じゃない。
「そんな奴が私に負けるのか? お前の人違いだ」
そうだ。俺はここで負けて死んでしまうやつなんだ。
「いいえ。それは違います。信五さん、あなたはまだ力をセーブしている。死にかけてるのにその力を使おうともしないのはなぜですか?」
俺に残された力はない。俺は全力で戦ったんだよ。
「答えないじゃないか。やはりお前の読み違いらしいな。殺させてもらう」
「待ちなさい! 信五さん! あなたはこんなところで負けてしまう人だったんですか! あなたはもっと強い人と戦いとは思わないんですか! いつもの信五さんならこんな状況笑って覆してきたじゃないですか!」
京子が必死に叫ぶ。
うるせぇよ。俺はそんなに強い奴じゃないんだ。俺は……。
「この男は放っておいても大丈夫か。女神。お前から殺させてもらう」
バルムンクの矛先は俺から京子に切り替わりジークフリートは京子目掛けて走り出した。
ダメだ。逃げろ京子。俺は、俺はお前を守れない。
――なら、無視するのか?
そうじゃない。俺はあいつを助けたいだけなんだ。
――言葉が矛盾してるな。お前は何がしたい?
俺は守りたい。京子を守りたい。
――それだけか?
俺は……
「全てを守るってちびの頃に約束したんだ。俺は俺自身と約束したんだ」
そうだ。
俺はちびの頃そう約束したじゃないか。決意したじゃないか!
「なんで俺は忘れていたんだろうな。俺が強くなったのはそのためじゃないか」
なら、なんで寝ている。
目の前に俺が立つと信じてくれる人がいる。勝ってくれるとバカみたいに信じてる奴がいる。俺はそれに答えなきゃダメだろ!
「なぜ、立てる」
ああ、俺も不思議さ。さっきまで力を入れたって動けなかったのに今はすっと立てたよ。
「クッ! この女神せいか!」
ジークフリートが京子に剣を振りかぶる。
「やめろ!」
俺の殺気のこもった叫びは洞窟を駆け巡る。
「な、に? 私が止められるだと!?」
俺はまだ自由の利かない足を必死に動かし京子ところまで歩く。
「やらせねぇ。そいつだけはやらせねぇ!」
体はボロボロだ。とても戦える状況じゃない。俺だって寝ていたかったさ。だけど、目の前で俺を呼ぶ声がある。まったくお節介だよ。これじゃあ、いつまで経っても負けられないな。
「信五さん」
京子は俺のところまで駆け寄り肩を貸す。
俺は京子に抱えられながらもジークフリートを睨む。
「京子、なんで来たんだ」
「なんでって言われても……その、私も必死だったんですよ! 信五さんがコテンパンにやられていたから」
京子は涙目になる。
「ったく、俺はひとりでも勝てたんだ。心配なんかすんじゃねぇ」
俺は京子の頭に手を乗せわしゃわしゃとかき乱した。
「ちょっとぉ、何するんですか!?」
ホント、お節介の塊だよお前は。こんな危ないところまで普通ついてくるか?
「なあ、お前だけでも逃げろ」
俺は真面目な顔で京子に言った。
勝ち目がない。あそこで立てたのはよかったが俺にはもう戦う力も逃げる力もない。
「信五さんも一緒に逃げましょうよ」
馬鹿かこいつは、この状況がわかってないな。逃げられるのは二人までなんだよ。サミラとお前しか逃げられないんだ。
「俺が囮になるからその間に――」
「嫌です! 信五さんも一緒じゃなきゃダメです! 私は、私はそのためにここに入ったのに」
それは叶わない夢だ。
俺は京子から離れ京子の背中を押す。
「行け。お前ならサミラを助けられる。俺は捨てていけ」
それが俺が選んだ選択だ。
だが、京子は諦めず俺に不意打ちをしてきた。
「お、お前……」
何抱きついてんだよ!
