第十五話 俺はランスロットと喧嘩する 下
俺はランスロットと喧嘩する 下
「ここからが本番だよ」
まったく。嫌な予感のオンパレードだぜ。
「学んだよ。君にはただの突進は聞かないとね」
なんか、ランスロットのやつ、鎧を脱いだ途端に話すようになったな。
「だから、殺し屋のように裏から殺らせてもらう」
言う途中で消え、気づくと俺の後ろから声が聞こえた。
俺は咄嗟に仰向けに倒れ落ちてくる剣を真剣白刃取りした。
「ほう。これも効かぬか」
こ、こいつ。何の躊躇いもなく斬りに来たよ。
「だが、次は躱せまい」
そう言って、ランスロットは一歩下がり一瞬溜めを作ると今度は仰向けの俺に向かって剣を地面ごと真二つにして来るらしい。
「まずいまずい!」
俺は瞬時にうつ伏せになり両手両足を同時に地面に叩きつけランスロットの頭より少し高いくらいまで飛び上がった。
「何!?」
ランスロットは驚いていたが自分の突進を止めることはできないのか剣を振りかぶった。
「隙だらけだぜ!」
着地した俺はガラ空きの脇腹に蹴りを入れた。
「クッ!」
完全に伸びきった体の中心に蹴りが入り普通なら気絶だが相手は円卓の騎士だからなぁ。きっとまだ意識はあるんだろう。
「ふははは!」
ランスロットはその場に立ち上がり高笑いをし始めた。
「無傷……みたいだな」
「いやいや、肋骨を何本か持ってかれたよ。だが、それでは私は止まらんよ」
そう言ってランスロットは剣を空へ掲げた。
「剣よ。アロンダイトよ。その身を槍へと変え給え」
掲げた剣は伸び先はどんどん細く鋭くなり手元は太くまるで釘みたいになっていく。いや、あれは釘じゃない。あれは――
「槍。そういやぁ、ランスロットは槍も得意だったっけな」
「ダメです! 信五さん! その槍は!」
レリアールが叫ぶ。なんであいつ俺の名前知ってんだ? 教えた記憶はないんだが……。
「なぜ、逃げなくちゃならん。こんなに面白いのに」
そうだ。こんなに面白い戦いはそうそうにできないんだぞ? なのになぜ逃げなくちゃならん。
「そうだ。アーサーよ。私はこんなにも楽しんでいるといるのに口出しをしないでもらおうか」
おお、わかってるじゃねぇか。
「そうだ! いいことを思いつきましたぞ。賭けをしませぬか、レリアール殿?」
「か、賭け? 何を賭けるのですか?」
「この戦いで私の騎士が勝ったらあなたをもらいましょう。負けた場合は私の財産全てをあなたにあげましょう。どうですか?」
おっさんが私の騎士と言った瞬間、ランスロットの肩がピクリと動くのを俺は見逃さなかった。
「どうかしたのか?」
「い、いや。なんでもない」
挙動不審なのか? まあ、いいか。
「どうですか? まあ、この戦い。あなた方の一方的な攻撃から始まりましたから嫌と言われれば戦争を起こす前触れとしてあなたの国に我が軍を送り込みますがね」
こいつ。脅しをかけているのか?
レリアールは仕方なくこくりと頷く。
「ふん、いい答えですぞ。さあ、ランスロット。そんな奴さっさと始末しろ」
ランスロットの殺気が少しだけ減った気がする。
なんだ? 何が起こったんだ?
「済まないな。もう、遊んでいる時間はなくなった。本気で殺らせてもらう」
さっきまでのはまるで遊びだったかのようにランスロットは言う。
「そうか。なら俺も本気でやるか」
俺は構えをやめる。
「構えをやめるだと? お前は死ぬつもりか?」
違うな。ああ、違うとも。これは俺流の構えだ。
「来いよ。ファイナルラウンドだ」
俺は手でクイクイと挑発を始める。
「ナメおって!」
思った通りだ。こいつは感情が不安定、しかもそれは鎧を外しているときのみだ。
俺はニヤつく。……勝った。
「何!?」
驚くのも無理はない。だって、ランスロットの槍は俺に掴まれ動かないんだから。
「なぜだ! さっきまではこの速さに追いついてすら――」
「ああ、追いつかなかったさ。さっきまではな」
今、俺は集中している。勝つことに。その槍に。
今まではお前の体の動きに集中していたから俺のモーションはぎこちなかった。だが、武器はいつも俺一点に集中しているのだから武器を見れば相手の動きを読むことは簡単なんだよ。
「う、動かぬ! 槍が動かぬ!」
言ったろ? 本気をだすって。
「俺が本気をだせばお前なんて目じゃないんだよ」
バキバキと片手の握力でランスロットの槍を握り潰していく。
「わ、私の槍が潰れるだと!?」
そんなに驚くことはないだろ? 強者にはできないことはないんだから。
「――かっこいいだろうなぁ」
俺の語りにランスロットが俺を見る。
「円卓の騎士のひとり、しかも伝説の剣の持ち主を倒せたらかっこいいだろうなぁ。ああ、かっこいい」
俺の握力はどんどん増していく。鋼の槍をまるで紙コップを潰すかのように潰す。
「お前の武器はこれだけか?」
俺が聞くとランスロットは驚愕の目を向ける。
なぜなら、俺が空いていたもう片方の手でランスロットの剣を砕いたからだ。
「なっ……」
だから、驚くなって。
「貴様は人間なのか?」
なんか、この頃そんなことばかり聞かれている気がするよ。
「ああ、俺は純度百パーセントの人間だ。少し他より強いけどな」
俺は笑う。
これで勝負はついた。俺の勝ちだ。
「ランスロットぉぉぉぉ!! 貴様! ま、負けおったな! そ、そこで自害しろ!」
おっさんが叫ぶ。
負けたのは全てランスロットのせいか。力量差もわからんで勝負させたのはお前だろ?
