11.エピローグ
世界中の飛行物体が母船の粉砕とともに消えてなくなった。
そして、世界中の人々は歓喜して叫び狂った。
人類の危機は土壇場の大逆転勝利をもって回避された。
◆◇◆
何故かわからないが、デブチンマキタに戻った彼は恍惚の表情を浮べていた。彼の頭の中にはハンナの姿がはっきりと見える。ハンナも恍惚の表情を浮べている。
――何て気持ちがいいんだろう……。
――ああ。あなた……。
どうなっているのかよくわからない。しかし、ともかくこの世のものとは思えないほど気持ちがいいのだ。
気が付くとデブチンマキタの後ろには子供が立っている。
「あれっ? 君、誰?」
その子供は口を尖らせて言った。
「あんたの子供だよ」
「何い? 子供? 俺、結婚してないよ。人違いだよ」
「じゃあ、こいつは?」
ふと見ると子供の後ろに十人くらいの子供が並んでいる。二番目の子供が言った。
「パパ」
「!!」
続いて三番目。
「お父さん」
そして……。
「おとっつぁん」
「ダディ」
「ちゃん」
「おいっ! 待ってくれ。俺は君たちのお父さんじゃないんだ!」
その時、デブチンマキタの頭の中でハンナの声がした。
――その子供たち、みんなあなたと私の子供よ。間違いないわ。長男のちょっぴり生意気なところなんてあなたそっくりよ。
――何だって? 結婚もしてないのに有り得ない。変なこと言うなよ。
――本当よ。結婚してないけど、子供作っちゃったでしょう?
――作ってねえよ。
――あら、あなた気持ちよさそうだったじゃないの。
――ええっ? さっきのあれえ? それで子供できちゃうの?
――そう、私、知性の生命体だから……。私、下半身デブで多産系だから沢山出来ちゃった。でも、本当はあなたが悪いのよ。頑張り過ぎたから。
――何だとぅ? お前だって気持ちいいってのけぞってたじゃないか。
――だからってやり過ぎよう。知性と知性の合体よ。あなたの場合、知性と欲望の合体じゃないの?
「パパあ。パパッたらあ」
ハンナの背丈を縦に縮めたようなおませな感じの少女が、鼻にかかったような声で父を呼ぶ。
「いっぺんにこんな大勢の子供、いったいどうやって育てていくんだあああーーー!!」
デブチンマキタの大きな声に驚いたのか、鳩が一斉に大空へ飛び立った。その声は鳩の間を縫うように秋空に木霊した。
【了】