「嫌です。私は信五さんを助け為にここまで来たんです。それなのに助けられないなんて嫌です。私は信五さんを――」
「わかった。わかったから行けよ。大丈夫だ。俺は死なないから」
そう言って京子を剥がそうとすると京子はもっと強く抱きついてくる。
「私は、私は! ……私は信五さんのことをこんなにも――」
言い切ったみたいだが何を言っているのかわからなかった。気絶したのではない。俺と京子を中心に何か光りだしたのだ。
「こ、これは」
「り、リンクです! 信五さんと私がリンクしてます!」
リンク、そういえばサミラがエルランドとしたやつか。確か、力が湧き出てくるっていうやつだったらしい。
俺の中に力が湧いてきた。
「なんだよこれ」
「私の力が信五さんの方に移って行きます。倒してください信五さん。そして証明してください。私のパートナーは決して弱くない。最強だということを」
そういうと京子は俺から離れていった。
す、すげぇ。力が絶えず湧き出てきやがる。傷も怪我も完治してる。
「来いよ。ジークフリート。あんたが間違ってるってことを教えてやる」
ジークフリートは俺を睨み鬼の形相でこちらへ向かって来る。
「私に斬れないモノなどない!」
ジークフリートは俺の近くまで来るとバルムンクを振りかぶり掛け声と共に振り下ろした。
「効かねぇな」
俺は振り下ろされたバルムンクを片手で易々と掴みガードする。
そして、俺は空いていたもう一つの手で手刀を作りバルムンクに喰らわせる。
「なっ……」
バルムンクは見事に折れた。ジークフリートは自分が持っている柄を見て絶句している。
「これは素手の勝負だぜ? 剣なんて必要ないよな?」
俺はニヤつく。
ジークフリートは怒りで顔が怖い。
だが、そんな顔したってダメさ。お前は俺を本気にさせちまったんだから。
「京子が言った通りだ。俺はどうやら力を抑えていたらしい。まあ、まだ完全に引き出してるわけじゃないだろうが本気ってのは気持ちがいいな!」
俺はそう言ってジークフリートの腹筋にアッパーみたいなものを入れた。
ジークフリートは腹を押さえながら後ずさるが俺は攻撃をやめない。今度は脇腹にボディーブローを入れた。
「ブハッ!」
右に飛ぶジークフリートに俺はさっきとは反対の脇腹に今度は膝蹴りを入れる。
「グハッ!」
今度は頭にフックを、次に反対にフックを入れる。
連続で攻撃を放つ。俺の攻撃はどんどんスピードを増していく。
今では三発が一発の早さまで達した。
「うおぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!!」
最後にジークフリートの顔面に後ろ回し蹴りが炸裂する。
ジークフリートは吹っ飛び自分の城の城壁にめり込む。
「が……ぐ……ぐあ……」
ジークフリートのうめき声が聞こえた。
俺はジークフリートに近づき一言言ってやった。
「お前の肌は確かに甲羅みたいに硬かったよ。だけど鋼並みではなかったようだな」
ジークフリートはゆっくりと口を動かす。
「お前は、何者だ?」
またその質問か。
「俺は人間だ。少し強いだけのな」
ジークフリートはふっと笑い言葉を続ける。
「お前が、今回の犠牲者か。ふ、ふははは。私をここまで痛めつけたのはお前が初めてだ」
犠牲者? どういうことだ?
「こんな短期間でジークフリートを倒してしまうなんて驚きです。ですが、これもまた私の力でしょうか」
そこに現れたのはカイロスだった。
「カイロス。今度は一体何だ?」
俺はカイロスを睨む。
「私との戦闘は避けた方がいいと思いますよ? 相方があの状態では、ね」
俺が京子の方を見ると京子が倒れていた。
「京子!」
俺は京子のところまで駆け寄り京子を抱きかかえる。
「どうした!」
「し、信五さんがあまりにも力を使うのでつ、疲れちゃいましたよぉ」
な、なんだと!?
「り、リンクはパートナーの体力、筋力を共有する禁忌術。それを信五さんは使いまくってぇ。わ、私さすがに怒りますよ?」
荒い息をしながらも京子は笑顔を見せる。
「た、たく、お前はなんてやつだよ。心配しただろ」
えへへと笑いながら京子は俺の胸に顔をうずめた。
「お、おい」
するとスースーという可愛い寝息が聞こえた。
疲れて寝てしまったらしい。どんだけ心配をかける気だよ、こいつは。
「信五さん」
「カイロス。少し待ってくれ。京子を連れて行く。だけど少しだけコイツを寝かせてやってくれないか?」
カイロスは溜め息をつきながらも引き下がった。
「では、準備ができ次第呼んでください」
「ああ、わかった」
俺は返事をすると背後からの気配が消えた。カイロスは何処かへ行ったらしい。
「俺にはどうやら京子、お前が必要らしい。有無を言わずついてこい」
寝ている京子に俺は優しく語りかけた。
すると京子の口元が笑った気がした。
俺は堪らず微笑み京子の髪を撫でたのだった。
信五と京子の初リンクおめでとうございます!
いやぁーなんかここんとこラブコメ的な展開が……ないですね、はい。
次回の予告をさせてもらうと……え? 聞きたくない?
そんなぁ。私頑張って考えたのにぃ。
え? なら早く書け?
そ、そんな意地悪言わないでぇ~
では、次回ヽ(^0^)ノ