「ランスロット、あんな命令む――」
ししてもいいんだぞ?
言えなかった。なぜなら、ランスロットはホントに自害していたから。
「お、おい! ランスロット! 何してんだ!」
砕けた鋼を自分に突き刺し赤い液体を大量に流れさせているランスロット。
「き、騎士は主の名に従わなくてはならぬものだ。死ねと言われればし、死ぬしかあるまい」
なんだよそれ! お前は死ねと言われただけで死んじまうのかよ!
「ランスロット卿!」
レリアールが駆け寄りランスロットの傷を見て絶句している。
「あ、アーサーよ。悲しむな。わ、私はあ、主の名を聞いたまでなのだ、から」
「ああ、ランスロット卿、話さないで。血が、血が止まらない!」
ふふっとランスロットは笑い。レリアールを見る。
「す、すまなかった。アーサーの近くで戦いたかったのだが、アーサーのために戦いたかったのだが、こんなにも私は弱かった。故にこんな結末だ。笑うがいい」
ははは、と力なく笑うランスロット。
そうか。こいつはこいつ(レリアール)と一緒にいたかったのか。
「あ、あははは、あはははは! し、死におった! 死におったぞ! あの馬鹿め!」
死におった? 馬鹿? ふざけるな!
それはお前だろ?
俺は立ち上がる。
「な、なんだ。私と戦うっていうのか?」
俺はおっさんを睨む。
「お前にそんな勇気あるのかよ?」
「なっ……」
俺は呆然と立ちおっさんに言い放つ。
「き、貴様! 今お前は誰に口を聞いたつもりだ!」
「お前だよ! おっさん!」
おっさんは後ずさり俺を見て恐れている。
「み、皆の者! て、敵だ、敵だぁぁぁぁ!!」
俺は城の近くまで寄り一発だけパンチを放った。
「な、何!?」
すると城は跡形もなく崩れ去る。中にいた兵士は皆無事じゃあないだろう。
「で? お前の戦力はまだいるのか?」
「ひ、ヒィィィィィ!! ば、化物が、化物がぁぁぁぁ!!」
そう言っておっさんは近くの森の中にそそくさと逃げて行った。
「ランスロット卿! 気をしっかり!」
レリアールが叫ぶ。涙しながら。
当のランスロットは目を閉じさっきまで荒かった息がだんだんと収まり弱くなってきた。
「エリー、なんとかできないか?」
俺は魔法使いのエリーに聞いてみる。
「できるにはできるけど時間が足りないわ」
クソッ! こいつの弱点がもろに出てきてる。
「わ、私なら少しの間だけ延命できますよ?」
京子が言う。
「どれくらいだ?」
「さ、三時間だけ、ですけど」
三時間か。エリーの詠唱には釣りが来るな。
「エリー、頼む」
エリーは頷くと詠唱を始めた。
「こ、これは?」
レリアールの下に魔法陣ができ、驚くレリアール。
「レリアール。どいてろ。邪魔になるぞ?」
レリアールは頷き、ランスロットをそっと地面に寝かせる。
「あ、あなたたちは一体何者なんですか?」
レリアールが聞いて来る。
「ああ? 俺たちは……そうだなぁ。――勇者御一行ってことでどうだ?」
さっそく、下が書き終わりましたよ。
初めて信五がキレましたね。
これまで怒る程度だったのがここに来て完全にキレてしまいましたねぇ。
ということで第十五話でした!
あ、そういえばお気に入り登録が増えました♪
登録してくれた方とても感謝しております。
これからもよろしくお願いします。
誤字脱字がありましたらご連絡ください。




