第十一話 俺は聖剣に狙われた
俺は聖剣に狙われた
「唸れ! エクスカリバー!」
そう言って最強の女、サミラが叫ぶ。
叫ぶだけではない。叫ぶとそれに反応するように剣が輝き始める。
「おいおい。その剣は生きてるのかよ」
生きている。そういう表現が実に合っているだろう。そのうちウネウネと動き始めるんじゃないか?
「今のは私自身の強化だぁ。これで私はチーターのトップスピードより遥かに早くなったぁ」
ニッと笑うとサミラは目の前から消え、次に気づいたときは俺が背中を蹴り飛ばされて痛みを感じたときだ。
「いってぇな!」
近所の壁を貫いて吹き飛ばされた俺は寸前でガードが間に合った。
「おお、お前はまだ生きているんだなぁ」
俺が生きていることに何やら喜びを覚えたらしくサミラの喜びの声が聞こえる。
「なら、これだぁ。砕け! エクスカリバー!」
エクスカリバーの光の色が白から赤に変わる。
「今度は、自身の腕力の強化か?」
俺が冗談で言うとサミラは驚いた顔をしていた。
「なんでわかったんだぁ?」
おいおい。ホントにそれは聖剣か? てか、剣じゃないよなそれ。
「お前どこでその剣を手に入れたんだよ!」
「ああ? 奪ったぁ」
う、奪ったぁぁぁぁ!?
「お前何してくれてんだ! そんな危なっかしいもんを奪ってくんな!」
待てよ? 奪ってきた? てことはアーサー王がいるってことか?
「お前もしかして戦いに参加してんのか?」
戦いとは修羅神仏の戦いのことだ。それをサミラはわかったのか、答えた。
「ああ、修羅神仏のだろぉ? 参加してるぜぇ。これはアーサーなんとかから奪ったものだぁ。あいつ弱いから私がこの剣を持ってきたのさぁ」
アーサー王が弱い? 最強の英雄が?
「じゃあ、今の聖剣の持ち主は――」
「ああ、実質私のものだぁ。まあ、そんなことはいいだろぉ? 今はこの遊びを存分に楽しもうやぁ」
は、はは。こいつは戦いを遊びに思ってるらしい。
サミラは聖剣をグルグルと振り回している。対して俺は何もない状態だ。
「ふぁあ、サミラまだ終わんないの? 私眠くなっちゃったわよぉ」
近所の屋根の上で眠そうな顔をして言う少女が現れた。
「チッ、また敵か。今日一日で何回戦うんだよ」
キッと鋭い目を俺に向け何か言いたそうな視線が俺を見つめる。
「なーによ、私は戦わないわよ。そもそも戦闘系の女神は珍しいったらないんだから。ん?近くに女神の気配? しかもこれって――」
「信五さーん、どこですかぁ」
京子の声が聞こえる。あいつ何しに来たんだ?
「京子、何しに来たんだ?」
俺は視線をサミラから外さずに京子に聞いた。
「あ、こんなところにいたんですかぁ。信五さんがいきなり飛び出したから心配したんですよ?」
拍子抜けたことを言い出した京子に俺は呆れの顔を表さずにはいられなかった。
「お前この状況を見て何か感じないのか?」
こいつは馬鹿か? 馬鹿なのか?
「やーっぱりあんたなのね? ミランデ」
家の屋根に乗っている少女は京子を知っているのか?
「あれ? お姉ちゃん? お姉ちゃんだ! ってええー!? なんでこんなところにいるんですか!?」
お、お姉ちゃん!?
あいつが京子の姉ちゃんなのか!?
「はあ、あんたねぇ、見て分からない? 今私の契約者と戦っているのが、それあんたの契約者でしょ?」
契約者? なんだそれ。
「ん? 何、今初めて聞いたみたいな顔してんのよ。……え? 嘘でしょ? もしかして本当に今初めて聞いたの?」
驚愕の目をしてとても驚いていらっしゃる少女。
「すみません、私話してませんでした」
とりあえず、京子は後でぼこす。なんか大切なことらしいからな。
「ふんっ、そっちが契約者ならちょっと危ないかもね。サミラ、リンクするわよ」
リンク? なんだそれ。
少女はサミラがいるところなまで降り、いきなりサミラにキスをした。
「んっ……ん」
サミラは慣れたような表情で少女のキスを受け入れている。
「んっ……これでリンク成功。やってきなさいサミラ」
サミラは二ヤッと笑うと目の前から消えた。
俺はなんとかして気配を探し、寸前でガードした。なんかさっきより強くないか?
