第二話 俺は力に溺れない!
俺は力に溺れない!
あの一件で今、俺の目の前には長髪金髪美少女(仮)がいる。
「で? 俺を探していた理由とやらは一体何なんだ?」
ちなみに俺はいろいろなやつを助けてきたが外国人は確かいなかったはずだ。それにこんなに可愛い外国人は普通忘れない。
となると答えは一つしかないだろう。
「お前、ストーカーか?」
「だだ誰がストーカーですか、誰が!?」
この反応はノーってことだな。じゃあ、俺とこいつとの接点は一体なんだ?
「ツッコミはなしですか!?」
んー、まさか『私、あなたの婚約者なの!』って言うラブコメ的な展開はないだろうし、かと言って『私、あなたのお父さんの隠し子なの!』って言う某アニメ的展開にだってならないだろう。
「あのー、無視ですか? 無視ですよね? こんな美少女を無視するって言うんですか?」
一体誰なんだ、こいつは?
俺はこんなヤツは知らないし、でもこいつは俺を知っている(仮)だし……。
「もう! なんで無視するんですか!」
「してねーよ! てか、お前誰だよ」
率直に意見をしてみた。
答えは案外簡単だった。
「だから、私はアルガラス・ミランデですって!」
ああ、そういえばそんなこと言ってた気がするな。でも聞きたいのはそれじゃない。
「さっき、お前は自分の事を神様だとか言っていたがそれはどうなんだ?」
不思議なことに、いや、ただ単に頭がおかしいのかもしれないがこいつはさっき自分の事を神様と言っていた。
「そうですよ! 私は神様ですよ! どうですか? 参りましたか?」
と無い胸を張って言っている。
このくらい歳(正確には高校生、もっと言えば俺と同じくらい)で自分の事を神様とか言っているのはいわゆる中二病ってやつだ。
「なんか、今失礼なこと考えていませんでしたか?」
「おお、人の心が読めるのか。これは神様としか思えんな!」
「信じてくれますか!」
「まあ、嘘だけど」
ガクッと肩を下げた長髪金髪美少女があーっと唸っている。
「あははは! お前面白いな!」
こんなにオーバーリアクションは早々に見ないぜ。
「なら、どうやったら信じてくれるんですか?」
泣き目で訴えて来る長髪金髪美少女に俺は本気で考え込んだ。
そうだな。今度はどんなことをさせようか。バンザイしながらジャンプも面白そうなよな。
だけどそれ以上にやってもらいたいことがある。
「そうだな、じゃあお前が俺に勝てたら信じてやってもいいぜ?」
これは俺の五歳からの夢でもあることだ。俺に勝てるヤツ、俺のライバルになれるヤツを探すこと、それが俺の人生の目標であり、永遠の通過点だ。
「そそそんなことできませんよ! さっきの敵に勝てた人に私なんかが敵うわけがないじゃないか」
なんだ。こいつも俺には勝てないのか。そうだよな、じゃなかったらさっきの敵に怯えたりしないもんな。
「なら、お前には興味ないな」
ちっ、神様でも俺には敵わないのか。じゃあ何なら俺に敵うんだ?
「でも、私以外の神様なら、いえ、神々の、英雄たちの、精霊たちの戦いに参加すればあなたの願いはきっと叶いますよ」
神に英雄に精霊だと?
「く、ククク」
俺は口元を歪ませ笑いを堪えるが声が出てしまう。
「ど、どうかしました?」
それはとても楽しそうじゃないか! 神だ? 英雄だ? 精霊だ? そんなのが本当にこの世界に存在しているっていうのか?
