第十四話 俺はランスロットと喧嘩する 上
俺はランスロットと喧嘩する 上
「本気なの? あんた馬鹿?」
そう言うのはエリーだ。
「ああ、俺は英雄に喧嘩吹っかけてくるぜ」
そう豪語する俺。
「諦めてください。この人はやると言ったらやり切るまで止まりませんよ」
完全に諦めている京子。
そう、俺たちはエクスカリバーを持った少女サミラとの戦いのあとこの城来て、アーサー王の子孫に会い。円卓の騎士の話を聞き、俺は喧嘩をするためにレリアールの味方になった。
それに関しては別に後悔はしてない。どちらかといえば喜んでいる。
「レリアール、どこに円卓の騎士はいるんだ?」
「え? 円卓の騎士が具体的にどこにいるのかはわかりません。ただ、ランスロット卿ならわかりますが」
ランスロットだと? 面白い。一番手から円卓の騎士の最強様と戦えるのか。
「よし、じゃあ、倒しに行くか」
すると、俺のお腹が鳴り始めた。
「うん。まず飯だ」
周りにいたエリー、京子、レリアールまでもがずっこけた。
「なんだよ。飯食わなきゃ戦えないだろう?」
俺はニッと笑うとみんな呆れ顔だった。
「で、では、皆様こちらへ」
「おう、飯か?」
俺はレリアールに案内されがままついていった。
「「先が思いやられるよ」」
ふたり揃って仲がよろしいことで俺はなかなか嬉しいぞ。
それよりも飯だがな。
俺はいかにも豪華な部屋に案内されるとこれまた漫画かアニメでしか見たことないような長いテーブルが置いてあり、そこには豪華な飯がこれでもかと置いてある。
「こ、これ全部食っていいのか?」
「ええ、これは元々あなたのために作らせたものですから」
おお、なんて気がきくんだこの王様は!
「では、遠慮なく食うとしますか」
俺は椅子に座り置いてある料理を片っ端から食べ始めた。
「し、信五さん。もうちょっとマナーよく食べられないんですか」
「信五、汚いわよ?」
知ったことか。飯なんて美味しく食べられればそれで満足だろ?
「うん。うまいなぁ。これ。誰が作ったんだ?」
俺らから離れたところに座っていたレリアールに聞くとレリアールはニコっと笑い答えてくれた。
「専属のシェフです。お気に召してもらいましたか?」
「ああ、うまい。さすが王様の専属シェフってだけはあるよ」
俺は勢いを止めずバクバクと食べていく。
「喜んで頂いて光栄です。ところで、ランスロット卿のお話ですが」
「なんだ?」
俺は食べることから意識を向けず話だけ聞く態勢に入った。
「あの方は強いですよ?」
「だから?」
強くて結構。本望だね。
「いや、だから諦めてはと……」
「それはできないな。そもそも俺はそいつらみたいな強い奴らと戦うためにお前との取引をしたんだ」
略奪された聖剣エクスカリバーを取り返してやる。その代わりに俺はこの世界の英雄を端から捻り潰すっていう具合にな。
「ですが、あなたには負けてもらっては困るのです」
レリアールが困った顔をする。諦めろ、俺はそんなんじゃ止まんないぜ。
「でも……」
「レリアールさん。ホントに諦めた方がいいですよ。この人は諦めるといった概念はありませんから」
京子がレリアールを止めた。説得は労力の無駄だということを教えたらしい。
「……」
「安心しろ。俺は負けたことは一回もない」
サタンのは負けたんじゃなくて後退したんだ。
「で? ランスロットはどこにいるんだ?」
俺は目の前にあった特大の肉に向かって眼差しを送りながらレリアールに聞く。
「ランスロット卿は西の国アリエスという場所で騎馬隊の隊長をしているようです」
騎馬隊? ああ、馬に乗って突進してくるやつか。まあ、それはそれで楽しそうだな。
「じゃ、行くか」
俺は最初とは格段にでかくなった腹を起こし立ち上がった。
「え? い、今からですか?」
いつ行くの、今でしょ! ってやつだ。
俺は豪華な部屋を出て廊下を歩こうとするとレリアールが立ち上がり叫ぶ。
「ランスロット卿は強いんです! アロンダイトを抜かせてはなりません!」
おお、伝説の剣まで存在していたか。そのうちグングニルとか出てくんじゃないか?
俺はそんなことを考えてニヤける顔を直そうともせず廊下に出た。
すると、袖を掴まれ即座に立ち止まる。
「ま、待ってください。私もお供いたします」
そう言ってレリアールは荒い息を整えながら言う。大丈夫か? ここまで五十メートルもなかったのに息上げるなんて。
だが、西の国アリエスという場所に行くためには確かにこいつの案内がいりそうだ。
「わかった。だが、邪魔はすんなよ?」
言うやいなやレリアールは笑顔を見せ
「はい!」
元気な返事を返してきた。
それから俺たちは西の国とやらに移動すべく馬車に乗った。これは王の専用車らしい。
西の国というからかなり離れているのかと思いきや川一本通り過ぎればいいだけだったことに少し感動してしまった。
そんな国があっていいのか?
