第二十四話 俺はサミラと行動を共にするらしいのだが
俺はサミラと行動を共にするらしいのだが
ドラゴンを追い払った俺たちは近くにあった瓦礫に腰を下ろし一休みをしていた。
「お前、結構強いんだな」
俺がサミラに言うとサミラはムスっとした顔でこちらを見る。
「私は最強だぞぉ。お前こそ強いんだなぁ」
俺はニッと笑い頷く。
「ああ、俺は強いぞ。伊達に人から最強と言われたわけじゃないからな」
サミラは俺を見て呆れていた。そして、同時に『最強』という言葉に何か感慨深いものを感じたらしい。
「最強かぁ。私もよく言われたぁ」
「なんだよ。そんな悲しそうな顔をしやがって」
「なぁ。最強ってそんなに嬉しいものなのかなぁ」
は? 何を言ってんだ? そんなもん決まってんじゃないか。
「嬉しいさ。人より強いんだぜ? それだけでもなんでもできそうじゃないか」
サミラの表情はどんどん曇る。
「じゃあ、考えてくれ。最強と言われたばかりに私たちは普通の奴らと同じ生活はできなかった。一緒に遊ぶのさえできなかった。私たちは違いすぎるんだ。その強さが、その誇りが、その立ち位置が、すべてがみんなと違いすぎた。それでも嬉しいのか?」
そんなことで悩んでいたのか。馬鹿らしいな。
「まったく。馬鹿らしいな」
「なっ……馬鹿らしいだと!? ふざけるな! お前に何が分かる!」
「わかるさ。俺も最強と呼ばれていたからな。それに友達? 違い? なんだそれ。そんなもん簡単な壁じゃないか」
悲しみに満ちていたサミラの表情が怒りへと変わる。
「簡単だと! お前はそういうのがいたのか!」
「ああ、いたよ。一時期はライオン、一時期はアナコンダ。みんな楽しい奴らだったぜ? 力が違いすぎるなら抑えればいい。誇りがあるなら捨てればいい。立ち位置なんて気にすんな。俺たちはなんでも選択できるんだぞ? 力が無きゃ選択できないのに俺たちにはその力が誰よりもあるじゃないか。お前は同じ生活をできなかったんじゃない。諦めていたんだ。その生活を。何の努力もせずにただ諦めてたんだ」
サミラは俺の言葉を聞いて手を握りしめていた。
「私だって努力したぁ! だけどできなかったんだぁ! みんなに合わせようとすると逆に強くなっちまうぅ! どうしようもなかったんだぁ!」
「どれだけ努力した? 一体、どれだけの時間を費やした?」
俺は冷静に聞いた。
「な、に?」
サミラはその問に驚いていた。
「俺は人生の半分を費やしてこの力をコントロールできるようにした。アマゾンに三年、戦争地域に三年、アフリカ荒野に三年。俺は一人で生活した。そこの動物たちと一緒にな。五歳からだ! 俺も五歳の時に友達を殺しかけた! そいつは俺の親友だったんだ! 俺は絶望したよ。この力のせいで誰かが傷ついて。だけど、この力は俺が生きている限り消えることはない。なら、いっそのことこの力をコントロールできないかと思ってじじぃに聞いたよ。そしたらそこへ行けと言って俺を捨ててくれたよ。そのおかげで俺は今、誰も傷つけず自分のやりたいようにできるようになった」
まあ、そのあとじじぃには空の彼方へ飛んでもらったがな。
それを聞いてサミラは涙していた。なんで泣くんだよ。俺は女の涙に弱いって知らないのか?
「九年もぉ? 九年もそんな危ないところにいたのかぁ?」
九年。そうだ。九年も俺は外国にいたのか。
「ああ、そのおかげで動物の仲間もできた。アナコンダなんて長生きだから今からでも会えるぞ。ライオンだって孫の代に挨拶に行かなきゃならん。世界でも俺は有名人さ」
俺は自分に皮肉を言いながら笑顔を見せる。
「私も……」
「ん?」
「私もいつかそうなれるのかなぁ?」
俺は笑っていた。サミラには悪いが心から俺は笑っていた。
「な、なんで笑うぅ!」
「いや、だってお前が女らしいからさ」
サミラはムスっとした顔を見せる。
「私は女だぁ! 見てわかるだろぉ!」
「すまんすまん。だけどさ。さっきも言ったけど、俺たちは選択肢がいっぱいあるんだ。弱きを助け悪を挫く。その反対だってできる。俺たちはなんでもできるさ。それこそなんでも。願えば願っただけなれる。まあ、その代わり努力は必要だけどな」
俺はそう言って立ち上がり人気配がなく荒れに荒れた荒野を見る。土は赤く岩だらけだ。空は曇っており暗い。
そんな中で俺は歩き出す。数歩歩いたところでサミラの方に向き直り言った。
「だから、悩むことなんかないさ。お前は努力を怠らなければいいんだ。俺が昔見た光景を嫌だと思って夢に描いた自分になろうと思ったように。お前は何か見つかるまでゆっくりと努力すればいい」
俺は再び荒野の方を見て昔のことを思い出す。
俺が九歳の時戦争の地域にいた。そこでは毎日のように子供が銃で撃たれ血を流すのが日常茶飯事だった。そこで俺は弱きを助け、悪を挫く。いわゆるヒーローになりたいと思った。
そして、その願いは叶った。突入してきた部隊を俺一人で撃退した。いや、全滅させたのだ。俺は英雄扱いされたよ。
だけど、戦争が終わり俺がテレビを見るとそこでは敵軍の国が映し出され泣いている人たちがたくさんいた。死んだ兵の関係者だった。
俺はそれを見て自分がどれだけ悪いことをしたか理解した。
そこで俺は改めて自分がなりたいものについて考えた。弱きを助け、悪を挫くはダメだ。悪だって違う立場からすれば弱きなのだから。そこで、俺が思い立ったのは弱きを助け、悪を助ける。弱きも悪も全てを助けると決めたんだ。
「ふん。弱きを助け、悪を助ける。我ながら大それた考えだよ」
まあ、そのおかげでこうなったんだけどな。
結局俺は強さを選んだんだ。全てを守るためには俺自身が強くなきゃいけないから。
「昔のことを思い出したところで誰も特はないか。やめだやめだ。あーあ、メンドくせぇ」
一部始終を見たサミラが笑っていた。
「何がおかしいんだよ」
「ごめん。ちょっと見てたら笑えてきたからぁ」
ったく、なんだそりゃ。
俺はサミラの近くまで戻りサミラに手を差し伸べる。
「行くぞ」
「うん」
サミラが立った瞬間岩陰から気配を感じた。
「「誰だ!」」
俺、サミラは同時に岩陰に向かって叫んだ。
「……見つかってしまいましたか」
岩陰から出てきたのは前髪が長く後ろ髪が短い美少年だった。
「ワイバーンとは言えまさか、撃退するなんて思いませんでしたよ。君たちは私の予想の遥か斜め先にいるみたいですね」
美少年はこちらに向かって歩き出す。
「お前は一体――」
サミラが聞こうとしたところに俺が割って入った。
「お前だろ? 世界そのものを止めた張本人は。なあ、カイロスさんよぉ」
一瞬の神、またはチャンスの神様だったけな。こいつなら俺たちをここまで送るのも世界を止めるのも簡単だろう。
「……! まさか、気づいていたのですか。そうです。私は一瞬の神と呼ばれたチャンスを司る神、カイロスです」
まさか、信五にこんな過去があったなんて……
第四の神様が現れましたね。こいつがどんな役割をするのか。
今から考えます!
では、次回(^-^)/