否だ。この際存在しているかしてないかは関係ない。もし嘘でも今はこいつを信じるに値するだけの挑発をしてきた。それだけで今は十分だ。
「とうとう、頭までどうにかなりました?」
「いいや、その逆だ。いいぜ、今だけはお前を信じてやる」
そう言うと目の前の少女は驚きの顔を浮かべる。
「ほ、ホントですか?」
何を今更、だ。 あんなに面白そうなことが起きたんだ、信じるには十分すぎるだろ。気絶した人間は即座に回復、まして強くなるなんてサ●ヤ人でもできないぜ。そんなのを見たんだ。それはかなり面白そうな香りがプンプンとするぜ。
「ああ、だが今だけだ。もし、俺より強いやつを見つけられなかったら今後一切お前を信じることはないだろうな」
そうだ。この力は俺の夢を叶えるために、そしてみんなのためになるように使え、それがこの力の使い方を教えてくれたじじぃの遺言だ。(じじぃは俺が五歳の時点で俺がパンチでどこかへ飛ばしたため行方不明)
「ええ、ええいいですよ! その代わり私があなたを満足させるだけの敵を用意できたらあなたにはやってもらいたいことがあります」
ほう、これは俺に交換条件とやらを押し付けるってことか?
「あなたには私のパートナーになってもらいます」
ほう、それはそれはこんなやつに俺のパートナーが務まるのかねぇ?
「……」
「この要求が呑めないのならあなたの夢は一生叶いませんよ?」
これはもう脅迫の域に達してるといってもいいんじゃないか?
まあ、これくらいでどうこう叫ぶこともないんだがな。
「……長らく考えたよ」
「で、結果は?」
「お前に俺を楽しませられたらってことでいいんじゃないか? なーに、簡単だ。さっきのヤンキーより強くて俺が少し本気を出しても簡単には死なないやつを用意できればいい」
目の前の少女はそんなのでいいのかと言わんばかりの顔で首を傾げる。
「どうだ? お前なんかにできるか? まあ、できなきゃこの話はなしってことでいいぜ」
少女は首を激しく横に振ると言った。
「とんでもありません! いいでしょう。私の最高のモンスターを召喚してあげますよ」
そうだ。どうこなくっちゃな。
「なら、まずは移動だな。こんな寂れたところじゃ俺が目立たない」
ビルの裏でずっと話していたためかそろそろこの景色に飽きが来ていたのだ。
「ですね。でもどこに行くんですか?」
そのことに感じては心配しなくて大丈夫だな、俺はいい場所を知ってるぜ。目立ってとてもいいところをな。
「ち、ちょっと、何するんですか!?」
俺は少女を抱きかかえるとビルの間を器用にジャンプした。
「え? ええ!! ちちちちょっと待ってぇぇぇぇええええ!?」
その叫びも虚しくもう体はビルを超え遥か彼方まで飛んでいた。
「お、あそこだ」
少女の悲鳴が上空で散乱するが俺はそれすらも楽しみに思い、ビルに急降下する。
「うわうわうわ!! 待って待って待ってぇぇぇぇええええ!?」
「あははは!」
叫び声と笑い声が響く。
ビルに見事着地した俺らは止まることなく再び飛ぶ。今度はさっき見つけた広い公園に向かってだ。
「い、やぁぁぁぁあああああ!」
この少女はよく叫ぶなぁとのんきな事を考えながら公園まで猛スピードで飛んでいく。
「あああああああ! ダメダメダメ! 死ぬぅぅぅぅうううう!!??」
公園に見事に着地した(軽くクレーター紛いができたが)。少女を見ると気絶寸前だったがまあいいだろう。
「さあ、始めようぜ? 俺、ワクワクしてきたぜ」
少女は怒ったような顔をすると乱れた髪を直そうともせず、ただ俺を見ていた。
「も、もう、怒りましたよぉ。少し手加減をしてあげようと思いましたがそんなのはもう無しです! 死んでも後悔しないでくださいよ?」
そう言うと少女はポケットに手を突っ込み何かを取り出した。
「現れよ! 四聖獣! 己らの主が言う、出現を許可すると!」