「この国の王宮にランスロット卿がいます」
それから三時間ほど馬車は走り王宮に着いた。
「へぇーここか。お前の城より大きいじゃないか?」
「そ、そんなことありません!」
いや、大きいだろ。これ。
西洋風の城で外壁は全てレンガだ。これきっと俺がパンチすれば砕けるんじゃないか?
(信五さん)
京子が小声で俺を呼ぶ。
(なんだ?)
俺も小声になり答える。
(壊さないでくださいね)
おお、心が読まれたらしい。
(あと一瞬遅ければ壊してたわ)
京子ははぁと肩を落としてしまった。俺、何か間違ったことしようとしたかな。
「おお、これはこれは! 隣の国の王様ではありませんか」
城から出てきたのはヒゲを生やしたおっさんだった。
「ドロブラット王。お久しぶりです」
レリアールは久しぶりと言って平然を装うが殺気がそこら中に撒き散らされてるぞ?
「……」
おっさんの後ろで平然と立っている甲冑姿の人、背から見て女性だ。
「それに、ランスロット卿も」
レリアールはその甲冑に向かって言う。
「そいつがランスロット卿か?」
こくりと頷く。そうかそうか。コイツがねぇ。
「私に何かようですかな?」
おっさんはとてつもない上から目線で聞いてくる。ムカつくな。とりあえず泣かすか?
「私たちは――」
「俺たちはお前らの領地をもらいに来た」
俺が平然と言うとレリアール、京子、おっさんが驚き。エリーはやっちまったという顔で頭を抱え。ランスロットは何もなかったかのように立っている。
「……は、はは。これは面白い。それがあなたの新しい騎士ですか?」
「え、ええーっと。この方は……」
「俺はとりあえずお前らに喧嘩を売りに来たぞ。さあ、戦おうや」
俺は拳をランスロットに見せつける。
「……私は主の命令なしでは戦うことはできない」
なんだそりゃ。
ランスロットは立ち尽くしたまま動かない。
「いいだろう。ランスロット、レリアール殿の騎士に貴様の強さを見せてやれ」
「……承知」
おっさんが許可を出すと同時にランスロットから殺気が立ち上る。
「ランスロット、参る」
ランスロットは剣を抜きなんの構えもなしに一歩進んだかと思いきや見えない突進をしてきた。
「ぐはっ!」
俺はガードできなかった。
突進をされて俺はあることが脳裏を横切る。
『ランスロットは騎馬隊の隊長です』
それはレリアールが言った言葉だった。騎馬隊とは馬に乗り機動力を上げた軍隊だ。
「馬はお前の足ってことか」
そう、こいつは最初から馬に乗っかってたんだ。自分の足という馬にな!
「一撃で仕留めるはずだったが浅かったな。どうやった?」
そう、ガードはできなかった。だがら、後ろに飛んで威力を弱めることにした。
「まあ、いいだろう。次は真二つにすればいいことだ」
今度は剣を構えた。
「それって、アロンダイトか?」
俺は覚束ない足をなんとか立たせ聞く。
「ああ、これは私の愛刀にして愛剣。アロンダイトだ」
神話とまったく同じなんだな。
「散れ、この剣で」
ランスロットはまた一歩歩き出したかと思いきや消えた。そして、俺の下の辺りでかがんだランスロットはアロンダイトを俺の股から入れようとした。
「そう簡単にいくかよ!」
俺はランスロットの顔を蹴り上げた。
「なっ!」
剣撃のモーションは止められた。俺は距離を取らせないために懐に潜り込む。
「お前は強いよ。それは認めよう。だがな、最強じゃねぇ!」
そして、俺はランスロットを鎧ごと蹴り上げた。
ランスロットは空高く飛んでいく。終わったな。このまま落ちれば鎧の重さが重なって――
ドスドスと何回かに分かれて音がした。
「まだ、終わってはいないぞ」
振り向くと鎧を脱いだと思われるランスロットがいた。
「お、おいおい。女かよ」
わかってはいたんだがさすがにやりにくくなったぞ。
「案ずるな。私は体こそ女だが心は男のつもりだ」
それじゃ何も解決しねぇんだよ! まあ、その逆も怖いんだけどな!
「チッ! この頃女と戦う機会が増えてねぇか?」
そして、俺はそんなことを喚きながらも嫌な予感がよぎるのを感じた。
鎧ってのは最強の防具だ。だが、その引き換えにかなりの重量がある。その重量を抱えてもなおランスロットはあの早さだった。
なら、鎧を脱いだらどうなるんだ?
「ここからが本番だよ」
は、はは。嫌な予感しかしてこないね。まったく。
今回は上下版しさせてもらいました。
別に長くなったではなくただ単にしてみたくなっただけですので他意はありません。
では下でまた。