「なんだよ、さっきの!」
「教えるかぁ、バーカ。はばたけ! エクスカリバー!」
言うやいなや強風が吹き荒れる。これもエクスカリバーの能力か!
強風のせいで土埃が舞い視界が悪くなる。
「おい、京子! なんとできないか?」
辛うじて京子だけは見えたので京子に聞くが京子は驚いたまま止まっている。
「り、リンクが成功するなんて……ありえないです」
さっきの行為がそんなにすごいのか?
「信五さん、ここは退散を――」
「馬鹿言ってんじゃねぇ! こんな面白そうなもんをやめられっかよ!」
俺が言うと土煙の先からサミラと少女の笑い声が上がる。
「そうだなぁ、私とこんなに戦えたのはお前が初めてだぁ! こんなに面白いことはそうそうにないぞぉ!」
何か、何かないか。この状況を打破できる有効な手が!
「ふ、ふふ……ふっはははは!」
この笑いは俺から発せられたものだ。別におかしくなったんじゃない。ただ気づいたんだ。
こんなのは俺じゃない。こんな考えをするのは俺じゃないんだ。
「すべての障害はただの遊びで、すべての遊びが最大の障害……」
俺がポツリとつぶやく。
障害は砕くから障害で俺はそれを砕く力があるじゃないか。
「砕くべき力がある。試させてもらえるだけの力がある。最大の敵は最大のライバルで、最大の障害だ……」
とうとう壊れたかといった声が聞こえる。
だが、それはまだ早いぜ? まだ、俺の闘志は砕かれちゃいねぇ。
「ああ……勝てたらかっこいいだろうなぁ」
俺は空を見上げながら言う。
「エクスカリバーを持った少女……ああ、かっこいい。それに勝てればもっとかっこいい」
俺はニヤついた顔で辺りを見る。
「ここからが本番だ。サミラ、お前がどんな力を持っていようが関係ない。俺は勝って先に進むぜ。この先にいるであろう最強に会うためにな」
砂埃で視界が悪い? だからなんだ。
強風がすごい? だからなんだ。
「戦場を操作するのも立派な戦略だ」
俺は右腕を横に振るう。するとさっきまでの砂埃や強風が嘘のように消え去る。
おかげで視界がはっきりしている。
サミラは驚いた顔をしている。
「何か驚くことでもあったか? 強風なんて気道を見て気道を潰せば消せるだろ? 砂埃は腕から強風を作り上げてなぎ払えばいいことだ」
俺はさも当たり前のように言い放つ。
「さあ、続きをしようか。最終ラウンドまで休憩はなしだぜ?」
俺はサミラを見て挑発じみた事を言う。
「は、はは。いいだろうぅ。お望み通りに刻んでやるよぉ。おい! 残り時間はどれくらいだぁ!」
残り時間? なんだそれ。
「し、信五さん! リンクは強大な力と知識、そして運動能力を与えますがタイムリミットがあるんです!」
そういうことか。それでさっき強くなったって思ったわけか。
「残り三十分ってところね。まあ、あなたなら関係ないでしょ? 元が強いんだしさっさと終わらせて今日は寝るわよ」
ホントに戦う気があるのかね、あの女神さまは。
「はは、そうなだなぁ。今日は疲れたぁ。さっさと終わらせるかぁ」
サミラは同意し剣を空高くまで上げる。
「輝け! エクスカリバー!」
赤く光っていた剣が今度は黄金の色を浮かべる。
「これは最大にして最強の技だぁ! これを受けたやつはいないぃ! お前が最初にして最後の強者だぁ!」
片手で持っていた剣を今度は両手で柄を持つ。
「ざけんな! 最後じゃねぇ! これが最初で永遠だ!」
俺は突っ込む。サミラは精神集中に入ったのか止まっている。
俺が攻撃しようと攻撃圏内に入った瞬間剣の輝きが失われた。
「な、なんだ?」
俺は瞬時に飛び退き様子を見る。
「スースー」
可愛い息遣いが聞こえる。
ま、まさか……。
「「「寝てる!?」」」
俺、京子、京子の姉の三人が同時に驚きの声を上げる。
「な、なんなんだよそれ……」
俺は感嘆の声を上げるしかなかった。
はいっ!
ということでやってきました。第十一弾!
過ぎてしまいましたがとうとうこの作品も十話を超えました♪
これまで見てくださった皆様そして今出てくださっている皆様心より感謝しております!
そして、これもまた過ぎてしまいましたがなんとアクセス数が1000を超えました!(拍手)
これからも力と感情を込めて書いていきますのでどうかよろしくお願い致します。