言うと少女の周りに四つの魔法陣が現れる。そこから俺より少し大きい動物、否生き物が現れた。
あるやつは亀にも見えるがまったく違う形だ。
あるやつは虎にも見えるが大きさが比べ物じゃない。
あるやつは鳥に見えるが羽ばたくと火花が散っている。
あるやつは蛇に見えるが空を飛んでいるし、まず角が生えている。
「こいつらは、神話の獣か?」
「ええ、そうですよ? どうですか? 驚きましたか?」
俺は目の前の生き物を見て感嘆の声を上げそうになった。
「ああ、驚いた」
「じゃあ、これでわた――」
「じゃあ、四聖獣狩りと行きますか!」
俺は戦闘態勢に入った。それを感じたのか獣たちは各々散っていった。ある者は空へ、ある者は素早く何処かへ、ある者は俺に向かって突っ込んでくる。
「やっぱり、こういうのじゃなきゃ俺を倒せねーのか!」
突進してきた獣(玄武と思われる)を俺は片手で受け止め逃がさないように持ち上げる。
「う、嘘……」
持ち上げた獣を俺は飛んでる獣(朱雀)に向かって思いっきり投げた。
バォォォオオオオッ
玄武が悲鳴みたいな声をあげ、朱雀に激突する。
俺は落ちてくる朱雀、玄武に向かってローキックをお見舞いしてやった。
すると朱雀と玄武は岩石が砕けるような音を立て崩れていった。
「まず、二体!」
「人間が神獣を消した!?」
俺は休むことなく今度は飛んでいるドラゴン(青龍)に向かってジャンプした。
「今度はお前だ!」
青龍の角を持つと空中で体を捻り地面に向かって投げる。
青龍は勢いを弱められず地面に食い込む。
「そこでおとなしくしてな! 猫はどこだ?」
地面に着地し辺りを見回すが見当たらない。逃げたか?
そう考えていると後ろから虎が獲物を襲う時と同じ声をあげながら噛み付こうとしてきた。
俺は咄嗟に白虎の大きな牙を掴み抑える。
「いい判断だ。強大な敵に立ち向かうとき後ろから攻撃すれば大概は当たる。でもな、それは俺には通じねーよ!」
俺は牙を持ったまま白虎を持ち上げた。
「オラオラ! これもやるよ!」
そしてそのまま青龍のいる場所まで投げ飛ばした。
ドスッ
と嫌な音を立てながら青龍の胴体の上に脊髄から落っこちた白虎は気絶でもしているのか動かない。
「これで、ラストー!」
俺は空高く飛び上がりかかと落としの態勢に入る。
「りゃぁぁぁぁああああ!」
声を上げながら俺は青龍たちに向かって落ちる。その勢いでかかと落としの威力は増し、隕石の落下級の威力が青龍、白虎共に命中した。
それを喰らった青龍たちはさっきの朱雀と同じく岩石が崩れるように崩れていった。
「ふう、これで終わりか?」
俺は少女の方を向くと少女は口を開けたまま突っ立っていた。
「おいおい、どうしたんだよ。お前の行った通り倒したぜ? それとも不満かい?」
少女は頭を激しく振った。
「そんなことありません! なんで……なんで人間が四聖獣を倒せるんですか!」
こいつは何をおかしな事を言っているんだ?
「あのなあ、俺はこれでも未だに誰にも負けたことがないんだぞ? こんなやつに負けるわけがないじゃないか」
「そ、そ、そ」
「?」
「それでもあなたは人間ですか!?」
その問はおかしいな。何処からどう見たって俺は――
「人間に決まっているじゃないか」
俺は両手を広げて言ってやった。
それを聞いた少女は再び口を開けたまま突っ立っていた。
最強の人間と最弱の神様が手を組んだら第二話を読んでいただき誠にありがたく思っています。
さて、今回は色々と大変なことになっていますが心配は無用です。
なぜかと言うとこの展開はまだまだ序の口だからです。
先程も申しましたが読んでいただきありがとうございます。
できればですが、この作品を面白いと思ってくださった方、良ければお気に入り登録等をしていただくと、とても励みになります。
そして、誤字などがありました場合は私に連絡等をしてください。
それではみなさま、次の話も読んでくれると信じて失礼させてもらいます